酒場にて
酒場にて
中原中也
今晩あゝして元気に語り合ってゐる人々も、
実は、元気ではないのです。
近代(いま)といふ今は尠(すくな)くも、
あんな具合な元気さで
ゐられる時代(とき)ではないのです。
諸君は僕を、「ほがらか」でないといふ。
しかし、そんな定規みたいな「ほがらか」なんぞは
おやめなさい。
ほがらかとは、恐らくは、
悲しい時には悲しいだけ
悲しんでられることでせう?
されば今晩かなしげに、かうして沈んでいる僕が、
輝き出でる時もある。
さて、輝き出でるや、諸君は云ひます。
「あれでああなのかねえ、
不思議みたいなもんだねえ」。
が、冗談じゃない、
僕は僕が輝けるやうに生きてゐた。
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上記は、中原中也の未刊詩。
