物語ではなかった。
いきなり、日本の「厠(トイレ)」の礼賛から始まりビックリした。
が、確かに、と同感する部分も有った。
最近の家屋に住む者には判らないはずなのだが…
看護師として働いている時に自分に課した掟が有り「医師や患者と懇ろにならない」という事である。
しかし、透析病院に勤務している時に一周り程.年長の女性患者が、私と同じに読書好きな事と退職時期が近かった事もあり掟破りをした。
面立ちも心も大変に美しい方で私は退職後からは姉の様に慕っていた。
その方と仲の良かった患者のご主人は、当時、北陸銀行の副頭取になろうと言われる程の方で地元の富山に転勤で帰られた。
姉と慕う澄子さんが会いに行きたいから同行して欲しい、と言うので、透析患者の旅行には知識有る者が同行して配慮が必要、の気持ちと澄子さんと旅行出来る嬉しさも有り共に富山に赴いた。
駅からタクシー・ドライバーに伝えると途上.彼は「この角から左の公園も過ぎ.次のブロックの角まで全て馬場さんのお宅でね、この公園も馬場さんの寄付で土地も造作もね…」のお話をされた。
降車して玄関で更に驚く。扉と呼ぶのか?門と呼ぶのか厚みが20cm程あり、重くて動かすのが大変で普段は使わない.と後で聞いたが時代劇の大名屋敷みたいで、そこを使わず脇に有る時代劇で門衛の使う入口から中に入った。
説明し出すと果てない驚きの連続で切れる間がないので… いろいろのあと
客間に案内され広すぎる広間の床の間の前に布団が用意され…
本題の厠に行って…😳 まず蛇口が8つ(?)もある手洗い場がある
厠に入ると前室が10畳以上あり、また引き戸を開けると6畳間位の広さに、リノベーションはしてあり、和式水洗トイレになっていて、しゃがんで
なんとも落ち着かず、お尻丸出しで後を振り返りたくなる。
澄子さんと二人、一生に一度も体験出来ない事を体験したね、と夜遅くまで会話。
朝はお庭にいるカッコウの声で目覚めた。
今はお二方は他界し天上の人だ。
谷崎先生の記した厠はこの位の物かと、聴きながら思った。
陰翳礼讃、の次の話題は「食」であり和食と食器と、ほの暗い中での食事への格別な思いが、よく理解できた。
「陰翳礼讃」の最後の話題は「女」である。
耽美主義の作家と呼ばれるのがよく判る内容であるけれど、女の私が、女を評する内容には意見の述べようも無い。
ただ、かつての既婚女性のお歯黒は知っていたが、唇を青く染める化粧は初めて識る話だった。
三つの話題の最後に、谷崎自身の考察が短く入る。