二十五年。数字にすれば四半世紀という膨大な歳月が、その店には流れていた。
『本場韓国家庭料理 柳』。私がまだ若く、世界の輪郭すら曖昧だった頃から通い詰めている場所だ。
その夜は、久しぶりに旧友と机を挟んでいた。互いに重ねた年齢の分だけ、背負うものも変わった。だが、暖簾をくぐった瞬間に迎えてくれたオーナーの笑顔だけは、あの頃と少しも変わっていなかった。時を止める術(すべ)を、彼女だけは知っているかのようだった。
注文したのは、いつもの「サムギョプサル」と「チャプチェ」。
鉄板の上で弾ける音を聴きながら、私たちは言葉を交わした。一口、口に運ぶ。
──完璧だった。
記憶の底にある味と、今ここにある味が寸分の狂いもなく一致する。これほど残酷に変化していく世界の中で、変わらないクオリティを保ち続けることが、どれほど困難で、どれほど尊いことか。
時計の針の進みが、いつもより少しだけ緩やかに感じられた。私たちは、確かにそこに存在した贅沢な時間を、静かに噛みしめていた。
本場韓国家庭料理 柳
03-3801-4007
東京都荒川区西日暮里2-19-8 3F
https://tabelog.com/tokyo/A1311/A131105/13103141/
