長かったイギリス滞在も終わった。帰る日が来た。
切なくなどはなく、私はただ解放されたいとだけ思っている。一人になることに一抹の不安もあるが、一人ならどうとでもなるであろう。
駅へ行く時間が来た。彼の父が送ってくれる予定だ。みんなとハグするが、以外と感慨もそれほどではないのである。軽くハグして家を出た。家の中から手を振っているのが窓から見える。こちらも手を振って返した。
駅に早めに着く。彼の父には、一緒に電車を待たなくていいよ、と伝えた。そしてハグをして別れた。いつでも来ていいからな、とまた言ってくれる。帰ってくるよ、と伝えて、ハグを解いた。
遂に一人である。
切ないようなさっぱりしたような、不思議な感覚だ。コーヒーを買って時間を潰した。
電車の中ではずっと編曲をしていた。スーツケースが窃盗に遭わないか心配でチラチラ後ろを見てしまった。空港に着く。昨今の情勢の為セキュリティが非常に厳しい。時間が掛かり非常に面倒で、バッグが何回もセンサーにひっかかるが、なんとか乗り越えたようである。
またあの馬鹿でかいA380に乗り込む。やはり思い出が突発的に出てきて感情を刺激する。泣ける。まだ涙が出てくる。強い後悔というのは兎に角残酷な感情である。牧師が言うにも、救済というものはなく、慣れるだけだと言う。辛いものだ。
アイスガールズという如何にも10代女子のための映画を見た。有名な
乗り継ぎのドバイに着いた。ほとんど寝ていない。ここでまたセキュリティを通らなければいけなかった。通過してまたベルトなどをつけていると、ヘッドフォンがないことに気づく。
彼がプレゼントしてくれたヘッドフォンだ。失くしたくない。これ以上彼の思い出なくなるのは嫌だ。もっと彼と一緒にいたかったのに。
2時間ほど搭乗時間すれすれまで粘り、係員も探してくれたのだが、出てくることはなかった。今検索してみると、高価な物である。強烈に惜しい。
そしてバンコク行きへの飛行機へと乗る。この飛行中もあまり寝れなかった。前も書いたDeparture Cardをまた書く。ブリジットジョーンズシリーズを見ているうちに着いた。
タイ、バンコク。喧騒で道が臭くて煩くて人が優しくて悲しくてそれでも彼と幸せに暮らすはずだった街。
電車でホテルまで行った。スーツケースとジャケットを持って歩くと汗が滝のように出てくる。苦労して着いたホテルは汚く、安いことだけが取り柄のようだ。それでもベッドはそれなりに大きい。
チェックインで自分のカードが使えないことに気づく。このお金を頼りにしていたので、使えないとなると非常に不安だ。明日電話してなんとかしなければならない。
ここで本当に一人な事を実感する。日本であったらもっとましだっただろう。ここではビザすら曖昧だ。飼い犬の為だけにここで生活をしようとしている。それでも飼い犬は私の命なのである。
午後8時頃に引き取りに行った。明日にはまたここで預かってもらわなければいけない。だが今夜は一緒に寝る。
飼い犬と一緒にいると、一人という気分なくなる。