高原は大学の同級生です。
彼はサッカーで大学に入学して、
将来を嘱望されていましたが、
膝を故障し断念しました。

今は僕と同じように
就活真っ只中だった、
はずなんですが、
なにか思うところがあるのか、
高原は不動産業にまい進しており、
2年3年後の計画を
語ることはあっても、
これといった就職先を
決めていませんでした。

「映画見てん?」
僕は彼が来たのをしおに、
ライブラリィの映像をとめました。
「いや、映画っていうか、
なんか記録フィルム」
彼は座席をギシッと鳴らせて、
僕の座っている椅子の背もたれに
寄りかかりました。
「記録フィルム?それなんやろ?」
僕は立ち上がり、
彼の方を見ながら、
「なんつうか、灯台のね、灯台の記録映像とか」
「とうだい?」
鑑賞室は静かです。
他の連中はヘッドフォンして
それぞれ個別のブースで
映像を鑑賞しているんですが、
それでも、大きな声で話す
高原の方をちらっと見ていました。
僕はそれを避けるように、
いそいそと部屋を出ました。

高原も後に続いて部屋を出てきます。
廊下を歩きながら、
「とうだいって、あの白い灯台?」
「そうだよ」
僕はそう答えて、
「灯台って、日本に何個あるか知ってる?」
「知るわけないやん」
「3,300くらいある、日本は島国だから、
海岸線長いでしょ、
だからそこら中の岬にあるんだよ」
「へえ~」
高原は、あんまり興味のない返事です。
僕はちょっとその気になって、
「でも徐々に減ってるんだよ、」
「へえ、」
僕は立ち止まり、彼を見ると、
「なんでだと思う?」
高原は少しだけ考えてるふうでしたが、
「知らん、知らんよそんなの」
僕は渋い顔して、
「ちょっと考えてみてよ、
灯台ってなんであるのかわかる?」
「知らん、ん、展望台」
まあ、普段灯台を意識する人なんて、
そうそういるもんじゃないでしょう、
灯台の役割を正確に知っている人だって、
あまりいないのかもしれません。
「遠くを見るって意味じゃ、
展望台も合ってるかもね、
だけどさ、灯台は光放つでしょ、閃光」
「閃光?」
「ほら、夜の海にさあっと光線が流れていくわけ」
「見たことないやんそんなん」
僕もまだ、見たことがありませんでした。
小説を書くには、
そのうち必ず見る必要があると思いながら、
「あれを船に見つけてもらうわけ、
で、船は灯台の光を頼りに
航海する道を
知るってことなんだけど」
「ナビとかないんやな、船」
高原は少し興味を持ったようです。

2人は構内のエントランスにある
ベンチに腰かけました。
僕は手を軽く叩いて、
「いいとこ気づいたじゃん、それ、
最近では船舶のシステムもハイテク化してて、
人工衛星からナビできるようになってきてて」
僕は話しながら、
さっきまで見ていた昭和初期の
古い灯台の映像を
思い出していました。
あの当時じゃ、
想像もできない技術の進歩です。
「あ、」
高原は僕を指差して、
「そいで灯台必要ない、なった、
正解やろ?」
「まあ、そうだね」
ここまで言えば、
そりゃわかりそうなもんでしょう。
「でもナビ壊れたら、灯台ないとダメやんなあ」
と、高原。僕は、
「灯台も壊れたらダメだけどね、」
「壊れるんか、灯台も?」
僕の頭には、
空襲を受けた灯台の、
様々な想像が広がっていって、
「まあ、壊れたりするんじゃん」
「倒れたりすんかな」
「そこまでしなくても、ライト故障したりとかね」

それで、しばらくの沈黙。
あいかわらず、構内には
学生がひっきりなしに行き来しています。

「花ちゃん、就職どないなった?」
「…」
僕は深く息を吐き出して、
「なんで急に」
「いやだって、暇なんかと思って」
彼は、僕が映像室で、
のんびり映画見ているから、
そう考えたんでしょう。
僕はスーツ姿の、おそらく3年生でしょう、
その後姿を目で追いながら、
「まあ、暇だね、一応ね」
それで、高原は
ひきつった笑いを上げて、
「なんやそれ、」
「暇なりに、やることあんだよ」
僕の声は小さくて、
彼にはよく聞こえなかったかもしれません。
高原はからからと笑っていました。

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画像は北茨城市の大津岬灯台
昭和35年に点灯されましたが、
東日本大震災で被災、
平成24年に改めて竣工されたものです。
立替にあわせ、
電源が太陽光発電になりました。
灯質:単閃白光 毎8秒に1閃光
光度:13万カンデラ
光達距離:20海里(約37キロ)
高さ:16メートル

 

プロジェクト543日目。

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2020/1/3 543日目
■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71% 
■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定
■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中
 158ページ中50ページくらい了
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
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