そんなこんなでアイノ・ガスピル君に会いに行く。
おそらく魔法バリアは今も有効だろう。
だからその隙間をぬうように、いつものように酒場のゴージンさんに金を握らせてスウェブタワー20Fへ。
いきなりイヤミの洗礼を受けるワタクシ。
覚悟はしていたけどもだからといって気分がいいわけでもなく。むう。
今の私はレッドアイから要注意人物とされているのもまぁ仕方ないか。
だって組織の重要な役職には付いていなかったとはいえ会長や各頭領とも顔を合わせれた立ち位置で、尚且つRED STONEの作成に大なり小なり関わっていたわけだし。
とはいえここでハイソウデスカと引き下がるわけにはいかない。
あっさり警戒を解いてしまうアイノ・ガスピル君。
私としてはそれはそれで全然かまわないんだけど。ねぇ?
フフフ。
フフフフ。
今すぐ会いに行く・・・・とな?!
恋する男の子の行動力にびっくりしてしまう。
ていうか会いに行かれたら嘘がばーれーるー。
視線は会長を捉えず、右斜め上を見ながらすらすら嘘が出る私。
RED STONEが完成するのもわずか、といったところかー。
天使語の翻訳待ちだと思っていたからもうしばらく時間がかかると思ったけども。ふむふむ。
早く来る、はレッドアイに入団してたらってことかなぁ。
まぁ私かけら集めに奔走してたからね。けっこう頑張ってたよね。
そういえばRED STONEの実質的な修復&作成は錬金術師と魔法師である頭領2人の手によるんですよね。
完成までにあとわずかというならすでにメデス頭領とブリオ頭領の管轄下にあるのかな。
ふむ。
まだかけらは会長の手元にあると。ということはいずれ作成のために移動するんだな。
ん。ちょっと突っ込んで聞いてしまったか。
RED STONEの完成はこの目で見たいけれども、レッドアイに戻るのかと言われれば否だ。
RED STONEを追いかけてその在り方を考えれば考える程に・・・私の思いはレッドアイの意思とずれている。
まずはそもそもの始まりが今だ私の知る範囲にないのがくやしい。
そしてRED STONEの完全体を作成したとしても、それがこの地にあっていいのか誰かの個人所有であっていいのか・・・たとえばレッドアイという組織の理念がそれを持ってふさわしいのかどうかも。
会長が目を眇めている。
わかるよ。だって私の発言は組織の否定だもんね。会長であるアイノ・ガスピル君にとっては聞き捨てならないでしょ。
私だって実際「力」を手に入れたらそれを行使するために私利私欲に走ってしまうかもしれない。
IF話だよ。
それにしてもこの期に及んで・・・会長はもしかして私がレッドアイに戻ると信じている?
会長のことはスキ。個性豊かな頭領達ももっと仲良くなりたいなと思っているよ。
でもね。
人も組織もそれぞれの意思があるよ。
よかれ、と思って行動しているんです。今までもこれからも。
嫌いになって離れるわけじゃないんだもん。私の言葉を受けて会長も笑って応える。
これからの私の行動はもしかしてレッドアイを阻害することになるかも。
善意の競争者なんて言葉を使っても行き着くとこは同じだからね。
なんだか笑顔が泣き笑いみたいに見える。
そんな顔をさせたいわけじゃないんですよ。