みなさんは、「マネキン」という言葉を聞くとどんなことをイメージしますか?

 

衣服の展示に使われる等身大の人形(マネキン人形)をイメージされる方が多いかと思いますが、

 

デパートやショップなどで商品の説明や試食販売、実演販売などを行う販売員さんのことでもあります。


売り場で直接お客様に対して販売商品のPRをし、

 

使用方法や調理方法等の実演などでお客様の購買意欲を高めるための職業で、

 

商品の魅力を正しくお客様に伝え、お客様の疑問を解消し、ご要望に応えること。

 

そうしてお客様に満足感を与え、店舗とお客様の架け橋になることが、

 

マネキンが果たす大切な役割なのです…。

 

先日、スーパーのショッピングモールで、

 

試食・販売のプロモーションに参加しました。

 

「ご試食いかがですか?」と言って、

 

商品を販売するのです。

 

生産者や仕入れに関わる複数の関係者で取り組んだのですが、

 

そこに「マネキンさん」が、参加していたのですよ。

 

「おはようございます。」

 

現場に現れた「マネキンさん」…。

 

一目みて、

 

「この人やばい…」

 

「明らかにマネキンさん」

 

「身に纏っている空気感が明らかに違う…」

 

出逢った瞬間に私はそのように感じた…。

 

スーパーの店員さんたちも、

 

「お久しぶりです」

 

「お元気ですか?」と笑顔で駆け寄ってくる。

 

そのマネキンさんは、何か人を惹きつける魅力がある。

 

私は、その日、マネキンさんの動きを観察しまくった。

 

「お得ですよ!」

 

「今回限りの特別価格ですよ!」

 

「本日限りですよ!」

 

「今日は特別にノベルティーも差し上げます!」

 

そのマネキンさんは、

 

そのようなことは一切言わない。

 

「ご試食いかがですか?」と言って、

 

絶妙に相手との距離感を取って、

 

真横に接近することもあれば、

 

ある程度距離をとって、

 

徐々に距離を詰めて、

 

陳列された商品の前まで連れ来る。

 

まわりの人は、

「お買い得です!」という切り口でアプローチしているのに、

明らかに違う…。

 

試食をしていただき、

商品購買意欲を掻き立てる会話を楽しんでいる。

そう、商品を真ん中において、

お客さんとの会話を楽しんでいる。

商品の良さを説明しまくるとかではない。

日常の暮らしについて会話を楽しんでいる。

 

「お買い得です!」という、

ワンウェイのメッセージ伝達ではなく、

双方向の会話を楽しんでいる…。

 

そういえば、試食品の大きさを決める時にも、

小さすぎてはダメ、

一口で食べることができるサイズだと、

会話が続かない…。

と、そのマネキンさんは言っていた。

大きすぎてもダメ、

小さすぎてもダメ。

3口くらいで食べることができるサイズがいいと…。

 

試食品のサイズにも、

そのマネキンさんの、

会話を楽しむこだわりがあったのだ。

 

プロと言うのは、

普通の人が気にしないことを、

普通じゃないレベルでこだわるのだ。

 

私は、そのマネキンさんの行動を観察して、

いろいろ話していると、

笑顔で「私の技を盗まれている…。」と、

言われた。

 

すっかり、マネキンさんと打ち解けた私ですが、

入口からカートを押して入ってきたお客さんに対し、

遠くから一目見て、

「あの人買うわよ!」と教えてくれたマネキンさん…。

 

私は、「明らかに買ってくれそうにないな~。」と思いつつも、

「ご試食どうぞ!」と笑顔で差し出した。

「いえいえ」と手を振り試食を断られたので、

「ご試食だけでもどうぞ!」と言葉を添えると、

「どれなの?」と、

試食もせずに言われるので、

「こちらです。」と案内すると、

「おひとついただくわ…」

という流れでご購入。

 

驚いた私は、

マネキンさんに、

「なんであのお客さんが、買うことがわかったんですか?」と聞くと、

「わかるのよ、なんとなく…」

 

そのマネキンさんは、

言葉交わさずとも、

お店に入ってきたお客さんの、

目線や動きで何か感じているのだろう。

そうとしか思えない、

私たちと明らかにお客さんを観察しているポイントが違うのだ。

 

当たり前ですが、マネキンさんって、
コミュニケーションの達人だ。

 

ふと思ったのですが、

マネキンさんって、対人コミュニケーションスキルで仕事をする、

究極のフリーランスだな…。

 

対人コミュニケーションスキルを研ぎ澄まし、

販売する商品を真ん中に置き、

相手の日常の暮らしにまつわる会話を楽しむ。

 

商品を売っているのではなく、

相手の日常の暮らしについて会話を楽しんでいる。

 

マネキンという職業がある。

 

これは、職業というより、

 

マネキンという生き方かもしれない。

 

そのようなことを感じた一日だった。

 

そのマネキンさん、あり方で生きている。