こんにちは、リブラです。今回はミルトン・エリクソンの本を題材に、潜在意識の世界を解説します。

 

*豚の背を掻く

 

ある夏、わたしは本を売って、大学へ通うための稼ぎとしてしていました。わたしは農場に入り、本を買って欲しいと農夫に話しかけました。

 

農夫「若いの、俺は何も読まない。何も読む必要もない。俺は自分の豚にしか興味はないんだ

 

エリクソン「あなたが豚に餌をやっている間、そばに立って話をさせてもらえませんか」

 

農夫「だめだ。あっちへ行きな、若いの。あんたにとってちっともよいことなんてないよ。俺はあんたをかまってやれないよ。豚の餌やりに忙しいんだ」

 

それでも、わたしは自分の本について話ました。わたしは農場少年だったので地面に落ちている屋根板片を取り上げて、話しながら無造作に豚の背を掻き始めました。これを見て農夫は手を止め、こう言いました。

 

豚の背の搔き方を知っているようなやつ、しかも豚の好むやり方でできるやつは、どんなやつか知りたくなった。今夜、うちに来て夕食を食べないか。本も俺が買ってやろう。あんた、豚が好きなんだね

 

ー私の声はあなたとともにーより

 

エリクソンは言葉巧みに本の良さを説明して売り込みに成功したのではなく、俺は自分の豚にしか興味はないんだ」という農夫の発言を素直に受け止め、豚が好む背を掻くというボディランゲージで「わたしも豚のことを知っていますよ」と暗に示し、農夫の共感を勝ち取り、本を買ってもらいました。

 

わたしたちは自分の目的を遂げることに夢中になると、相手が出しているサインを見逃してしまいがちです。つい、上手に説明したらわかってもらえると思い、そこに力を注いでしまいます。

でも、交流において、ほんとうに必要なのはそこに通う共感、「わたしも同じ気持ち」と感じることなのです。

 

共感が通うからこそ、その人物に興味を抱き、その人物のことを知ろうとし、信頼構築に至ります。エリクソンの例でみると、話す言葉以上に態度や振る舞いなどでボディランゲージの方がインパクトがあるのかとさえ思います。

 

エリクソンはさまよっているはぐれ馬を見つけてその馬に乗り、自由に歩かせて帰り道を思い出させ、元の飼い主の所に戻すことができて驚かれたことがあります。人のみならず、動物の気持ちにも寄り添うことが可能だったのでしょう。

 

わたしたちの顕在意識(気づいている意識)と潜在意識(無意識の心)は、まるで、本を売りたいエリクソンと本に興味のない農夫あるいはエリクソンとはぐれ馬の関係のようです。共感=「同じ気持ち」が通えば、目的を遂げることは容易なのですが、それができないと、顕在意識の要求に潜在意識はテコでも動きません。

 

顕在意識が早く仕事を完了したいと計画を立てても、意識の95%を占める潜在意識がそれに興味が無い場合、思ったようにはかどりません。逆に潜在意識が関心を向けるものは、顕在意識が抗ってもすばやく実行できたりします。

 

また、そのコミュニケーションも、言葉よりもイメージや感情や感覚の方がダイレクトに伝わるのです。エリクソンが何を言っても聞く耳持たない農夫が、エリクソンが豚の背を掻く動作を始めるとすぐ好意を表したように。

 

ひとりの意識の中なのに、なぜわたしたちの顕在意識と潜在意識の意思疎通はままならないものなのでしょうか。

それは、わたしたちの顕在意識が絶えず外側の世界に関心を寄せ、内側の世界(潜在意識)を無視しているからです。

 

何かやり遂げたいことがあるときは、「それは外側の世界だけを意識していないか?内側の自分(心や身体)にとってメリットがあることだろうか?」と自問してみるとよいでしょう。

 

もし、外側の世界の都合だけの案件を実行しようとしているときは、内側の自分(心や身体)にとってメリットをもたらす何か(心や身体の衝動)に気づいてあげて、心地よさや安らぎを与える約束を先にしておくと、潜在意識も協力的になります。

すると、意欲やワクワクする気持ちを伴って行動できるように心や身体も協力してくれます。

 

エリクソンは12室(潜在意識~集合意識のハウス)にやぎ座のキロンを持っていますから、ほんとうは見えない心の中を理解することに苦手意識を持ち、それ故、人一倍努力してそれを探ろうとしたはずです。その結果、誰よりも鋭く人を観察して、発言の意味を深堀して真意を突き止めるクセがついていたのでしょう。

 

エリクソンのMC(天職のハウスの始点)は、隠れた見えない真実・本質を追求するさそり座です。天職のハウスにさそり座のドラゴンヘッド(魂の目的)も水星(思考)も持っている彼にとって、人の心の中はいつも尽きない興味の的だったのでしょう。

 

また、12ハウスのやぎ座キロンとやぎ座火星(モチベーション)はコンジャンクションしていて、6室(貢献のハウス)のかに座海王星(直感)と180度の葛藤するアスペクトをとっています。

 

エリクソンがかに座的な思いやりの直感で貢献しようとすると、彼の潜在意識はやぎ座的な経験に基づく技術を機能的に使いたがり、いつも抗っていたことでしょう。

 

火星が12ハウスにあると、サイキック能力が無意識に発動しやすいのですが、キロンがそこに重なることでそれ否定する傾向が出ます。反対側に位置するかに座海王星とも葛藤している間は、冴えた直感力を貢献に活かすことも難しかったと思います。

 

これらのことから推測されるのは、サイキックな直感情報で自分や他者の心の中がかなりわかるにも関わらず、葛藤によりその情報が信頼できない状態にあると、かえって直感情報は混乱を招くので、実際の言葉やボディランゲージの分析の方に意識を向けていたのではないかと推測できます。

 

でも、経験を積み、キロンの苦手意識が克服されて強味に変わり、12ハウスのやぎ座のキロンと火星のコンジャンクションとハウスのかに座海王星の180度の葛藤が統合に至ると、魔術師と言われるくらい患者をトランス(変性意識状態)に入れることに長け、精神療法と催眠療法の大家になったのでしょう。

 

次回もミルトン・エリクソンの「私の声はあなたとともに」の解説を予定しています。

 

わたしのサロン、リブラライブラリーではあなたの心のしくみをホロスコープで解説し、心の制限、葛藤が引き寄せる現実問題にセルフヘルプで立ち向かえるようサポートします。

 

詳しくはこちら をご覧ください。

 

新メニュー(月の欲求・土星の制限の観念書き換えワーク、キローンの苦手意識を強味に変えるワーク)が加わりました。

 

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。