誰もが、それなりに
大人になっていくのだ。
少なくとも外見だけは変わっていく。
皺のひとつが、
やがて深い溝となって、
身体に生きた証を刻んでいく。
あとは内面、つまり、
理性をどこまで保って、
嫌なことでも平静でいられるか、
それを維持できるかだろう。
僕はみなに囲まれるようにして
グラスを持つ洋二郎を見ながら、
「俺もけっこうさ、
大人になったと思うんだけど…」
そう、子どもじみたことを言った。
彩花はくすっと笑って、
僕の顔をじっと見たかと思うと、
「そうかなあ…」
「え、俺だって」
僕は口をかすかに尖らせた。
彼女はまた少し笑って、
「翔太は、」
僕は目を見張った。
彩花は、僕を下の名で呼んだことなど
今まであっただろうか、
いや、意識していなかっただけだろうか、
それで、彼女はふいに話すのをやめて、
「なあに?」
「いや、なんでも…、それで、」
「やだあ、じっと見るからびっくりしたよ、
翔太はね、
全然変わってないって思ったよ、」
「え~」
僕は大げさに手を広げた。
彩花は続けて、
「こないだ結婚式、久々会った時、
私ね、びっくりしちゃったもん、
みんなちょっとずつ、大人っていうかね、
老けてくるじゃない、
なのに、あなたは、」
彼女は僕を見上げるような仕草になって、
「全然変わってないな、てね、
悪い意味じゃないよ、なんか、
1人だけ時間止まっちゃったみたいな、
変な感じした…、」
「変な感じ?」
彼女はそれで口を噤んだ。
僕は言葉の意味を考えていた。
何を言いたかったんだろう。
それで、ふいに、
息ついてから笑った。
考えすぎだと思ったから。
プロジェクト718日目。
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