さあ、いつ旅に出るのか、
話が長くなりましたが、
その当日です。
僕らは0時前の
品川発鈍行列車に乗る予定です。

夏の盛りです。
夕方、少し昼寝した僕とサトちゃんは、
汗ばんで目覚めました。
ヒグラシの鳴き声が
外に聞こえています。
窓からは、薄暗い紫色した空が、
カーテンの隙間から見えていました。

本当は物悲しいシチュエーションにも思えましたが、
今日の夜から旅立つんです。
なんか浮いた気分になって、
僕は起き上がり、
サトちゃんも起しました。

2人は荷造りを始めました。
まあ、5日でも6日でも、
大した荷物はないんですが、
おまけに夏なので、軽装です。
代えのTシャツは、2枚、
途中で洗ってもいいでしょう。

「何時頃出る?」
とサトちゃん。僕は、
「10時過ぎでいいんじゃない、」
ここからその時間に出ても、
列車の出発には十分に間に合います。
ところがサトちゃんは、
「え~、だめだよ、結構並ぶらしいよ、」
「ほんと?」
「夏休みでしょ、朝まで立つってなったらやじゃん」
「そうなの?」
どうやらその夜行列車、
知る人ぞ知る、有名な長距離列車で、
夏季休暇中なんかは、それなりに混むらしいのです。
「じゃ、少し早く行く?」
「そうだよ、お弁当も買わなきゃ」
サトちゃんと、
こんな会話をしている時でした。

外に、聞きなれたバイクのエンジン音が聞こえたのです。
僕らは顔を見合わせました。
サトちゃんは、
まさかって顔しました。

前にも触れましたが、
一緒に暮らしていた順平は、
この時群馬の嬬恋のキャベツ畑に、
泊り込みでアルバイトに行っていました。
帰ってくるのは、8月の末の予定です。

その、順平の愛車、
バンディッドのエンジン音でした。

「まさか、ね」
僕が言うと、サトちゃんは、
「でも、あれ…、」
玄関に足音がします。
チャイムを鳴らすでもなく、
鍵穴をがちゃがちゃする音がして、
扉が開きました。

僕らは一斉に立ち上がり、
玄関のある台所に行きました。
「よお~、ただいま~」
やっぱり、順平でした。
彼はリュックしょって、
片手にフルフェイスのメットを抱え、
手を振っていました。

 

プロジェクト557日目。

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2020/1/17 557日目
■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71% 
■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定
■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中
 158ページ中50ページくらい了
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
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