埼玉県北本市。駅前の賑わいから少し離れたその場所に、その店はある。
「肉のコバ」——。

足を運ぶたび、期待を裏切ることなくそこには人の列が伸びていた。誰もが静かに、だが確固たる目的を持って順番を待っている。かく言う私もその一人だ。視線の先にあるのは、ガラス越しに並ぶ揚色に輝く惣菜たち。今回は迷うことなく、店内の揚げ物を「すべて」手に入れる決断を下した。

一度に味わい尽くすには、あまりにも惜しい。自宅の冷えた空気の中で、数回に分けて少しずつ紐解いていく……。その計画だけで、胸の奥で静かな高揚感が芽生えていた。

店内であらかじめ味わった「厚切りとんかつ」と「メンチカツ」の記憶が脳裏をよぎる。溢れ出る肉汁と、衣の香ばしさ。確かに美味かった。だが、冷徹な思考がふと過去の記憶を呼び覚ます。山梨県にある「大西肉店」——揚げ物の完成度という一点においては、あちらに軍配が上がるかもしれない。しかし、価格と満足度のバランス、すなわちコストパフォーマンスという観点に立てば、この埼玉の地が鮮やかな勝利を収めていた。

帰宅後、静まり返った部屋でフライパンを熱する。
今夜の主役は、買い求めた「イチボステーキ」だ。

表面にきれいな焼き目をつけ、ナイフを入れる。口に運んだ瞬間、計算し尽くされたかのような肉の旨味が広がり、思考が一瞬停止した。絶品、という言葉すら安っぽく思えるほどの衝撃。

皿の上に残されたかすかな肉汁を眺めながら、私は静かに満足感を噛み締めていた。この選択に、狂いはなかった。

肉のコバ
048-592-3201
埼玉県北本市中央1-84-5
https://tabelog.com/saitama/A1104/A110401/11031865/