2日ほど前にも触れましたが、
今書いている小学生から中学への一連のお話は、
現在執筆を中断してしまっている
『イージーサン』という長編小説の
原型を成しているものです。

原始人類から現代のホモサピエンスへと連なる進化を、
思春期の青年たちになぞらえたものです。

人類の進化という、壮大なテーマに対して、
ちっちゃな田舎の
ちっちゃな人物像を書くっていうのが、
構想としてありました。

実際の小説の冒頭はこうです―

人が、人として森から抜け出した日が、
太古の記憶には間違いなくある。
百万年とも三百万年前ともいわれている、気の遠くなる遥か過去に、
確かに、その日はあった。
ヒトは、不完全な体で、前足、つまり、いずれ手って呼ばれるものをそっと大地から離し、
よろめきながら後ろ足だけで立ち上がった。
樹上ではいつも木の葉にさえぎられていた陽射しに、
おそらく、手をかざし、目を細めたんだろう。
そこで人は、
太陽と大地と
どんな契りを結んだというんだろう―
そして、
それらの契りは、
今でも守られているんだろうか―


僕は子どもの頃、とにかく動物が好きでした。
動物フィギアをたくさん集め
(今でもたくさん持っています)、
それを握り締めて動物園に通ったものです。
牧場にもよく行きました。
牛や豚を触るのです。その手触りや匂いは、
今でも僕を懐かしい気持ちにさせます。

そうして、なぜ生物が多様な形で、
滅び進化するのかを考えていたものです。
ちなみに、人類の進化へと思いが及んだのは、
大人になってからです。
子どもの頃は、ただ無邪気に、
人類とは異形の生物達に
好奇心をそそられたに過ぎませんでした。

それでは、本編に戻ってみましょう、
佐倉が雨の中、
傘をさして僕を待っていました。

………

雨は無造作に地面を叩き、
ひっきりなしに降り続いていました。
僕は最初、
いつものように昇降口に彼女がいないので、
ホッとしたような、寂しいような、
複雑な気持ちで外に出たんです。

空を見上げると、
灰色した雲の中に、皺のような影が蠢いていました。
風もあって、見る見る天上は動いています。
雨音がそこら中を楽器にして音を鳴らしていました。

僕を見つけると、
佐倉の顔がパッと明るくなりました。
赤い傘の影になって、いくぶん紅潮して見えます。
僕は彼女を訝しく見ていました。
あの日以来、
僕は彼女と帰っていないのです。
それなのに、なぜ彼女は、
その笑顔を崩さないのか、
幼かった僕には、
人の一途な気持ちを配慮する気分は、
ほのかに胸を締め付けるものの、
それより、主観的にただ苛立つとか、
そうした心に支配されていました。

「ねえ、一緒にかえろ」
声のトーンも、あの初めての告白の日と、
1ミリだって変わっていません。
「…」
僕はさすがにこの大雨の中で1人佇む彼女に、
いつものように無視して去ることができずに、
脚をもたつかせていました。

次々に傘が開いて、
思い思いの方角に児童らが下校していきます。
人が閑散となって、
一時、僕ら2人だけになっていました。
僕はまだ、昇降口の軒にいて、
彼女を見つめていました。

「どうしたの?一緒にかえろうよ、」
佐倉が近づいてきます。
僕は一歩退いて、首を横に振りました。
「どうして?雨降ってるし、傘持ってないでしょ?」
確かに僕は傘がなくて、
このまま土砂降りの中を走って帰ろうとしていたのです。

足が宙に浮いたり、沈んだり、
胸がきゅうっと締め付けられたり、
やり場のない怒りを覚えたり、
気持ちはもう、一言では言い表せない状況でした。

その時です。
背後から来た1人の男子が、
去り際に、
「わーあいあいがさ~」
と言って傘を開き、走り去っていきました。
僕の脳裏に、黒板に書かれた相合傘、
そして、佐倉と僕の名前が浮かんできました。

「ほっといてくれよ!」
僕は佐倉に怒鳴ると、
彼女が差し出そうとした傘を、
思い切り手で弾きました。
赤い傘が宙に舞って、濡れた地面にぱしゃりと落ちました。
佐倉の顔に水しぶきが散って、彼女は目を瞑ります。
僕は頬に水滴を垂らした、
彼女の悲しそうな顔を見て、
一瞬の凍りつくような気持ちのあとで、
グッと腹のあたりに力をこめて、
雨の中を走り去っていきました。

それきり、小学校を卒業するまでの間、
放課後に彼女が待っていることはなくなりました。

プロジェクト213日目。

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
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