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に置いてある。先祖伝来の軸物などは客待ち顔に壁の上に掛かっている。
 七郎左衛門の家には、三浦氏から山上氏、山上氏から青山氏と分かれて行ったくわしい系図をはじめ、祖先らの遺物と伝えらるる古い直垂
ひたたれ
から、武具、書画、陶器の類
たぐい
まで、何百年となく保存されて来たものはかなり多い。彼が客に見せたいと思う古文書なぞは、取り出したら際限
きり
のないほど長櫃
ながびつ
の底に埋
うず
まっている。あれもこれもと思う心で、彼は奥座敷から古い庭の見える方へ行った。松林の多い裏山つづきに樹木をあしらった昔の人の意匠がそこにある。硬質な岩の間に躑躅
つつじ
、楓
かえで
なぞを配置した苔蒸
こけむ
した築山
つきやま
がそこにある。どっしりとした古風な石燈籠
いしどうろう
が一つ置いてあって、その辺には円
まる
く厚ぼったい「つわぶき」なぞも集めてある。遠い祖先の昔はまだそんなところに残って、子孫の目の前に息づいているかのようでもある。
「まあ、客が来たら、この庭でも見て行ってもらおう。これは自分が子供の時分からながめて来た庭だ。あの時分からほとんど変わらない庭だ。」