漆黒の港を切り裂いて、打ち上げ花火が花開く。視下の横浜は、僕にとって手中に収めるべき戦場に過ぎなかった。
ウェスティンホテル横浜。久々の牙城への帰還である。フロントでカードを提示すると、支配人の顔色が変わる。僕の威圧感に気圧されるように差出されたカードキーが示していたのは、最上階に近いスイートルームの部屋番号だった。部屋へのアップグレードすら、僕の前では当然の権利に過ぎない。
クラブラウンジへと足を踏み入れ、僕は静かにグラスを傾けた。
選んだのは「ザ・グレンリベット12年」。ダブルのストレートを連続して4杯、喉の奥へと流し込む。チェイサー代わりに流し込むシャンパンもまた4杯。芳醇なアルコールが脳髄を刺激するが、僕の思考はかえって冴え渡る一方だった。この歳になっても二日酔いひとつ知らぬ鍛え上げられた鉄の肉体と肝臓。タフでなければ、この過酷な世界では生き残れない。
翌朝、メインダイニング「PACIFIC TABLE」の喧騒を余所に、僕は職人がその場で握る出来立てのおにぎりを口に運んだ。研ぎ澄まされた味覚を満足させる極上の朝食。完璧な栄養補給だ。
――だが、最高の愉悦はこれからだった。
これほどの贅沢を貪り尽くしながら、僕の懐からは一文も減っていない。すべては綿密な計算のもと、手に入れたポイントによる「無料宿泊」だ。
僕は冷ややかな笑みを浮かべ、闇に向かって静かに呟く。
「興味があるなら、いつでも連絡してくるといい……」


