前回につづき、特許用語の問題点です。

2. 翻訳の時に、どのように訳されるか分からない

ぴったりと合う訳があればいいのですが、そのようなことはまれで、出願人が意図した範囲からずれた翻訳になる可能性があります。

そもそも、特許用語は曖昧な意味を持ったものが多いため、限定的な意味の文言に翻訳される場合があります。

例えば、「AがBに嵌合する」というフレーズは、「BがAに嵌合する」という意味も含むように考えられることが多いです。

しかし、「AがBに嵌合する」というフレーズは、英語に訳すと、"fit in"となることが多いと思いますが、この場合、主語と目的語の関係がが固定されます。つまり、A fits in Bという翻訳をしてしまうと、Aが凸でBが凹と考えられ、B fits in Aとの意味は排除されることになります。

この点は、米国弁護士に実際に指摘されました。したがいまして、特許用語を使う場合には、翻訳まで考えておく必要があります。


3. 漢字を使う国で、どのように訳されるか分からない

中国、台湾といった漢字を使う国では、直接の当て字がないため、どのように訳されるか分かりません。嵌合という文言でさえ、中国語では、複数の翻訳のパターンがあるようです。


以上のように、特許用語は、明細書のドラフトを行う者からすると、非常に便利ですが、種々の問題を抱えています。個人的には、訳が確実な数個の文言しか使わなくなりました。


なお、日英中の翻訳については、「日中英特許技術用語辞典 (現代産業選書―知的財産実務シリーズ)」が参考になると思います。

著者の毛先生は、現在は中国で特許事務所を経営されていますが、かつては日本の企業の知財部に勤められており、その頃から、日中英の特許翻訳の訳を書きためられていたそうです。

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特許業界では、特許用語という独自の用語が脈々と受け継がれてきました。例えば、嵌合、枢着など、種々の特許用語が歴史的に開発されてきました。これらの用語は、一語で、ある態様を包括的に表すことができるため、非常に便利です。

しかし、以下の理由から、使うことをあまりおすすめできません。

1.辞書に載っていない
 特許用語は基本的に辞書に掲載されている用語ではなく、造語です。そのため、訴訟において、どのような解釈をされるか予測しかねます。例えば、特許用語に関しては、以下のように、訴訟において、その解釈が問題となっています。

・平成18年(行ケ)第10277号 審決取消請求事件
請求項2の「当接」との用語は,被告も指摘するとおり,一般的に用いられる言 葉ではなく,広辞苑や大辞林にも登載されていないが,この言葉を構成する「当」 と「接」の意味に照らすと 「当たり接すること」を意味すると解することができる。

・平成13年(行ケ)第548号 特許取消決定取消請求事件
 原告は、特許用語としての「嵌合」は、「すきまなく」又は「すきまがほとんど なく」嵌め合わされることを意味すると主張し、そのような用語例に沿った文献を 挙示するが、原告指摘の文献に記載されたところを勘案しても、「嵌合」が原告主 張のような態様のものに限定されることが本件特許の登録時の明細書及び図面の記載内容から当業者によって無理なく理解されるとは認められない。

・平成13年(行ケ)第199号 審決取消請求事件
 「摺動」という用語は、特許関連の公報等の各文献におい て、例えば一方の部材が他方の部材に対して接触しながら移動していくような状態 を表現する用語として、極めて一般的に使用されており、この用語が「意味不明」 というには当たらない。


以上のように、特許用語は、辞書に載ってませんので、その解釈を裁判所で改めて検討することになります。

もちろん、特許用語以外の文言についても、その解釈は、裁判所で検討されますが、特許用語は辞書に載っていない分、基本となる意味が特定しがたいため、明細書の記載に過度に限定解釈される可能性があります。

また、上記裁判例のように、相手方から意味不明と言われることもあります。


その他の問題点については、次回書きたいと思います。


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かれこれ10年以上前ですが、1年間だけワシントンDCに滞在しました。

当時、私をアメリカに送り込んでくれた事務所には大変申し訳ないですが、社会人になってから、一生で一番仕事をしなかった時期でとても楽しかったです。

ということで、仕事をしていないという負い目を隠すため、以前にも書きましたが、パテントエージェント試験には必死で取り組みました。当時日本人の合格者があまりいなかったこともあり、合格すれば、「私は米国でちゃんと勉強していたんですよ。。。」という証になるからでした。

それはさておき、大学卒業後の会社に勤務していたときには、出張で米国によく行っていたのですが、住んでみると、全く印象が違い、米国のいい加減さがかなり目につきました。

・物を頼んでもなかなか来ない
・違う物が送られてくる
・タクシーに乗ると、近いから歩けよと言われる、
・また、タクシーに乗ると、勝手にトイレ休憩される
・飛行機に乗るとCAが、客席に座って客とだべっている

このような日本では信じられないことがよく起こり、しょっちゅうイライラしていました。

だから米国特許制度では、期限徒過の回復制度がしっかりしているのかと、妙に感心しました。日本みたいに期限が厳しいと、こんないい加減な国では期限徒過が頻発し、特許制度が崩壊するのではと思いました。

そんな米国生活が続くと、いい加減さにも結構慣れていったのですが、あるとき、最高にびっくりしたことがありました。

このつづきはまた今度。


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使える方法特許

テーマ:

以前、使えない方法特許について書きましたが、今回は侵害が認められた方法特許に関してです。

一般的に方法特許は、被疑侵害者の工場に入らないと、イ号方法が特定できないケースが多いと思われますが、平成15(ワ)14687(平成16年5月28日 東京地裁)では、製造物からイ号方法を特定し、侵害を認めています。

クレームは、以下の通りです。

「a 金属板を打ち抜いて半導体素子固定用のタブ部と複数本のリードと
を有するリードフレームを形成する工程と,
 b 前記リードフレームは打ち抜き面に抜きダレを,反対面に抜きバリを有し,
 c 前記リードフレームの打ち抜き面と反対の面に半導体素子を固着する工程と,
 d 前記半導体素子の電極と前記リードフレームのリードとを金属細線にて電気的に接続する工程と,
 e 前記リードフレームをモールド金型に設置し,前記リードフレームの打ち抜き面側から樹脂を注入し,前記リードフレームの隙間から前記リードフレームの打ち抜け面とは反対の面へ樹脂を回り込ませるようにして樹脂モールドする工程と,
 f を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。 」

このクレームでは、構成要件bにおいて、製造物の一部であるリードフレームに抜きダレと抜きバリを有していることを特定しています。つまり、製造物に、この方法を用いた痕跡が残るようにクレームしています。

裁判所においても、以下のように判断しています。

「以上を前提に,上記被告各製品のタブから伸びるリード側面を各方向から観察した結果によると,切断面の形状からみても,また,リード打ち抜き箇所においては,チップの搭載された上面の側にバリ面が,下面の側にダレ面がそれぞれ形成され,逆に,タイバー切断箇所においては,上面の側にダレ面が,下面の側にバリ面がそれぞれ形成されている(構成要件b)ことからしても,リードは下から上に打ち抜かれ,タイバーは逆に上から下に切断されたものと認められる。
 したがって,上記被告各製品においては,金属板を打ち抜いてリードフレームを形成した後に,その打ち抜き面と反対の面に半導体素子(チップ)を載せて,これを固定する工程(同c)を経ているものと認められる。」


以上のように、方法クレームであっても、製造物に、製造方法の痕跡が残るようなクレームを作成することで、工場に入らなくても侵害を特定できるような、使える特許になると思います。


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以前、米国での予測できるオフィスアクション(拒絶理由)について記載しましたが、今回は、欧州における予測できる拒絶理由を挙げてみます。

なお、予測できる拒絶理由とは、米国のオブジェクションのように、書き方や手続の仕方が決まっていて、これを誤ると、かなりの確率で挙げられる拒絶理由です。このような予測できる拒絶理由は、知っているか知っていないかだけで、また、かなりのものが、国内明細書の段階から、あるいは外国出願時に「事前に」対応することができます。

以下、欧州における予測できる拒絶理由のうち、主要なものを列挙します。カッコ内は、根拠条文です。

1.同一カテゴリーでは、独立クレームは原則1個だけ (規則43(2)条)
2. クレームに符号を入れる (規則43条(7))
3. クレームを2パートにする (規則43(1)条)
4. 明細書の従来技術に主引例の記載を入れる (規則42(1)(b)条)
5. 新規性喪失の例外が制限されている (EPC55条)

1.について、2個以上の独立クレームを認める例外は規則43(2)条に規定されていますが、同一カテゴリーで独立クレームが2以上あるとほぼ確実に拒絶理由が発行されます。やむを得ない場合を除いては、同一カテゴリーの独立クレームは、1つにしましょう。

2~4については、事後的な対応になりますが、サーチレポートの見解書の中で挙げられますので、サーチレポートへの応答時の対応で問題ないと考えます。

特に、3.の2パートについては、審査官の挙げる主引例によってプレアンブルが決まるので、事前に出願人が2パート形式で記載する必要はないと考えます。したがいまして、クレームは、構成要件列挙型にしておき、審査官の挙げる主引例に基づいて、2パートに書き換えるのがよいと考えます。

5.について、EPCで認められている新規性喪失の例外は、博覧会への出品のみなので、日本の新規性喪失の例外規定は基本的に使えません。したがいまして、EPOに出願することが想定される場合には、日本での基礎出願で新規性喪失の例外規定を使わないようにする必要があります。

なお、ここでいう博覧会は、基本的に、博覧会国際事務局(International Exhibitions Bureau)に登録されているものが対象となるので、日本での博覧会は対象とならないことが多いです。


その他、拒絶理由ではないですが、クレーム数が15個までは料金の加算はありませんが、15個を超えると、1項につき、235ユーロ(約3万円)加算されますので、クレームの数を注意しないと、出願時の費用が高額になるおそれがあります。


以上、一部ですが、欧州での予測できる拒絶理由を列挙してみました。これらの拒絶理由は、日本語明細書の作成時、パリルートでの欧州出願時、あるいはPCT出願時に対応しておけば、挙げられることはありません。したがいまして、これらの規定を守るだけで、かなりのコストと時間を節約することができます。


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