組織の軋みも、日常の雑音も、その男の前では完全に霧散した。
まさにノンストレス。これほどまでに美味い酒が、かつてあっただろうか。
濃密で、そして絶対的にタフな時間が流れていく。
「この男には、いつまでも牙を剥き続けた現役の獣(けもの)でいてほしい」
グラスの底で溶けてゆく氷を見つめながら、俺は心の中で静かに、だが熱く願っていた。
――気がつけば、あまりにも至高の夜に、俺の肝臓は許容量を超えたアルコールを受け入れていた。