救急搬送時の注意事項 | QUEST

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アメリカの筋ジストロフィー協会が発刊しているQUESTの記事を紹介します。

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神経・筋疾患患者の救急搬送時の注意事項


ER(救急救命室)で問題となるのは、ERに行くということ自体よりも、ERで何が行われるかということです。


記事の概要

・多くのERの医師・看護師は神経・筋疾患になじみがないため、筋疾患患者にとって、適切でない処置がされてしまうことがあるかもしれません。

・この記事では、ERで発生する一般的な問題について扱っています。また、そういったケースを避けるためのヒントを提供します。


by Donna Albrecht on July 1, 2011 - 4:18pm

QUEST Vol. 18, No. 3 に掲載された記事です。


神経・筋疾患患者がに救急救命行為が必要な時、ERに早く行くことだけが重要というわけではないです。ERのスタッフが患者が筋疾患であることによって、特別に必要とすることを理解する必要があります。


筋疾患専門医のGregory Carterによると、「ERの医師の多くはこれらの疾患を理解しない。そのため、呼吸器に問題がある患者が意思に反して気管切開の施術を受けてしまうことがるかもしれない」とのことです。


実際、彼の患者で、DMD(デュシェンヌ形筋ジストロフィー)やSMA(脊髄性筋萎縮症)、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の人たちがそういったケースに出くわしています。


Carterによると、呼吸器の問題は、筋・神経疾患患者がERに運ばれる一番の理由です。他の主な原因は、脱水・便秘・腹部の痛みなどです。


しかしERでのもっとも大きな問題は、ERに行くということよりも、ERで何が行われるかということです。前述の意思に反する気管切開の施術のほか、呼吸器で苦しんでいる患者は、酸素を補給されてしまうかもしれません。その患者の問題が酸素不足ではなく、呼吸筋が弱くなっていることであるにもかかわらず・・・。必要がない酸素をたくさん取り入れることは、呼吸停止を引き起こす可能性があります。


また、このような筋疾患(筋ジストロフィーの一部やセントラルコア病、マルチミニコア病など)では、麻酔を使った際に悪性高熱と呼ばれる危険な状態を引き起こす可能性があります。


ERでは筋・神経疾患の症状が深刻な間違いを起こす可能性があると、ERの小児科医のMichle Dressmanはいいます。


たとえば、フリードリヒ運動失調症の人は、不明瞭なしゃべり方をする場合がありますが、ERの医療従事者は、それを聞いて薬物やアルコールの乱用を疑うかもしれません。また、神経・筋疾患で、だらりとした手足で反射がない場合、ケガをしてないか脊椎全体の検査が行われるかもしれません。DMDが進行した青年がお腹が痛いといった場合、胃の問題として扱われるかもしれませんが、実際には心臓に原因があるかもしれません。


ERに行く際のもっとも有効な対策は、緊急事態が発生する前に準備しておくことです。そのために、医療専門家、神経筋疾患の患者と、小児患者の親の経験談・ヒントをまとめました。


最新版にアップデートされた、完全な医療情報を提供しましょう


ERの医療従事者と効果的に意思疎通するために、診断名/アレルギー/電話番号/より細かい情報を得るための病院やかかりつけ医の情報を身につけておくことがよいでしょう。
情報がいつアップデートされたか、ということが重要になります。できれば90日以内、少なくとも1年以内の情報が必要です。
(訳者注:原文の記事では、アメリカのサービスMedicAlertが紹介されています。)


付き添いして、ERでの代弁者となりましょう


ERでは、患者自身がしゃべれる場合でも、配偶者や両親、友人など誰か他の人が、医療スタッフに「患者が筋ジストロフィーを患っていて、多発性硬化症ではないこと、ベッドから自分で起き上がれないこと、平らな場所には寝れないこと、拘縮があること」などを伝えるのは役に立ちます。付き添いの人は、患者がナースコールを押せない場合にかわりに押すこともできます。


付き添いがいると、ERスタッフだけでなく、検査室やレントゲン室のスタッフもその特別な事情を知ることができます。


肢帯型筋ジストロフィーのMary Sammonsは、レントゲン室でブレーキなしのタイヤ付の椅子に座らされてしまいました。移動しようとしたとき、椅子が自分のしたから滑ってしまい、レントゲンの機械に必死でしがみつき、3人がかりで車椅子にやっとのこと乗せてくれたとのことです。


付き添いがいても、自己主張するようにしましょう。あなたはどんなことが自分にとって普通かということが分かっています。多くのERの医者は神経筋疾患のことをよく知らず、実際には特に重要な兆候を過小評価するかもしれません。もしなにかがおかしいと感じたなら、誰かが気づくまで伝え続けましょう。


医療提供者は通常、ERの患者と一緒に代弁者の人がいることをよく思ってくれますが、これは好意であるということも覚えておきましょう。もし付き添いの人や配偶者、患者が感情的になってしまったり、乱暴な言葉遣いだったりすると、待合室に戻されてしまうかもしれません。


あなたの意思を前もって示しておきましょう


生死を決めるような場面となったとき、あなたの意思を実行してもらいたいのなら、書類を準備しておく必要があります。書類はインターネットでも入手できますが、あなたの州で認められているものを使いましょう。

(訳者注:アメリカのケースとなります。ご自身の意思を反映することについては、主治医の先生とご相談ください)

中身は以下のようなものです。


・自分が意思を伝えられなくなった時の医療に関する決定をできる代理人

・どの程度の延命措置や痛みを取り除く処置をしてほしいか、体の一部や全部を寄付したいか

・医療を行ってほしい医師の名前、連絡先


(訳者注:原文では、Five wishes Living Willという書類を提供してくれる機関を紹介しています。26ヶ国語に翻訳してもらえるとのことです)


こういったことは緊急時に役立つだけでなく、重病になったときのケアとして、家族にとって重要かつ難しい決定を考え始めるのに役に立ちます。


悪いことだけではないです


ERの医療従事者はいつも神経・筋疾患の状態を見ているわけではないのに、患者や両親、友人などに、与えられる情報が多いことに、あなたは驚くかもしれないです。


たとえば、SMAの私の娘が気管切開を受けたすぐあとのある夜、彼女の装置がつまってしまって、それをなおすのに苦労していました。ちょうど外科手術したときの管を取り外し可能で清掃可能なものに取り替えようとする時だったので、ERの医師は何を行う必要があるか教えてくれて、彼女の装置を取り替える様子を見ていてくれました。


とてもびくびくしたけれど、本当に役に立ちました。


ERの応急処置が、実際よい状態に導いてくれることもあります。たとえば、Anne Rutkowskiは、ALSですが、食事を取り入れる管に問題があってERに行ったときのことをこう振り返っています。


「病院には、自分が使っているのと同じタイプのチューブがなかったのだけど、カテーテルを一時的に使ってくれました。自分の使っているチューブを手に入れたと医師が伝えてくれたとき、あまりにそれがよかったので、交換しなくていいと言ってしまいました」


 救急搬送に備えての準備


  • 主治医に現状を確認しておきましょう。定期通院の際、専門医と、肺や心臓などの「緊急時の」話をしてください。どのような症状が深刻か、質問して、救急救命室ではどのような状態になりうるか、確認しましょう。主治医がどの病院と連携しているか確認しておくことで、病院を選べるときにそこにいくことができます。ERに運ばれる途中で、主治医に連絡してもよいか確認しておきましょう。主治医が連携していない病院であっても、主治医と連絡をとりたいはずです。
  • 前もって緊急時の意思を確認しておきましょう。
  • 必要な情報を1箇所にまとめておきましょう。緊急時に持ち出せるファイルを用意し、そこに必要なもの(保険情報、診断名、医師の名前と連絡先、現在処方されている薬や飲んでいるサプリメント、最近の検査結果)を入れておきましょう。
  • 医療情報にアクセスできるようにしておきましょう。
    (訳者注:原文では、MedicAlertというサービスが紹介されています。小さな持ち運び可能な記憶装置に医療情報が入っていて、財布やキーホルダーと一緒に持ち歩けます)
  • 友人や親戚を連れて行きましょう。彼らがいることで安心したり、気をそらしたりできます。また医療スタッフに代わりに話したり、処置や検査についてメモを取ったりすることができますので、あとで質問があったり、意思を伝えるときに役に立ちます。
  • 長時間待つ準備をしておきましょう。本や音楽プレーヤーは時間を早く感じさせてくれます。患者が子供の場合は、子供が好きな毛布などをもっていけば、ストレスを軽減させてあげられます。両親や友人がコーヒーやサンドイッチを買うには小銭も必要です。(ERの医師の許可なしに飲食物を患者に与えるのはやめましょう)携帯電話と充電器も忘れずに!
  • きちんと話しましょう。待合室だろうが、救急救命室であろうが、何か変化があった場合はERのスタッフに伝えてください。あなたが伝えなければスタッフは気づかないかもしれません。

筆者:Donna Albrecht (北カリフォルニア在住の作家) 娘のKatieとAbbyは生まれつき、SMA Ⅱ型(脊髄性筋萎縮症)のため、「誰よりも多く、ERの内部を見てきた」という。夫と犬と暮らしている。

訳:西岡 奈緒子


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原文は下記ページでご覧いただけます。

Going to the Emergency Room: Tips for People with Neuromuscular Diseases

アメリカ筋ジストロフィー協会の許可をいただいて翻訳・記事を掲載しています。

Used with permission of the Muscular Dystrophy Association of the United States.

Excerpted from an article in MDA's Quest magazine.