こんにちは、リブラです。今回からミルトン・エリクソンの本を題材に、潜在意識の世界を解説してこうと思います。
*サボテン
あるアルコール依存症者が私(エリクソン)のところにやってきてこう言いました。
「私の祖父母は、父方、母方の両方とも、みなアルコール依存症です。私の両親も妻の両親もアルコール依存症で、私も妻もアルコール依存症です。
もう、アルコール依存症にウンザリしています。私はシラフのときは新聞社で働いていますが、アルコールは仕事の障害になるのです」
私は言いました。「わかりました。つまり、由緒あるアルコール依存症をなんとかしてほしいということですね。さて、これから私が提案することは、的外れに思われるかもしれません。
まず、植物園に行ってください。そこでさまざまなサボテンを見て、3年間水がなく雨が降らなくても生き延びることができるサボテンの驚異に触れてください。そして、たっぷり考えなさい」
何年もして若い女性が訪ねてきて言いました。「アルコールなしでやっていく方法を学ばせるために、アルコール依存症者を植物園の見学に送り込んで、それをやりおおせてしまう。私が会いたかったのは、そんな人なのです!
私の両親は、あなたが私の父を植物園に行かせて以来、ずっと断酒を続けています」
「お父さんは今、何をされてますか?」
「父は現在、雑誌の仕事をしています。彼は新聞社をやめました。彼は新聞社の仕事は、アルコール依存症者にとっては(断酒という)仕事の障害になる、と言っています」
ー私の声はあなたとともにーより
何かに依存して振り回されるのは、とても悩ましい問題です。それは自分の行動でさえ制御できないという無力感にいつも苛まれます。もし、これをやめることができたら・・・と考え、それを禁じてやめる努力をしてみても大抵挫折に終わるのです。
そんなときは、やめる動機が「怖れ」から始まっています。今回のケースだったら、「新聞社の仕事の障害になる」という怖れの動機からこの男性はアルコールをやめようとしてやめられない状態にいました。
もう、これは血筋の問題で、自分の力で超えることなどできないと白旗をあげてエリクソンのところを訪ねたのでした。
依存症に限らず、あらゆる物事の根本の動機が「怖れ」から始まっていると、それは「怖れ」を生み出す結果になります。「怖れ」の周波数が共鳴する「怖れ」の現象を連れてくるのは当然なのです。
「怖れ」は見ないようして逃げ回ると、ますます膨らんでくるものです。アルコール依存症の場合は現実を見ないように酔った状態を続けますが、酔いが醒めたときはもっと現実が恐くなっているでしょう。
エリクソンがしたのはこの男性に植物園のサボテンの観察を勧めたことですが、潜在意識への働きかけは「逃げずに現実と戦い生き残っている植物の先輩」を見倣わせることでした。
この男性の一族はみんなアルコール依存症なので、厳しい現実に対してアルコールの助けなしに生きていくことは不可能だと彼の潜在意識に刷り込まれていたのでしょう。
そして、植物園のサボテンの観察がアルコール依存症の男性に絶大な効果を発揮したのは、見倣う相手がサボテンだったのと自分で考えて気づく機会を与えられたことが大きかったと思います。
潜在意識の専門家であるエリクソンは、患者が自分で考え、自分で気づくことを大切にしていました。心の問題では、顕在意識(気づいている自分の意識)と潜在意識(無意識)の不調和がいつも起きています。
自分の顕在意識が自分の潜在意識を信頼できていない状態に陥っているのです。
そのような状態のとき、自分より確かな先輩が「こんな風に超えたよ」とアドバイスしても、「それはこの人だからできたことで心の弱いわたしには無理だ」と却下されてしまうことでしょう。
だから、飲まずに過酷な自然環境に耐えているサボテンがモデリングの対象として適役だったのです。自分よりはるかに弱い存在のサボテンが、過酷な現実に向き合い3年も水を飲まずに耐えられるのならば、自分がアルコールを3年飲まないのはもっと簡単にできるだろう、と思ったはずです。
そして、サボテンから現実に目を逸らさず向き合うことを見倣ったこの男性は、おそらく、2つのことに気づいたと思います。
1つ目は、「現実は目を逸らすほど恐くはない。むしろ、ちゃんと観ればみるほど、これのどこが恐いのか?これは恐いという思い込み(妄想)」という気づき。
2つ目は、アルコールに逃げたのは、自分の心が弱いからでもアルコール依存症の血筋でもなく、仕事のストレスという圧迫を受けたから必然的にその圧のはけ口が必要になったに過ぎない。
それなら、これは依存症の問題ではなく、仕事の適性の問題。適してないからストレスが溜まり、そのストレスをアルコールで解消する悪循環が習慣化されただけ。
そして、この男性は自らの決断で断酒を始め、新聞社をやめて雑誌社に転職してストレスを減らし、アルコールの助けを借りなくても生きて行ける道を探ったのでした。
さらにすばらしいのは、この男性の断酒をきっかけにして妻もアルコール依存症から解放されて、一族のアルコール依存症の連鎖を断ち切ったことでした。妻もこの男性を見習ってモデリングしたのでしょう。
二人以上の祈りは届き叶えられると聖書にあるように、同じ目的に向かって努力する仲間がいると集合意識のパワーが働くので、依存を断ち切る気持ちはさらに揺るがないものになります。
うお座に土星や海王星が滞在する現在、信じるものや向かう目的が同じ人々と健やかな未来を願うことは、具現化の強力な追い風になります。
何か依存するものを断ち切りたいと思っている人は、自分の依存を断ち切る努力が同じことで悩んでいる人々に勇気を与え、可能性を拓いていると意識してみるとよいでしょう。
次回もミルトン・エリクソンの「私の声はあなたとともに」の解説を予定しています。
わたしのサロン、リブラライブラリーではあなたの心のしくみをホロスコープで解説し、心の制限、葛藤が引き寄せる現実問題にセルフヘルプで立ち向かえるようサポートします。
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