レビーの指の変形 | 老年科医の独り言

老年科医の独り言

認知症治療にかかわって30年目になります。
今回心機一転、題名を変更して、ぼつぼつ書いていきたいと思います。

現在、訪問診療もわずかだがしている。
その中にレビーノ方が多いのである。
パーキンソニズムの進行で急速に起立歩行障害が進んで、在宅介護が困難になった方が3名いる。
1名はアリセプトの副作用でせん妄を呈しており、パーキンソニズムも進行していた。この方はアリセプト中止し、抑肝散加陳皮半夏でせん妄は改善したが、パーキンソニズムの進行により在宅介護が困難になってしまった。
この3名の方は、嚥下障害が高度になり、経口摂取が困難となっている。
ここまで行くとパーキンソニズムの存在は明らかだが、実際に見落としている医師が多いようである。

2年ほど前に、訪問でかかわった方が、統合失調症と言う病名で、精神科に入院後、錐体外路症状で寝たきりになり、在宅となった方である。この方の手の指の変形がすさまじく、何でこうなるの?と言う疑問を抱いた。妄想を抑えるためリスパダールが処方され、そのためかと思ったが、そうではなかった。パーキンソン病が進行すると出現することがあるようである。
その指の変形は、写真を参考にして欲しい。
第2~5指、根元の関節から、屈曲・過伸展(背側に大きく反っていた)・屈曲と言う異常な指位となっていた。母指は、根元から屈曲・過伸展となっている。
レビーノ方でもパーキンソン症状が進行すると、この拇指のような変形は良く見ることが出来る。慣れると拇指を見るだけでパーキンソニズムの存在がわかるようになる。
神経内科医で、このような指の変形は知らない。リウマチではないかといった専門医がいるようである。
この変形がパーキンソン病で見られることは、教科書的な解説で紹介されていたが、錐体外路系全般に見られる症状かもしれない。
一度見れば、忘れない変形である。



ある認知症専門医の回顧録-第2~5指の変形
ある認知症専門医の回顧録-拇指の変形
これらの写真は、同じ方である。方向を変えてそれぞれの指の変形が判るようにしたものである。


この拇指の変形は、パーキンソニズムがある程度進行すると出てくる方が多い。
この拇指を目印に見ていくと、パーキンソニズムを見落とすことが少なくなる。
肘関節の固縮がほとんど認められない方でも、この拇指の変形を持っている方は多い