創剣記 ゴッドブレード 一章 旅の始まり
宅磨は13歳の中1で、身長159、体重47キロのがっしりしたほうの体格である。
宅磨の家は町の一角で、母はミシンでの内職で、父のほうは靴屋として働いている。
今日も母のキコキコいうミシンの音と、たまに客が来たときになるドアのベルが響きわたる。
父は冒険家だったため、足に古傷を負っている。そのためにあまり動かなくていいこの仕事を選んだのだろう。
トルディオンの町はアメリカの横暴を除けば平和な町であった。街の商店街はいつも人でにぎわい、店の威勢よい売り文句がとびかう。
トルディオンは日本の中心地から近く、また海に面しているため貿易港が多数あった。
漁業も盛んなため市場では毎朝盛大なせりが行われる。魚屋はこぞって町の北のほうにある市場に毎朝向かうのだった。
もともとが「千葉市」であるため「市」と読んだほうがいいのだが、トルディオンという言葉に「市」は似合わない。そのため「町」としてしたしまれている。
そして今日も商店街ではおばさまたちの巷の噂会議が行われていた。
最近、よくお使いで商店街へいく宅磨だったが、変な噂を耳にしていた。北極に行った小島探検隊が、行方不明になったという。小島班が探検に行ったきり、15日間も戻ってきていないという。そして捜索隊も出たのだが、とうとう一人も見つからなかったという話であった。
そしてもうひとつ。世界各国で相次ぐ襲撃事件。3日前には(宅磨は聞いたこともなかったが)イタリア、2日前にはフランス、そして昨日には、アメリカまでもが襲撃事件に巻き込まれていた。
具体的にどういう襲撃なのかというと、1にまず首都などの主だった場所で人民の大虐殺。そして2に各地の遺跡に奉られた宝物の略奪である。
ただ1国で起きたそのような事件だったのなら、日本にまでこんなにも早く情報が届くはずがない。1番問題とされているのは、1日ごとに立て続けに起こっているという事である。
しかも、イタリアからフランスはあったとしても、アメリカだけはまずないはずなのである。
現代の技術をもってしても、世界最速の蒸気船を使えば18日かかってフランスからアメリカだし、海を通れるもので早いものといえば蒸気船ぐらいしかないのである。
現代では不可能だとされたことを成し遂げたものは一体誰なのか?!そしてそいつが次に狙うのはどこの国なのか?!そういう期待と恐怖の混じった噂が流れていたのであった。
拓磨はさっさと買い物を終わらせて家へ帰った。宅磨はあまり関心がなかったからだった。
その夜。事件がおきた。
日本の中心地、ハイドラート(元東京)の町の、夜も人気のにぎわう道で、大虐殺が起こった。犯人の目撃がいないほどのすさまじい虐殺である。
そう、見たものは全員殺されてしまったのだ。
宅磨が知ったのは翌日である。中学校へ行く途中の道で、号外新聞が出されていた。中学校はこの話で持ちきりになり、残る遺跡の襲撃の話になっていた。
日本の宝物のある遺跡といえば、ハイドラートの西にあるガルガノン神殿である。
変な名前だが、これは元仙台古墳であり、アメリカが勝手に名づけただけである。
宅磨は帰るなり父の書斎に向かった。こういう話は父は大好きであった。だからこの新聞を届けようとしたのだ。
しかし書斎の扉を開けようとしたとたん、開かない。カギがかかっていることに気づいた。
いくら宅磨が父さん、と呼んでみても、返事がなかった。宅磨はつまらなくなって母に聞きに行った。
聞けば、宅磨が学校に行くのを見届けた後、なにやら新聞を持って書斎へ入るなり、閉じこもってでてこないらしいのだ。
「何も食べないで大丈夫かしら」
母はそう心配している。しかし、宅磨は、父が何をしているのかに興味を持った。
父はそれっきり丸2日でてこないのだった。母はもう父に心配ばかりしている。テーブルには父の分の夕食も用意してあるのだが、食べることはないだろう。そして宅磨は何をやっているのかをひたすら考えるばかりであった。
父が自分たちの声に呼応しないほど熱中していることってなんだろう。宅磨はそう考えるのだった。
とうとう3日目の夜。母がもう錯乱しそうな感じであって宅磨もあせってきてはいたが、いまだに父に期待していた。ここまで心配しなさ過ぎなのも問題だが。
そしてとうとう、書斎の扉からガチャリ、と重い音がした。
母はすごい勢いで食卓へと走った。宅磨は急いで父の書斎へと向かう。
そして父はもう何日も食べていないようには見えない、清清しい顔ででてきたのだった。
そして大声で叫んだ。
「とうとう見つけた!これで私の名を世に知らしめることができる!」
<一章 続く>