東京45年【88-4】宇奈月温泉、有罪 | 東京45年

東京45年

好きな事、好きな人

東京45年【88-4】宇奈月温泉

 

 

 

1986年 正月

 

 

貸切風呂が空いていた。

 

 

早速、準備をして風呂に向かう。

 

 

脱衣場で浴衣を脱いでいると、玲が抱き着いてきた。

 

 

キスをした。

 

 

あんな話をしていたら、抱かれたくなったと言った。

 

 

『あー、これが良い。あーあー』と玲が叫ぶ。

 

 

脱衣場で俺は果てた。

 

 

まだ、風呂場まで辿り着いていない。

 

 

 

 

 

玲を抱き上げて湯舟に浸ける。

 

 

俺も一緒に入る。

 

 

湯舟は二人で入ってもまだ余裕があった。

 

 

玲は湯舟の中で凭れ掛かった。

 

 

『ねぇ、これって飽きるのかしら?』

 

 

『そんな事はないさ。それに飽きたらもっと違う事をする』

 

 

『そうね。探索しましょう。私も提案するわ』

 

 

『それ良いね。俺もそうする。まだまだ奥は深いよ』

 

 

『例えば?』

 

 

『玲が、カーマスートラを読んでいるから参考にする』

 

 

『脱マンネリね。今は、今のままで大満足よ』

 

 

『それは良かった』

 

 

『さっき、私を軽々と持ち上げたわね。あれ良かったわ。。。。。ねえ、キスして』

 

 

俺は軽くキスをした。

 

 

『もっと』

 

 

もっとキスをした。もっともっとキスをした。

 

 

玲の甘い吐息が漏れる。

 

 

玲の声が大きくなる。

 

 

玲の声が変わる。

 

 

薄暗い中に白い柔らかそうな雪が浮かんでいる。

 

 

玲も白い雪の様だ。

 

 

『あなたのせいよ。。。』

 

 

『俺色に染めたい。。。』

 

『バカ。。。。もう染まっている』

 

 

 

 

暫く黙って湯舟に浸かっていた。

 

 

玲は俺に凭れ掛かっている。

 

 

俺は玲の濡れて乱れた髪の毛を整えていた。

 

 

『凄く良かったわ。でも罪な奴』

 

 

『俺は、有罪か?』

 

 

『有罪よ』

 

 

『何罪?』

 

 

『誘惑罪』

 

 

『まだ誘惑レベル?』

 

 

『泥棒だわ』

 

 

『盗んでない。玲から来た』

 

 

『麻薬使用罪よ』

 

 

『白い粉じゃない』

 

 

『何でも良い。もう離れないから』

 

 

『玲も有罪だよ』

 

 

『うん。。。。』

 

 

『玲、もう茹ってる。出るぞ!湯あたりするぞ』

 

 

『そうね。フラフラする』

 

 

『ああ、じゃあ、ドライヤーするよ』

 

 

『ありがとう』

 

 

また玲を抱き上げた。

 

 

『これが好きよ!』

 

 

『何でも好きだな』

 

 

『軽く持ち上げて、安心するわ』

 

 

『だって軽いんだもん。47kg位かな?』

 

 

『そのくらいだと思うわ。でも良く分かるわね』

 

 

『山で背負ったザックの最高が52kgだったから、それ以下なら分かる』

 

 

『52kgって。。。私を背負って山登りが出来るって事なの?』

 

 

『ああ、そうだな』

 

 

『それって、ずーっと背負っているんでしょう?』

 

 

『そうだよ』

 

 

『凄い』

 

 

『はい、降ろすよ』

 

 

『ああ、降ろされちゃった。。。。もっとダッコして』

 

 

『今度な!ドライヤーするぞ!倒れるぞ!!!』

 

 

『はーい』

 

 

俺は脱衣場で玲の髪の毛を乾かした。

 

 

『玲の髪の毛は、細くてツヤツヤしているよね。綺麗だよね』

 

 

『それも好き』

 

 

『そうじゃあなくて、不思議だから聞いているんだ。何かしているの?』

 

 

『髪はシャンプーとリンスだよ』

 

 

『それだけ?家にあるエメロンだけ?ホントに?』

 

 

『そうよ』

 

 

『そうなんだ。でもホントに不思議だ』

 

 

『司がこうやって髪を乾かしてくれるのって、何度目だろうね?』

 

 

『回数か?たくさんだよ。いつもご飯を作ってくれるお礼だよ』

 

 

『いつも、そう言ってくれるわ』

 

 

『だって他に出来る事ないし。。。』

 

 

『いろいろやってくれてるわ』

 

 

『半分も出来てないよ』

 

 

『半分も要らないわ』

 

 

『どうして?』

 

 

『良いから』

 

 

『良くないよ。玲に負担掛けているから』

 

 

『そう言ってくれるだけで良いの。ありがとう』

 

 

その夜は気温が下がった。

 

 

 

 

 

 

 

翌朝は零下だった。

 

 

黒部の上流に向かった。

 

 

向かったと言っても黒部を垣間見る所までも行けない。

 

 

ほんの入り口だったが、良い景色だった。

 

 

寒い朝だったが、玲は元気だった。

 

 

『うわぁ、凄く狭い渓谷ね』

 

 

『もっと奥まで行ければ良いんだけど、ここまでだね』

 

 

『でも、自然の奥深さって感じね』

 

 

『ああ、雪が無い時期は、ここから欅平ってとこまでトロッコ電車で行けるんだよ。

 

そこまで行けば奥鐘山まですぐなんだ。

 

玲がここにいる事も不思議だし、一緒に居る事も不思議な感じだ』

 

 

『いい匂いね。自然の匂いがするわ。野生の匂いだわ』

 

 

『ああ、空気が美味いな』

 

 

『こんな所にこんな寒い季節に一人で来たのね。

 

どんな思いで来たのか、私には想像もつかないわ。

 

でも強い思いだったんだわ。

 

ここに冬に1人で来るのは、弱い思いでは来られないわ。

 

私が思うより、もっともっと強い思いだわ』

 

 

『怖いから「行くぞ!」って気合を入れないと行けないんだよ』

 

 

『そんな軽い感じじゃあないでしょう。ここに冬に一人でって。。。』

 

 

『まあ、良いじゃないか。

 

来れたんだから。それに玲が感じたままで良いのさ。

 

さあ、帰りに景色が良い所でおにぎりを食べよう』

 

 

往復3時間程の道をゆっくり歩いた。

 

 

楽しい散策だった。

 

 

 

 

 

 

宿に帰り付いて、少し休んでから成ちゃんの店に行った。

 

 

楽しい時間を過ごした。

 

 

成ちゃん対玲の料理対決は楽しかった。

 

 

玲の料理は美味かった。

 

 

登山家が集まった懇談会も楽しかった。いろんな話をした。

 

 

お互いの失敗談や。登った山の事、登れなかった山の事、行ってない山の事。。。

 

登れなかった山は、振られた女で、行ってない山はアタックする勇気が無かった女とみんなが言った。

 

 

玲は、正ちゃんとの料理対決+隠し味対決で、10勝0負で圧倒した。

 

 

正ちゃんが可哀想だった。

 

 

玲は勝ち誇っていた。

 

 

 

玲とその夜もいろんな話をした。

 

 

SEXはもちろんした。

 

 

話せども語りつくせない思いがあり、身体の交わりはその刹那を激しく求め合った。

 

 

 

さらに心が重なり合うのを感じた。