加奈ちゃんと
逃避行(全然それらしくないですが)
をしている平治の話は続きます。
水戸に降り立ち、
中華料理屋で夕食を食べ、
再び町中に出ると、
午後8時を過ぎていました。
駅の近くに
小さな観光案内所があって、
そこでビジネスホテルを
紹介してもらいます。
訪れたのは、
駅前の雑居ビルの間にある、
古びたホテルでした。
ここまで、
平治と加奈ちゃんの2人の動向は、
特に不審がられた様子も
ありませんでした。
1つには、
平治がまるで悪びれたところがなく、
泰然と対応していたのも
あったかもしれません。
2人の態度は、
あくまで自然でした。
親子のそれではなかったですが、
とても親に黙って家出をした少女と、
ひょんなことから付き添ってしまった男には
見えなかったかもしれません。
ダブルベッドの1室でした。
2人はそれぞれのベッドに横になって、
剥がれかかったシートに、
埃をちらかしたような染みのある天井を見つめ、
寝る前まで会話をしていました。
「なんか修学旅行みたい、お泊り」
加奈ちゃんは眠気のある声で言いました。
せまい部屋に
そのハリのある声色がよく通ります。
「そうか…、」
「4月に行ったんだよ、房総一周」
「楽しかった?」
少し間があります。
もう眠ってしまったんだろうか、
平治は枕に頭をのせたまま、
彼女の方をちらっと見ました。
安眠灯の薄暗い中で、
加奈ちゃんはまだ起きていて、
光る瞳を、天井に向けていました。
彼女は、
「楽しかったらよかったなあ、
楽しいとよかった…、
私ね、修学旅行楽しみにしてたから、」
「楽しくなかったの?」
「楽しかったらよかったなあ」
これ以上、
聞いちゃいけない気もして、
平治は口を噤みます。
しかし加奈ちゃんは続けて、
「私がね、この目がね、
なんか濁っちゃってから、
みんなよそよそしくなって、
近づいてこなくなったのね、」
「…」
「悪魔とか言われたんだ、」
「あくま、なんでそんなこと」
10時を少しまわっていました。
列車を乗り継いだ旅の疲れもあって、
平治はもう眠くなっていました。
目は閉じて、
口だけ動かして、
「そんなこと言うなんて、
ひどいなあ、みんなで仲良くすりゃいいんだよ」
「出来ないから、」
「どうしてだよお、」
「私の目が、こんなになっちゃってるから」
湿気くさいビジネスホテルの一室で、
いつしか2人は
そのまま眠りについていました。
プロジェクト435日目。
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<span style="color:#ff0000;"><strong>2019/9/17 435日目</strong></span>
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