その表情からは「シケた顔してんなお前。なんかアレコレ考えて人間ってなんで音速のスピードで生きてんだ?」と問われたような気がした。
お前はいつも退屈そうな顔してダラダラして過ごして楽しいか?と心の中で返答した。その返答に猫は「ファ〜ア」とアクビをして寝始めたのだ。
僕は辺りをキョロキョロして黒目を左右に動かしていると、白にいくつか黒の模様のあるパンダみたいな猫、北欧のデザインのモノトーンみたいな猫、宅急便のトラックに描かれている猫がいることに気付いた。
猫を眺めていると小屋の中から白いタンクトップにボロいチノパンを履いたオジさんが出てきた。両腕を天に向け大きく伸びをする。
「おいっ!クロそんな身体汚すなよ。まっいいか俺らに縛るもないしな」と問いかけている。宅急便に描かれている猫がダルそうに「ニャ〜〜」と鳴く。
オジさんは猫と話せるのだろうか。それにしてもこのオジさんは時間感覚はなく、自由。金銭感覚もなく、無欲。にみえる。
退屈そう猫にさえ欲はあるだろう。けど、このオジさんはそうは思えない。その姿はまるで何か悟った仏。人間の汚らしい欲に飽き自然と一体化している様だ。
真夏の差し込む太陽に木陰で過ごす。風が吹けば風に身を任せて流される。風に逆らって急いで走ったりしない。
人間が必要としているモノに興味を示さない印象だ。腕につけたカチカチ動く針。何でも瞬間に答えを教えてくれる長方形の物体。自己満足のオシャレな布。
多くの人間が時間、情報、洋服に支配されている。このオジさんは"支配"されるどころか"支配"といった概念すらなさそうだ。