「再来週の日曜さ、
洋二郎が来るんだ」
僕は二次会、三次会を経た、
さすがにお開きになりそうな
同期たちとの飲み会の、
その帰り際に
彩花に言った。
きょとんとする彼女に、
僕は続けて、
「洋二郎、
就職長崎行っちゃったから、
たまに東京帰ってくるんだ」
洋二郎は
同じゼミのクラスメイトである以上に、
僕とは親友だった。
彼がたまに上京すると、
家に泊めたり、
近しい友人らで飲んだりしていた。

かといって、彩花にとっては、
それほど仲の良かったわけでもないし、
唐突だっただろう。
僕は、もうこれきり会えない気もして、
なにかきっかけが
ほしかったのかもしれない。

彩花はほんの少しだけ
考える仕草して、
すぐに大きく頷いて、
「え~、久しぶりだね、会いたいね」
そう答えてくれた。

終電が近づいている。
みなでがやがや騒ぎながら、
渋谷駅へと歩いている。
そういえば、この段になって、
僕は日中にだれか女友だちが、
誰かに話していた言葉を
思い出していた。

披露宴でだったか、
花嫁がひな壇で
話しているのを見ながら、
「次は、彩花だよね、」
そう言っていた。
それってどういう意味だろう、
僕は友人に紛れて歩く
彩花の背中を盗み見ながら、
そんなこと考えていた。
酔ってほてった頬に、
5月の夜の、涼しい風が、
ひたひたと心地よく流れていた。
 

プロジェクト716日目。


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