「自分で動かない限り、幸運(ツキ)は引き寄せられない」
それが、この過酷な都市(マチ)を生き抜くための、俺の絶対的なルールだ。待っているだけの奴から順番に、運命という名のハイドラに骨まで噛み砕かれる。
昨晩、俺は動いた。
ターゲットは「西」。狙うは金運の源泉――祐気(ゆうき)。
漆黒の闇を切り裂き、愛車のエキゾースト・ノートが夜気を震わせる。目指すは、西の方角に眠る極上の湧水地だ。深夜のハイウェイを滑るように疾走する俺の網膜に、都会のネオンが冷たい光の尾を引いて消えていく。
目的地に到着した。静寂が支配するその場所で、冷徹な大地のエネルギーが湧き出している。
ボトルのキャップを外す。パキリ、と硬質な音が夜の静寂に響いた。
暗闇のなか、滑らかに、しかし圧倒的な質量を持って注ぎ込まれる透明な液体。「お水採り」の完了だ。手に入れたのは、ただの水ではない。俺の血肉を黄金へと変える、冷たく研ぎ澄まされた「西のエネルギー」そのものだ。
ボトルを掴む俺の指先に、確かな手応えが伝わってくる。
これで、金運(ツキ)の引き金は引かれた。あとは容赦なく、獲物を狩り取るだけだ。