少し『美臭』からそれますが、
この当時調べていた
『灯台サム』について触れたいと思います。

熱心な読者の方はご存知かもしれませんが、
この小説は、僕が社会人になって
ようやくコンスタントに長編を書くようになって2作目のものになります。

大学4年時からすでに構成を作りはじめていました。
きっかけは、
灯台にまつわるグラフ雑誌です。
そこに小さな記事だったのですが、
青森の竜飛岬についてのコラムがありました。

竜飛岬灯台は、
本州の最北端に位置する灯台です。
太平洋戦争末期、
サイパンなどを陥落させたアメリカの戦闘機が
日本に来襲するようになります。
国内の都市に空襲するためですね、
その際、まず真っ先に狙われたのが岬などの突堤にあり、
目印となる灯台でした。

竜飛岬灯台も、
標的となり、終戦間近の時期に空襲を受けました。
その際、
全壊は免れたものの、
塔上するための階段部分が破損し、
看守であった兵士が1名落命しました。

話はそこからです。
終戦から5年経ったある日、
濃霧の中、津軽海峡を渡航していた船がありました。
その船は難破の危険のある中、
竜飛岬灯台からの灯りで、
無事に航行をすることができました。

船の関係者はその旨を伝えたのです。
ところが、その時点でまだ竜飛岬灯台は修復されておらず、
とても灯火される状況ではありませんでした。

その後も、
何度か同じようなことがあり、
その度に地元の人々は驚きました。
いつしか、それは戦時中に空襲で死んだ兵士の幽霊が
灯火しているという噂がたつようになりました。

話はここまでです。

当時の僕は、
この話にえらく感銘を受け、
あれこれとことの真相を考えていたんです。
幽霊でないとすれば、
いったい濃霧の中の光はなんであったのか、
いつしか僕の頭の中で、
その真相をとりまくストーリーが考え出されて行きました。
それがやがて4年後に完成する『灯台サム』となります。

この段階では、
あいかわらず灯台関連の書物を読み漁っては、
その仕組みであるとか、
日本各地の灯台の場所を知るばかりでした。

………

夏季休暇中の図書館、
学生はそれほどいません。
4人テーブルいっぱいに本を広げて読んでいた僕は、
頭を上げると、
ふうーっと長い溜息をつきました。

当時は簡単にスマホで撮影なんて習慣もなく
(たぶん転載は禁止されてそうですが、)
ほしいと思ったページに付箋をはって、
ある程度たまるとそれをコピー機で複写します。
僕は立ち上がり、
本を何冊も抱え、
複合機の並ぶコピー室に向かいました。

「おわり?」
1ページごとに広げてはコピーを取っていると、
いつの間にか背後に来ていた高原が言います。
「うん、これコピーしたら終わりにする」
「お茶でもして帰る?」
「そうだね」
「白黒つけた方がいいぞ」
一瞬、何を言っているのかわからなくて、
「なにがよ」
僕が言うと、
「女だよ女、いつまでも待ってると思ったら甘いやろな、
タイミングがあるからな、」
「そうだね」
僕はただ端的にそう答えました。
「俺なんてヒトミちゃん一本に絞ったからな」
高原のその言葉にしばらく僕は考えてから、
「それって、幸次郎がいてもかな?」
「そりゃそうやろ、」
僕はちらっと背後の高原を見て、
「あいつが、ヒトミちゃんに気があったの知ってたんだろ」
「そりゃそうや、だけど、
ヒトミちゃんは幸次郎に恋愛なんて意識してなかったやろ」
「…」
最後の雑誌にとりかかります。
付箋の貼ってあるページは
10枚ほどあります。
「お前、俺を悪いやつだと思ってんの?」
僕が黙っていると、
高原が後ろに立ったまま口にしました。
「いやべつに、なるようにしかならないんなら、」
「そ、恋愛ってかさ、人の気持ちなんて、
そんな機械的に操作できるもんやないで」
ああ、彼は僕が作為的に
みんなを山梨にドライブに誘ったことを言っているんです。
「そうだな、そうだよ」
僕は今さら納得したみたいに頷いてみせました。
「外で待ってるな」
高原はそう言うと、
さっさとエントランスの方へと
歩いて行ってしまいました。
僕は残りのページをめくってはコピーしながら、
全ては自分の時間だけで動いているわけじゃなくて、
誰もが、色々な思惑を持って、常に動いているということを、
今さらながら考えていました。

 

プロジェクト270日目。

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<span style="color:#ff0000;"><strong>2019/4/5 270日目【残り231日】</strong></span>
■kindle 本日0冊 累計73冊 達成率0.71% 
■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定
■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中
 158ページ中50ページくらい了
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
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