大阪でお気に入りのパン屋、まんぷくベーカリー。
今日も例外なく、店の前には長い行列ができていた。
並ぶ理由は単純だ。
“美味いから”――それだけのはずなのに、なぜかこの店には、それ以上の引力があるように感じる。
順番が回ってきて、いくつかのパンを選ぶ。
どれも見た目は素朴だが、どこか計算された美しさがある。
店を出た私は、東横堀川のほとりへ向かった。
川沿いには桜が並び、ちょうど満開を迎えている。
ベンチに腰を下ろし、袋からパンを取り出す。
ほんのりと温もりが残っていた。
一口、かじる。
――やはり、美味い。
だがその瞬間、ふとした違和感が胸をよぎる。
この味、この感覚。どこかで似たようなものを味わった気がする。
ダナンのバインミー。
あの時も、同じように“記憶に残る味”だと感じた。
なぜだろう。
国も文化も違うはずなのに、どこか共通するものがある。






視線を上げると、満開の桜が風に揺れていた。
花びらが静かに川へと落ちていく。
その流れの中に、一瞬だけ“不自然な動き”が混じる。
気のせいかもしれない。
そう思いながらも、私はもう一度パンを口に運ぶ。
美味しいはずの時間。
穏やかなはずの風景。
それなのに――なぜか、すべてが“繋がっている”ような気がしてならなかった。