神秘の雰囲気に入り込む 現世の力
~低く垂れこめる雲と電線と~
この時期、いつも以上にお天気が話題になります。
昨日は、お昼時から、
明日(今日)は線状降水帯が発生して警報級の大雨になるかもしれない、
との話題がとびかっていました。
職場では、警報が出た時の出勤についてメールが回るほどでした。
夜中にはけっこうな大雨が降り続いて、
それでも今朝は少し落ち着き、雨は小降りになりました。
雨は注意報レベル、
JRが心配なので、早めに家を出ました。
途中の駅でたくさんの人が下車して、
車内は、ところどころ空席ができました。
座席に座ると、外の景色が目に飛び込んできました。
山あいには、低く雲が垂れこみ、なにやら神秘的な雰囲気が漂っています。
心がスーッとそちらに惹かれていくようで、
別次元が開かれるような景色です。
幽玄って、こういう雰囲気かしら、と思いました。
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幽玄とは、国語辞典的には、
「物事の趣が奥深くはかりしれないこと。また、そのさま」であり、
特に、
「中世の文学・芸能における美的理念、
歌論では、優艶(ゆうえん)を基調として、奥深い静寂な余情、
能楽論では、優雅で柔和な美しさを言う」と説明されています。
維摩会 春秋館では、
「黄泉(よみ)を背景とした思いに基づくもの」で「常に神秘的」との説明があります。
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いつもの山あいの風景が、とても神秘的な世界に見えて、
思わず見とれながらも、
ふっと我に返り、写真を撮っておこう、とスマホを取り出しました。
ところが、電線が続いているのです。
私としては興醒めた思いではありましたが、
これが、人間の技術の力なのだろうか、と思いました。
異次元の領域にいざなうようなこの風景の世界にも、
技術の強力な力が入り込み、
一気に現世の意識に、引き戻されたのでした。
そろそろ降りる駅も近づいてきました。