社会が示すに流されるだけの北のコンパス。その圧力に逆らう南のコンパス。善を目指す東のコンパス。悪を目指す西のコンパス。
クルクル針が回りっぱなしの安定しないコンパス。全く針が振れもしない壊れたコンパス。
人生は一度きりだが、どの指針を選ぶのかは人間が自ら決められる。テストと違って正解も模範解答もない。
と
手を動かしてパラパラとページをめくるも、頭は異空間へと吸い込まれている。旅行に来たというのに楽しむことも忘れて、考えるなんて…
とバカらしくなってきて電気を消して黒いクッションを枕代わりにして、茶色の毛布をかけて横たわった。
「ドンドンドドンッ お客さま!ドンドンッお客さまぁ!」とフロントの人とはうって変わり威勢のいい店員だなと思っていると
扉をガラガラッと簡易な扉を開けて「このまま延長よりパックを取り直した方がいいですよ!!!」と近所のお節介バァさんみたいに声をかけてきた。
どうやら電気を消した瞬間にあっちこっち動き回っていたせいか疲れ果ててしまって寝ていたようだ。
「あ…みません…す…す…すぐ出…す!」と目を人差し指でゴシゴシこすりながら答えた。来た時の受付のハッキリ喋らないお兄さんの気持ちがわかった気がした。
パソコンの右下の時刻は朝5時を指していた。「ねっむ…。」と小さな声で呟き、薄手のカーディガンを羽織って会計に向かった。
会計に向かうと会計待ちで列ができていた。会計付近には、スーツ姿の真面目そうなサラリーマン。
作業着の格好をした強面の髭。いかにもマン喫でいちゃついたカップル。夜の仕事の帰りだと分かる香水臭い暑化粧。
従業員は2人のみで、1人が会計担当。もう1人が新規の客を担当。
そんなワケで足を左右に揺らしながら、「あ〜色んなコンパスがあるよな。どのコンパスも強く針がピンッと指している」と納得して会計を済ませて店をあとにした。