倒れ込むように施術ベッドに二人横になりながら、
ここで? カギは
あ、
また空っぽな笑い方をする。
彼はクリニックのドアにカギをかけ戻ってきた。
映画やドラマじゃないから、現実だからこの気の抜けた間がやりきれない。
いつもは締め切られた事務所のカーテンを開けまた私の手を引きソファに座らせる。
こんな時こそ何か話してくれたらいいのに黙ってまたキスする彼
暖かい手
香水の香りまで心地いい
肌に直接触れる彼の手
ぬがしやすい服で来た自分に自己嫌悪
彼の一つ一つを感じている
硬い髪
肌
胸の厚み
腕の筋肉
素肌を重ね 入ってくる彼がとても熱い
体の力が入ったり
抜けたり
こんなに感じる事がまだ自分にも出来るんだ
皮膚と皮膚の音
濡れた粘膜の出す音と彼の漏れる声
好きだよ ユリ
名前で呼ばれビクッとする
あ いい ごめん おれいきそ
彼の背中に回した手で抱き寄せると苦しいくらいにだきかえされた
苦しい
とまらない
動きが止まると尚も強く抱きしめる。
このまま、こうしてここで眠りたい
大丈夫?
と聞く彼に黙ってうなづいて腕を自分引き寄せる
どのくらいたっただろう
少し寝たような…
まだ 居れる? もう時間ないね
ちょっと微笑んで彼を見た
抱きつくと優しく首筋キスする彼
電話しないでね。 ごめんって。 私には片切さんとの時間が必要なの 長くゆっくり、そばに居て欲しい。
こんなセリフも用意してあった
彼はまた私を抱きしめて何度もキスする この余韻の中にいたい。どこにも行かず。
服を着始める自分が妙に惨めに感じる。現実なんてこんなものだけど
こんなに名残惜しく帰る自分に呆れてしまう
彼に後ろから抱きしめられる。
運転気をつけて
と彼。
うん お休みなさい
本音 ~
これからどうするのいつ電話してくれるの
メール教えて
若い自分だったら 先が分からない事に耐えられなかっただろう こんな本音を言ってたと思う
あの でん…
と彼が言いかけたのを
じゃ、また。
寒いね
と打ち消した。
家までの道
もう一台も車はない
