三島由紀夫の小説に『永すぎた春』(昭和31)
という作品があるのをご存知でしょうか?

男子学生が就学中に古本屋の娘と恋に落ち、
大学を卒業したら結婚するという約束の元に、
1年あまりの永すぎた婚約期間を過ごします。
そして、
その長き春には、
さまざまな危機があり、それを乗り越える、という恋愛小説です。

もちろん、僕のいうモラトリアムとは
全然様相が異なりますが、
僕は6年間の男3人暮らしを、
「永すぎた春」という名のもとに思い起こすんです。

僕の春は、
猶予期間を意味しています。
つまり、大人になるために考える時間を、
1年1年と引き伸ばしている、
そういう印象の元に振り返るのです。

正直あの頃、
まるで学生時代が永遠に続くんじゃないかと
錯覚していたような気もするのです。

漠然と、
世の中にはおそろしくシステム化された社会というのがあって、
いずれはその枠組みに入って行かなくちゃならない
と思ってはいました。

しかしながら、
僕は自分が音楽をやったり
小説家を目指すと言い出してるのは、
本当は規律ある社会に生きることから逃げたい
そう考えていたふしがあります。

だからといってはなんですが、
残念ながら僕は、
芸術性を疑いもしない、というほど生粋の情熱家ではないし、
創造性だけで生きてくには、少し功利的な性質をもっていました。

ゴッホの映画を見て涙ぐんだことがあるんです。

それは彼の炎のような一生や
弟の献身的な援護についてばかりじゃなくて、
僕には、ゴッホが生粋の芸術家で、
彼は物を創造して表現するために
この世に現れてきたように思えてなりませんでした。
彼の、
その純粋性のようななものが、
あまりに無垢で、あまりにまぶしくて、
多少の妬みまじりに感動していたんでしょう。

僕は多少いやしい、
そういう気分で芸術家を目指しています。

これはなにも卑下ではなく、
創造だけをエンジンにしては生きていけなかった、
社会での挫折の中に、
いつのまにか身に着けてしまった社会性のせいでもあります。

と、少し心情的なことを書いてしまいましたが、

まあ、若い頃のこと、
そういう懊悩をくりかえしながら、
次第に客観的な視界で物を眺めるようになっていくものかもしれませんね。

さて、
同居人2人にどう伝えたものか、
そうです。
僕が音楽をやめて小説家を目指すというやつです。

なにも隠してたふうでもないのですが
(つまり家でも何かと書いていましたので)
いざ面と向かって言うとなると、
はたと悩んでしまいました。

1人には、駅からの帰り道だったか、
なんとなく、さりげなく言えました。

「なんかわかってたよ」
みたいな返事でした。
俺もそろそろ、
まともに就職しようかと思ってる、そう言っていました。

僕らの住んでいたのは
準工業地帯というところで(その方が家賃が安かったのです)
駅から徒歩で15分ほど、
鉄鋼や板金などの工場とマンションが入り組んでいる市街地でした。
工場らしい波板のトタン塀が延々と続く場所を歩いています。

夜だから、工場は静まり返っています。

2人の足音だけが軽く聞こえています。
「読ませてよ」
友人は言いました。
「まだだめだめ」
僕は照れくさくなって言いました。

ダメというのは、
まだとてもじゃないけどひと様に読ませられるようなもんじゃない、
という気持ちと、
そうでなくても、
彼らにはとても恥ずかしくて読ませられないと思っていました。

近すぎる関係というのはそういうものでした。

「あいつにも言ったの?」
彼は、もう1人の同居人に言ってないことを聞いていました。

僕はまだ言ってない、と答えながら、
どちらかというと、
僕らよりずっと芸術志向の強かったもう1人のことを考えていました。

三島由紀夫の小説「永すぎた春」は、
やがて次の季節を迎えます。
恋人は、それなりの危機を乗り越えて、
主人公の大学卒業とともに、
結婚という、本当の春が訪れるように作家はしかけました。

だけれど、
僕らには、
次の季節がないんじゃないかとぼんやり思ったものです。
それは、若さ以外に、可能性以外に、
具体的な希望とか、将来性とか、
そうしたものが、あまりに遠くにあって、
なんにも見えていなかったからだと思います。

それでも、
「永すぎた春」はやがて終わります。

いやどんな季節も終わります。

僕らには、それはわかっていたんですが、
なにか、遠目でもいい、
なにかが見えていればよかったのかもしれませんが、
バンドで唄ったり騒いだり飲んだくれたりと、
まあ、自ままに生きていると、
どうにもその華やかさから比べると、
あまりにその先は暗やみに見えて仕方ありませんでした。

僕がそのためだけに、
つまり、何か具体性を持ちたいがために、
要は逃げという意味もあって創作活動を続けているとすれば、
芸術家なんて、そんな大それたものにはなれないな、
そんなこと考えていました。

今日は少ししんみりしたトーンですが、
小説に流れる時間と同じように、
人生には起伏があります。

明日はこの話をもう少し続けて、楽しいとこも話します。

そして、
今はどこにいったかわからない僕の作品「月夜野一夜」へと結びついていきます。

ちょうど今の時期にふさわしい、
花火のお話です。

ブログは昨日、
とうとう170人の訪問者の方を迎え入れさせていただくことができました。
もちろん、こんなことは初めてのことです。
本当にちょっとずつ、進んでいる感じですが、
どうか見守っていただけるとうれしいです。

そういえば今日知人から、
よくまあ、毎日これだけ文章を書く作業を続けられるね、
と言われました。

まあ、継続していくんですが、
僕はとにかく、
今となっては、
おそろしく速筆です。

それでも、
書き溜めておくことがまだ出来てません。
なので、
リアルなプロジェクト23日目の深更、
眠れない方はこんばんは、
朝読んでくれてる読者の方、おはようございます。

※《今日の文中に登場させていただいた
三島由紀夫「永すぎた春」やゴッホの人生については、
様々な見方があると思います。
僕は僕なりに、
自分の人生に照らし合わせただけですので、
解釈の仕方など、自由である点、
どうかご容赦ください。》

―――――――――――――――――――――――――――――――――
<span style="color:#ff0000;"><strong>2018/8/1 23日目【残り478日】
</strong></span>
□kindle 本日 0冊±0冊 累計62冊 達成率0.62% 
□ブログの訪問者数 132人 (前日比▼38人)
□文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定 とまってますね。。。
□kindleアップのため『桜の闇』を推敲中
 158ページ中40ページくらい了
―――――――――――――――――――――――――――――――――
<a href="http://levelbook.up.seesaa.net/image/E3808EE58395E38292E79FA5E38289E381AAE38184E5909BE381B8E3808F023-2.JPG" target="_blank"><img border="0" alt="『僕を知らない君へ』023-2.JPG" src="http://levelbook.up.seesaa.net/image/E3808EE58395E38292E79FA5E38289E381AAE38184E5909BE381B8E3808F023-2-thumbnail2.JPG" width="320" height="100"></a>

■おしらせ■

◇kindleでは「セノイピープル」「バスストップ」「悲しきウスバカゲロウ」が読めます→
https://www.amazon.co.jp/s/ref=dp_byline_sr_ebooks_1?ie=UTF8&text=%E8%8A%B1%E6%9D%91%E5%81%A5%E4%B8%80&search-alias=digital-text&field-author=%E8%8A%B1%E6%9D%91%E5%81%A5%E4%B8%80&sort=relevancerank
 

『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html