藤が満開——その情報だけで、動く理由には十分だった。
向かったのは、あしかがフラワーパーク。
この場所には、毎年のように足を運んでいる。
夕方。
まだ空には光が残っている時間帯。
園内に入ると、景色がゆっくりと広がっていく。
満開の藤が、空間そのものを包み込んでいた。
なぜ毎年来ているのか。
答えは単純なはずなのに、言葉にすると少し違う気がする。
同じはずの風景。
だが、その年ごとに、微妙に表情が変わる。
光の角度、人の流れ、空気の温度。
すべてが重なって、その瞬間だけの景色を作り出す。
今年もまた、その中に立っている。
——やはり、いい。
特別なことは何も起きていない。
それでも、この時間が特別に感じられる。
帰る頃には、また同じことを思うのだろう。
来年も、きっと来る。

