順平が地元の不良連中とカラオケに行って、
数日もおかずに、
また彼らから誘いがありました。
携帯電話のメールです。
女子もくるから、と書いてあります。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・

「それ、やっぱ行っちゃうんだ?」
僕は話し続ける順平に、
ふいに口をはさみました。
彼はあぐらをかいて、
腕を組むと、
ちょっと考え込むようにしてから、
「まあねえ、、それよか、
田舎じゃ、女の子のこと、
女子って言うんだね」
「へええ、おなごかと思ったあ、おなご」
笑ってそう返したのはサトちゃん、
「おなごはないでしょ」
順平も笑いながら、
「ギャルとかかも、そう思ったんだけどさ、
女子が、女子がって言ってんだ、
なんだろな、なんか風習かな」
「じゃあ男は男子なんかねえ」
と、サトちゃん。
順平もけらけら笑って、
「そうかもね、でも聞けなかった、
男ばっかだったから」


僕は、そんなのたまたまだろう、
そう思いながら、
別に2人に反論するわけでもなく、
「で、また行ったの?」
それで、順平はこくりと頷いて、
「ま、しょうがないっつうかさ、
普通行っちゃうでしょ、缶詰なんだよ、
ぼろい寄宿舎にさ、
そっから毎日畑まで行ったり来たりだろ」
そう、また話を始めました。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・

彼は2度目の誘いに乗って、
また、町へと単車を走らせました。
夜、8時過ぎです。
まあ、少しだけ遊んで、
今夜は早めに帰ればいいんだ、
そう思っていました。

一番仲良くなっていたのは、
リーダー格っぽい富田君です。
24歳だった順平や僕らの1つ下、
日中は、地元のホームセンターの
従業員をやっていました。

富田君は、上あごの前歯が少し欠けていて、
それはバイクでこけた時やったと
言ってたそうですが、
笑うと妙に愛嬌のある
人懐っこい笑顔になるようでした。
それでも、
仲間連中には幅をきかせていて、
後輩っぽいやつは、
アゴで使われていて、
ジュースなんかすぐ買ってきたりするのです。

この日もカラオケボックスに
最初に入ったのは富田君と順平で、
あとから後輩らしい男たちが、
飲み物やお菓子なんかを
買出しに行って持ってきました。
「あ、のりしおねえ」
と富田君、その目つきは、
喧嘩するときみたいに鋭くなって、
坊主頭でジャージ姿の
後輩を睨みつけます。
睨みつけられた少年っぽい子は、
「すいません、」
そう言うと、
また外へと飛び出していきました。

その当時はよくあった、
プレハブみたいな離れの建物が
いくつかあるカラオケボックスです。
「いま、女子もくっからよ、」
富田君は順平に言うと、
安っぽいソファにあぐらかいて座ると、
ぷかぷかと煙草を吹かしながら、
「東京の友だち来るって言っだからよ」
そう言いました。
順平は口だけ笑って、
「まあ、東京つったって、
ほんとは川口なんだけどさあ」

僕らのシェアハウスは、
赤羽から荒川1つこえた
埼玉の川口市にありました。

「そこ、東京じゃねえの?」
「まあ、東京、みたいなとこだけど」
「そだろお」
それで、
何がおかしいのか
富田君は手を叩いて笑うと、
「俺もいっがいくらい、
東京出ようって思ってたけどな」
そう言いました。
 

プロジェクト566日目。

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2020/1/26 566日目
■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71% 
■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定
■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中
 158ページ中50ページくらい了
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
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