以前、ある会社役員と話をしていたら…

「自分は体調も悪いし、そろそろ後継者を育てて、交代しようと思っている…。」

と話を持ちかけられた。

「そうですか、確かに入院もされたし、体のことは心配ですね。」

しかし、この人は本当に後継者を育てる思いがあるのだろうか?

はなはだ疑問だった。

その人は、役員になって10年。

会社を黒字にするんだ、利益を出すんだと必死になって頑張ってきた。

結果も残してきたので、自信とプライドも身に付いている。

恐らく、自分でなければという気持ちもある。

それは、会話の端々からうかがえる。

私は、直感で「この人は後継者を育てることはしない。」と確信した。

なぜなら、いつも緊急かつ重要なことにしか自分の意識がないからだ。

それから、2年…

その会社の近況を聞く機会があった。

やっぱり後継者を育てていない。

経営の手法は以前のコピーを繰り返すだけ。

社内の風通しは悪くなっている印象を受ける。

そもそも、自分の後継者を育てるということは、自分で自分の首を絞めることになる。

いつも緊急かつ重要なことにしか自分の意識がない人は、そんな危険なことをしない。

2年前の私は、そう判断していた。

もし、本気で自分の後継者を育てると言うなら、会社の未来を描き、目の前の利益以上のもっと大きな目的を描く必要がある。

その時初めて、自分の能力の限界を知り、新たな世代にバトンを渡すのだと思う。

「自分は体調も悪いし、そろそろ後継者を育てて、交代しようと思っている…。」と言うのは、誤解を恐れず言うなら、嘘だ。自分以外にはできないということの裏返しだ。


そもそも、環境変化のスピードが激しい今日、1人の人間の能力はそんなに長く通用しない。

だから、10年も役員をすると、役員を続けることが目的になる。

本気で自分の後継者を育てると言うなら、会社の未来を描き、目の前の利益以上のもっと大きな目的を描く必要がある。