ご訪問くださいまして、
有り難うございます。
れっつごうです(^^)
平野啓一郎さんの最新短編集、
を紹介しています。
この短編集のテーマは、
「あり得たかもしれない人生の中で、
なぜ、この人生だったのか」
という、いわゆる、
「たられば」の話です。
前回は、
表題作の「富士山」
を取り上げましたが、
他の作品もとても魅力的ですので、
今回は、
「息吹」
「鏡と自画像」
という2つの作品から引用しながら、
私の感じたことを
述べさせていただきます(^^;
まず、
「息吹」
中年男性の斎藤息吹は、
猛暑の中、息子を迎えに行った際に、
たまたま、かき氷屋の席が満員だったため、
マクドナルドで、
アイスコーヒーを飲みました。
そこで、たまたま、
大腸内視鏡検査の世間話を耳にして、
その後、検査を受けたところ、
ガンの早期発見ができて命拾いする、
はずなのですが・・・
息吹と妻の会話です。
「怖いよ。だって、
検査を受けたのは、
本当にたまたまだったんだから。
悠馬を迎えに行って、
最初のかき氷屋が満席で、
マックに行く羽目に
なっていなかったら、
検査の話だって
耳にしてなかったし。
―ていうか、
そもそも、
あの日は間違えて早く迎えに
行っちゃったんだよ。
だけど、
それのお陰で
ガンが見つかって。」
「運が良かったね。」
「運っていうか、
・・・運なのかな、これって?」
「運じゃない?
ラッキーよ、とにかく。」
「まあ、そうだけど、
・・・あの日、
検査の話を
小耳に挟まなかったら、
絶対、あと数年は
大腸内視鏡検査なんて
受けなかったよ。
そしたら、
もう手遅れだったと思う。
かき氷屋が満席だったか
どうかで、
生きるか死ぬかが決まる人生って、
何なんだろう?
そういうものなんだろうか?
人の一生って、
そういう偶然の積み重ねなの?」
(中略)
「偶然だけじゃないでしょ、
それは?
わたしたちの生活も、
別に偶然のお陰じゃなくて、
一生懸命働いて
手に入れたんだから。
ただ、
偶然もあるってだけじゃない、
人生には?」
「けど、偶然の比重が
大きすぎるよ、
いくら何でも。
あの日、かき氷屋に
たった一つ空席があっただけで、
俺は死んでたかも
しれないんだよ。」
・・・考えて見ると、
たしかに、人生は、
偶然の比重が大きいような気がします。
もちろん、
目標を持って
それを目指して努力するということは、
生きていくうえで
とても大切なことですし、
人生というのは、
自分の意志で
創り上げていくものだと思います。
しかし、
自分自身を振り返って見ても、
人生の分岐点は、
「ちょっとしたこと」
「たまたま」
に左右されていることが意外と多い。
私の場合、妻と交際するきっかけも
そうでしたし(^^;
現実的には、
「たまたま」に左右されることの多い人生。
だからこそ、
「たまたま」うまくいっている時には、
謙虚さを忘れないようにしたいし、
「たまたま」うまくいっていない時には、
あまり自分を責めないようにしたい。
「たまたま」うまくいっていない人のことも、
自業自得だと責めるようなことはしない。
平野啓一郎さんは、
自己責任論に反対の立場を取られていますが、
私も、この短編集を読むと、
そんな気持ちが強くなってきました。
で、話は戻りますが、
この「息吹」という短編は、
その後、映画マトリックスのような
感じになって・・・
・・・っと
ネタバレになりますので、
その後は読んでみての
お楽しみということで(^^;
次の作品、
「鏡と自画像」は、
冒頭にこんな文章が
引用されています。
凶悪事件を起こした
犯人に注目し、
その家庭環境、職歴、
友人関係、経済状態などの
分析を通じて、
どうすれば止められたのかを
議論するよりも、
実際に犯行に
及ぶことがなかった人たちに、
なぜ踏み止まることが出来たのかを
聞き取り調査する方が、
犯罪抑止の観点からは
有意義ではないかと、
たしかに、そうですね。
実際に踏みとどまれている訳ですから。
この、
「なぜ踏み止まれたか」
が説得力を持って語られているのが、
この短篇「鏡と自画像」なのですが、
その理由は、
やはり、ちょっとした出来事、
たまたま、見たり、
声をかけられたりしたことなんですね。
具体的には、
本編をお読みいただければと思いますが、
実際に私たちが、
気が付かないだけで、
「たまたま」
「ちょっとしたこと」が
大きなものから小さなものまで
犯罪の抑止力になっていることは、
多いと思います。
世知辛く、
先の見えない世の中ではありますが、
そんな時代だからこそ、
人にささやかな関心を持つことだったり、
ちょっとした思いやりを示すことだったり、
そんな小さなことの積み重ねが、
世の中を円滑に回す力になっているし、
意外と大切なんだと思います(^^)
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次回もこの本の紹介を続けます(^^;
今回も最後までお読みくださいまして、
有り難うございました😊
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おまけ写真集(^^;
山歩きの帰り道・・・
癒されます😊
寝るネコは育つ😸


