昨年十月、突如として湾岸の空を切り裂くように出現した「JWマリオット・ホテル東京」。マリオット・グループの最高峰に位置する、選ばれた者のための牙城だ。
本来なら、この一室に身を横たえるだけで十二万の現ナマが吹き飛ぶ。だが、今日の俺は一銭も支払っていない。タダだ。
さすがはJW、室内を支配する空気も、研ぎ澄まされたファシリティも、非の打ち所がないほど洗練されている。
自宅からわずか十五分の距離。いつでも来られる場所ではあった。だが、この贅沢な空間を一度この肉体で味わっておきたかった。その直感に狂いはなかった。