「明月院」――。
鎌倉における紫陽花(アジサイ)の版図において、そこは絶対的な頂点として君臨するスポットだ。

とりわけ、境内を埋め尽くすあの冷徹なまでの青――「明月院ブルー」の異名は、あまりにも有名であり、同時に人を狂わせる。

前回の潜入では、朝一という定石を信じて動いた。だが、そこにあったのは、凄まじい混雑という名の地獄絵図だった。
同じ過ちは二度と繰り返さない。それが俺の流儀だ。

今年は、あえて陽が傾き始める「夕方」という時間帯に狙いを定めて動く。
大衆の裏をかくこのセレクトが、おそらく正解だろう。西日に照らされ、静かに色を深めていく青い罠に飛び込むには、これ以上ない完璧なタイミングのはずだ。