レクシア特許法律事務所 機械電気部門 -2ページ目

レクシア特許法律事務所 機械電気部門

「ルールを知り、ルールに遵う」をコンセプトにした、訴訟や外国出願に耐え得る「ワールドワイド明細書Ⓡ」を提唱しています。

早期審理は、早期審査ほど一般的ではなく、特許庁のガイドラインやQ&Aにも説明が少ないため、特許庁への確認事項も含め、簡単ですが、まとめてみました。

1.対象である審判
拒絶査定不服審判のみが対象で、無効審判、訂正審判は対象外です。

2.対象案件
早期審査とほぼ同じく、実施関連出願や外国関連出願等

3.提出時期
審判請求中であれば、いつでも可能(特許庁に確認済)。

4.スケジュール(特許庁からの回答)
・具体的なスケジュールについては個別の案件によりますが、早期審理がなされた案件については、合議体で審理可能となってから平均4か月以下で審決を発送しており、最初のアクションについては2~3月程度で行われるようにしております。また、審判事件が前置審査の対象となる場合も速やかに前置審査を行うこととしております。

・合議体から拒絶理由が発行され、それに対して応答した場合には、通常1~2月で次のアクションが行われるようにしております。

5.留意事項
早期審理の有無にかかわらず、前置報告書が発行された場合には、その内容に対して上申書を提出することができます。前置報告書の内容に反論、補正の準備があることの主張など、最後の反論の機会になるかもしれないので、必須にはなっていませんが、上申書は提出すべきであると思われます。

通常は、前置報告書の発行から、合議体が結成されるまで(審判官指名通知が発行されるまで)、2~3か月あるので、その間に上申書を提出することができ、時間的余裕がありますが、早期審理の場合には、合議体の結成時期が早くなるため(特許庁に確認済)、上申書の準備も早くする必要があります。


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弊所の機械電気部門では、「ルールを知り、ルールに遵う」をコンセプトにしたワールドワイド明細書を提唱しています。裁判所や外国のルールを徹底的に分析し、それらのルールにしたがった明細書の作成を目指します。

ワールドワイド明細書セミナー全12回の詳細は以下のリンクよりご確認ください。
www.lexia-ip.jp/pdf/worldwide_specification.pdf


ご質問、ご相談等ございましたら、レクシア特許法律事務所 機械・電気部門までお願いします。
patent-me@lexia-ip.jp

 

ボーイング社のUSSP 15/623,584のクレームを取り上げます。機械系のクレームです。
対応日本出願は、特開2018-188130です。

1. A stowage bin assembly comprising: 
  a latch that is configured to selectively lock and unlock the stowage bin assembly; and
  a sensor in communication with the latch, wherein the sensor is configured to be engaged to one or more of lock, unlock, open, or close the stowage bin assembly without the latch or the sensor being touched. 

  荷物箱アセンブリであって、
  前記荷物箱アセンブリを選択的にロック及びロック解除するように構成されたラッチ、及び
  前記ラッチと通信するセンサであって、前記ラッチ又は前記センサが接触されることなしに、前記荷物箱アセンブリをロックし、ロック解除し、開け、又は閉じることのうちの1以上に関与するように構成されている、センサを備える、荷物箱アセンブリ。


・欧米のクレームでは、assemblyとの文言が多用されます。日本語としてアセンブリと訳することもできますが、組立体、構造体といった意味になります。

・configuredは、欧米のクレームで多用される文言です。「~のように構成されている」という日本語クレームでも多用される文言の訳になると思います。

・構成要素は、latchとsensorです。1ワードの一般用語が用いられています。

・sensorに関する構成では、whereinを繋ぐことで、sensorの限定事項が追加されています。日本のクレームでは、改行して限定を加えることが多いですが、英文のクレーム作法では、1つの構成の中に、whereinを使って、限定事項を追加することが多いです。おそらく、欧米人は、改行せずに、1つの構成の中で、whereinを使って限定を加える方が読みやすいのではないかと思います。


13. The stowage bin assembly of claim 1, wherein the latch is operatively coupled to one or more latching mechanisms. 

  前記ラッチが、1以上のラッチング機構と動作可能に接続されている、請求項1に記載の荷物箱アセンブリ。

・operativelyは、欧米のクレームでは多用される文言です。この例では、動作可能に接続されていると訳されていますが、ラッチとラッチング機構とは直接接続されていても、間接的に接続されていてもよく、動作可能に接続されていればよい、との意味になります。便利な文言であると思います。


17. The stowage bin assembly of claim 1, wherein the sensor is proximate to the latch. 

  前記センサが、前記ラッチに近接している、請求項1に記載の荷物箱アセンブリ。

・proximateは、欧米のクレームでは、多用される文言であり、近いところにあるとの意味の文言です。遠いところにあるとの意味のdistalと対で用いられることがあります。


以上、簡単なクレームではありましたので、日本人の書くクレームとは大きい差はないと思いますが、上記のように、いくつかの相違点があります。

これらの相違点は、日本語明細書でも利用できるものであると思いますので、これにしたがって、日本語明細書を記載すれば、翻訳したときに、そのまま欧米用として利用できると思います。

 

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前回につづき、特許用語の問題点です。

2. 翻訳の時に、どのように訳されるか分からない

ぴったりと合う訳があればいいのですが、そのようなことはまれで、出願人が意図した範囲からずれた翻訳になる可能性があります。

そもそも、特許用語は曖昧な意味を持ったものが多いため、限定的な意味の文言に翻訳される場合があります。

例えば、「AがBに嵌合する」というフレーズは、「BがAに嵌合する」という意味も含むように考えられることが多いです。

しかし、「AがBに嵌合する」というフレーズは、英語に訳すと、"fit in"となることが多いと思いますが、この場合、主語と目的語の関係がが固定されます。つまり、A fits in Bという翻訳をしてしまうと、Aが凸でBが凹と考えられ、B fits in Aとの意味は排除されることになります。

この点は、米国弁護士に実際に指摘されました。したがいまして、特許用語を使う場合には、翻訳まで考えておく必要があります。


3. 漢字を使う国で、どのように訳されるか分からない

中国、台湾といった漢字を使う国では、直接の当て字がないため、どのように訳されるか分かりません。嵌合という文言でさえ、中国語では、複数の翻訳のパターンがあるようです。


以上のように、特許用語は、明細書のドラフトを行う者からすると、非常に便利ですが、種々の問題を抱えています。個人的には、訳が確実な数個の文言しか使わなくなりました。


なお、日英中の翻訳については、「日中英特許技術用語辞典 (現代産業選書―知的財産実務シリーズ)」が参考になると思います。

著者の毛先生は、現在は中国で特許事務所を経営されていますが、かつては日本の企業の知財部に勤められており、その頃から、日中英の特許翻訳の訳を書きためられていたそうです。

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特許業界では、特許用語という独自の用語が脈々と受け継がれてきました。例えば、嵌合、枢着など、種々の特許用語が歴史的に開発されてきました。これらの用語は、一語で、ある態様を包括的に表すことができるため、非常に便利です。

しかし、以下の理由から、使うことをあまりおすすめできません。

1.辞書に載っていない
 特許用語は基本的に辞書に掲載されている用語ではなく、造語です。そのため、訴訟において、どのような解釈をされるか予測しかねます。例えば、特許用語に関しては、以下のように、訴訟において、その解釈が問題となっています。

・平成18年(行ケ)第10277号 審決取消請求事件
請求項2の「当接」との用語は,被告も指摘するとおり,一般的に用いられる言 葉ではなく,広辞苑や大辞林にも登載されていないが,この言葉を構成する「当」 と「接」の意味に照らすと 「当たり接すること」を意味すると解することができる。

・平成13年(行ケ)第548号 特許取消決定取消請求事件
 原告は、特許用語としての「嵌合」は、「すきまなく」又は「すきまがほとんど なく」嵌め合わされることを意味すると主張し、そのような用語例に沿った文献を 挙示するが、原告指摘の文献に記載されたところを勘案しても、「嵌合」が原告主 張のような態様のものに限定されることが本件特許の登録時の明細書及び図面の記載内容から当業者によって無理なく理解されるとは認められない。

・平成13年(行ケ)第199号 審決取消請求事件
 「摺動」という用語は、特許関連の公報等の各文献におい て、例えば一方の部材が他方の部材に対して接触しながら移動していくような状態 を表現する用語として、極めて一般的に使用されており、この用語が「意味不明」 というには当たらない。


以上のように、特許用語は、辞書に載ってませんので、その解釈を裁判所で改めて検討することになります。

もちろん、特許用語以外の文言についても、その解釈は、裁判所で検討されますが、特許用語は辞書に載っていない分、基本となる意味が特定しがたいため、明細書の記載に過度に限定解釈される可能性があります。

また、上記裁判例のように、相手方から意味不明と言われることもあります。


その他の問題点については、次回書きたいと思います。


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かれこれ10年以上前ですが、1年間だけワシントンDCに滞在しました。

当時、私をアメリカに送り込んでくれた事務所には大変申し訳ないですが、社会人になってから、一生で一番仕事をしなかった時期でとても楽しかったです。

ということで、仕事をしていないという負い目を隠すため、以前にも書きましたが、パテントエージェント試験には必死で取り組みました。当時日本人の合格者があまりいなかったこともあり、合格すれば、「私は米国でちゃんと勉強していたんですよ。。。」という証になるからでした。

それはさておき、大学卒業後の会社に勤務していたときには、出張で米国によく行っていたのですが、住んでみると、全く印象が違い、米国のいい加減さがかなり目につきました。

・物を頼んでもなかなか来ない
・違う物が送られてくる
・タクシーに乗ると、近いから歩けよと言われる、
・また、タクシーに乗ると、勝手にトイレ休憩される
・飛行機に乗るとCAが、客席に座って客とだべっている

このような日本では信じられないことがよく起こり、しょっちゅうイライラしていました。

だから米国特許制度では、期限徒過の回復制度がしっかりしているのかと、妙に感心しました。日本みたいに期限が厳しいと、こんないい加減な国では期限徒過が頻発し、特許制度が崩壊するのではと思いました。

そんな米国生活が続くと、いい加減さにも結構慣れていったのですが、あるとき、最高にびっくりしたことがありました。

このつづきはまた今度。


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