Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 ! -2ページ目

Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

Jポップスの黄金時代は80年代から始まった。

そんな時代を活写した幻の音楽雑誌『MUSIC STEADY』をネットで再現します。

 

当日の告知になって、申し訳ないが、今夜、6月12日(金)、東京「渋谷La.mama(ラママ)」で開催される「SOUND STREET LIVE VOL.7」に出演するシンガーソングライターを見ておいて欲しい。それは新谷隼平というシンガーソングライター。おそらく、知らない方も多いと思うので、彼のプロフィールをオフィシャルウェブから引用しておく。

 

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「平成元年(1989年)5月7日生まれ 青森県五所川原市出身

シンガーソングライター 現役書店員

2014年、1st mini album「孤独を愛するうたうたい。」でインディーズデビュー。

2016年〜2021年、地元青森県五所川原市の無料音楽フェス「やってまれフェスティバル」を主催。

コロナ禍を経て、応援してくれるファン一人一人の大切さに改めて気付き、路上ライブからリスタート。泥くさく、新谷らしく。

2025年2月、シングル「夏帆」を全国リリース。オリコンメジャーチャート40位を記録。

2025年6月 9月 1978年~1987年にNHK-FMで放送された伝説のラジオ番組「サウンドストリート」の令和版「SOUND STREET LIVE」に出演。森重樹一(ZIGGY)、ダイアモンド☆ユカイ等と共演。

 

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彼のHPは以下になるので、詳しいプロフィールを知りたければ参照いただきたい。

 

https://www.arayajunpei.com/

 

 

彼のライブを先日、4月23日(火)に渋谷ラママ(渋谷La.mama)で見た。新進気鋭のシンガーソングライター、新谷隼平と伝説のシンガーソングライター、友川カズキとの共演である。友川カズキはロックファンの間では頭脳警察のトシこと、石塚俊明との共演でしられている。このライブ、実は昔からの知り合いからの紹介でみることになったが、これも“サンスト”(かの伝説のラジオ番組『SOUND STREET<サウンドストリート>』)絡みである。伊藤銀次のかつてのマネージャーから同番組のプロデューサー、湊剛さんが関わるイベント「GIRLS' SOUND STREET LIVE」が3月3日(火)に東京・渋谷ラママで開催されるので、見てくれと言われた。松田樹利亜 、DOLL PARTS 、PINK DIAMOND 、Aishaというガールズロッカーが顔を揃え、ZIGGYの森重樹一が黒一点、華を添える“雛祭りライブ”の模様は既にブログなどで紹介している。同イベントには出演してないが、新谷は来ていて、知り合いから紹介された。最近には珍しい(!?)、しっかり挨拶のできる若者だった。湊さんが関わるイベントは、3月に続き、2度目になるが、今回は“SOUND STREET LIVE”と銘打たれず、「友川カズキ × 新谷隼平 2マンライブ at 渋谷La.mama」となっている。今回も湊さんが関わり、新谷のリハーサルなどには湊さんも立ち会ったという。

 

https://ameblo.jp/letsgosteady/entry-12958770037.html

 

 

新谷の『夏帆』、『曇天』、ピアノ弾き語りSONG BOOK『無垢とグレー』などの音源は直接、本人から郵送でいただいていたが、それには綺麗な文字で丁寧な手紙が添えられていた。

 

この日、4月23日(火)、渋谷ラママのステージに登場した新谷はソロでピアノの弾き語りで「故郷を遠く離れて」を歌った。いきなり五所川原という地名が出てきて、かつて青森の三沢へ行き、寺山修司の遺品などを撮影(彼のトリビューアルバムを制作するため、同所を訪れた。まだ、1997年に開館した「三沢市寺山修司記念館」が出来る前だった)したことを思い出す。久しぶりに生のフォークソングを聞いた思いがした。彼の歌声は清冽で、ピアノの音も情感が籠もる。自らのルーツを弾き語る。“アズベリー・パークからの挨拶”ならぬ、“御所川原からの挨拶”か。

 

同曲を歌い終えると、ピアノとギターが加わるアコースティック編成になる。バラード「ハルウララ」を披露する。同曲は寺山繋がりではないが、春夏秋冬の春の歌ではなく、競馬馬「ハルウララ」の歌である。生涯1勝も挙げず、負け続け、引退している。逆に人気が出て、負け組の星と言われた。新谷の優しい眼差しを感じさせる。

 

アコースティック編成のまま、ミドルテンポの「憧れと幻想と矛盾の経済」が歌われる。トピカルソングという風合いの歌詞が並び、この世界の実相を描いて見せるのだ。

 

同曲後、バンド編成になって、キーボードとドラムス、新たにギターが加わる。同バンドにはAishaの牧元芳朗がギタリストを務めている。エンジニアリングやプログラミングなど、多芸多才のミュージシャンだが、彼が加わることで、その音の景色が鮮明になっていく。絵筆を加えたという感じだろうか。

 

バンド編成でスロウ&メロウな「ヘルプレス」、太陽の光が注ぎ、心も体もウキウキさせるアップテンポの「追憶の夏」、チェンジオブペース、少しテンポを落とし、ゆったりとしたミッドテンポの「心」を畳みかける。

 

同曲を終え、この日の友川との共演を喜びつつ、もっと彼について語りたいが、たくさんの曲を演奏するため、時間の関係で次から次へと披露しなければならないと話す。

 

そんな思いの籠った曲達がバンドと一体になって、怒涛の如く披露されていく。新谷隼平というシンガーソングライターの真骨頂というべき曲の繋がりだろう。ちょっと驚かされた。

 

ロックナンバー「ベネズエラ」、ミドルテンポの「戦争のメカニズム」が披露される。自らのメッセージを歌に込め、ロックのリズムに乗せ、客席と同時に世界に向けて放つ。それは世間への異議申し立てにも聞こえる。トランプによるベネズエラ侵攻を批判する歌を2026年にこの場所で聞けるとは思わなかった。そして不条理な戦争のメカニズムを暴いて見せるのだ。日本ではとかくロックに政治を持ち込むな――など、揶揄や批判の対象になりつつあるが、そんなものを一足飛びに越して見せる。きっと、新谷隼平の中では歌わなければいけないことだったのだろう。同時に外野のくだらない雑音も覚悟の上ではないだろうか。日本ではフォークソングがいつの間にか、骨抜きにされ、トピカルやソシアル、プロテストな視点が失われてきた。いま、改めて新世代の異議申し立てにはっとさせられてしまう。とてつもない、カウンターパンチを食らった爽快さ(撃たれ好きではない!)、と、良く言ってくれたという痛快さがある。

 

 

ブルース・スプリングスティーン&Eストリート・バンドによる「Land Of Hope And Dreams」の北米ツアー初日となった2026年3月31日のミネアポリス公演は、オープニング・ナンバーに「WAR」を披露。同曲は1970年全米1位を獲得したエドウィン・スターのカヴァーで、“War, what is it good for? Absolutely nothing!(戦争?何の役に立つんだい? まったく何の役にも立たないぜ)”という反戦歌だ。そしてのアンコールでスプリングスティーンはボブ・ディランの「自由の鐘(Chimes of Freedom)」をレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのトム・モレノとともに歌い、コンサート 終演後のBGMにはウディ・ガスリーの「わが祖国(This Land Is Your Land)」を流したという。 ちょっと、論点がずれたかもしれないが、海外に倣えと言うつもりはないものの、そんな認識を持っていてもおかしくないだろうとは言わしてもらいたい。

 

 

フルバンド編成で「バッドライフさらば」、「過ぎていく」を披露し、最後の曲である「グッドバイミーツザワールド」を歌う直前、同曲について語る。タイトルから明らかなように「第35回柴田錬三郎賞受賞作」である金原ひとみの『ミーツ・ザ・ワールド』に影響を受けたものであることを告げ、歌舞伎町の歌であるとつけ加える。流石、現役書店員である。同時代へのクリエイターへの共感を感じる。彼の歌は自閉することなく、社会に開かれているのだ。欲望と猥雑の都市を題材にするところなど、ルー・リードや寺山修司に連なるものを抱かせるのだ。

 

まだ、歌詞と曲の乖離などもあるものの、新しい世代のシンガーソングライターの登場ではないだろうか。流石、湊さん。彼の目利きとしての才を感じるのだ。彼はSNSで今度のライブで一緒にステージに立つ仲間達について“本当はこんな音楽がやりたいんだよなと思いながらも表現出来ずにいたオルタナティブロックを今のメンバーたちと出逢ったことで自然と導かれるようにそれが出来ている今に感動しています。音楽シーンを切り拓いていくんだ。ステージ楽しみにしていてください”と呟いている。

 

 

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■新谷隼平セットリスト 2026年4月、4月23日(火)東京「渋谷ラママ(渋谷La.mama)」

1.故郷を遠く離れて(ピアノ弾き語り)

2 .ハルウララ(アコースティック編成 ピアノ、ギター、ヴォーカル)

3.憧れと幻想と矛盾の経済(アコースティツク編成)

4.ヘルプレス(フルバンド編成)

5.追憶の夏(フルバンド編成)

6.心(フルバンド編成)

7.ベネズエラ(フルバンド編成)

8.戦争のメカニズム(フルバンド編成)

9.バッドライフさらば(フルバンド編成)

10.過ぎていく(フルバンド編成)

11.グッドバイミーツザワールド

 

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新谷隼平に続いて、友川カズキがギターを抱え、ひとりでふらりとステージへ現れる。椅子に座るなり、演奏を始めるかと思ったらMC(!?)が始まる。“「ベネズエラ」を歌ってくれたのは嬉しかったです。何故なら世界があれを非難しないから。ちゃんと書いてくれた”と熱を込めて語る。歌が始まる様子は暫く、新谷隼平への賛辞が続く。“自分は記事を書かない新聞記者。誰も尾行しない探偵を名乗っています”と語り、“テレビやマスメディアはどうでもいいことは騒ぎ立てるけど、大事なことは伝えない”とくさす。いつもの演奏が始まり出すと、途中でやめて、新谷のことを再び、話し始める。友川は“隼平さんの歌聞いていたらおかしくなっちゃった。変な歌を唄いやがって”と嬉しそうに語る。

 

 

漸くペースが戻ったか。お馴染みの「祭りの花を買いに行く」、「光るクレヨン」など、聞かせてくれた。歌が終わるとトークが続く。ある意味、泉谷や高田渡など、かの世代の特色か、語りと歌が込みで、その世界と言っていいだろう。

 

PANTAや遠藤ミチロウ、三上寛など、同世代の盟友たちの話を嬉しそうにする。残念ながら三上を除き、二人は既に鬼籍に入っている。そんなこともあって、彼らを追いかけるように新谷隼平のようなシンガーソングライターが現れたのが嬉しいのではないだろうか。

 

友川は自らのステージの締めに新谷を呼び出し、2人で歌を披露することになる。新谷は緊張気味しているみたいだが、友川は期待できる後進との共演が嬉しいのか、終始、にこやかである。勿論、歌はすぐに始まらず、新谷の郷里、青森の話になる。三上寛も寺山修司も青森出身である。ちなみに友川は秋田出身。東北県人会か。“ケンミンSHOW”状態に話が盛り上がる。

 

 

二人はエゴン・シーレやセザンヌ、フランシス・ベーコン、長谷川利行、関根正二、中村彝などの画家が登場する友川カズキの「一人ぼっちは絵描きになる」(2010年にリリースのアルバム『青いアイスピック』に収録)を披露する。希代の名曲を2026年に甦らせる。世代を超えた共演である。その瞬間を共有したものは様々な思いや悩みを抱えつつも至福と嘉悦に包まれたはず。今日の「渋谷La.mama」は友川カズキは出ないが、友川カズキをかくも狂わせる新谷隼平の新世界を体験して欲しい。

 

https://www.lamama.net/article/s-20260612/

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所沢・音楽散歩――Takeshi Sumida's ROM(澄田健+大貫悟+篠奈々子)+ザ・ナスポンズ(松浦湊+小滝みつる+上原ユカリ裕+新井健太+春日hachi博文)本流にして傍流にあらず!

 

(写真左から)大貫悟(B)、澄田健(Vo、G)、篠奈々子(Per)

 

本来であれば“所沢2DAYS”なので、5月24日(日)に所沢「MOJO」で開催されたTakeshi Sumida's ROM(澄田健<G、Vo>・大貫悟<B>・篠奈々子<Per>)とザ・ナスポンズ(松浦湊<Vo,G>・小滝みつる<Kb>・上原ユカリ裕<Dr>・新井健太<B>・春日hachi博文<G>)の豪華共演・夢の競演の前日、5月23日(土)に新所沢「LAD COMPANY」で開催された澄田健、松浦湊、小滝みつるというラインナップで行われた“前夜祭”もみておくべきだった。しかし、残念ながら今年も行けずじまい。誠に申し訳ない。所沢の連チャンは近いようで遠く、宿泊すればいいのかもしれないが、遠いようで近く、意外とハードルが高い。“アド街”で気になった団子屋やうどん屋を味見しつつ、ついでに飯能のトーベ・ヤンソンの世界まで足を延ばすしかないだろう。

 

 

澄田は、所沢「MOJO」に2024年4月7日(日)は"D runkard Ball"(澄田健<Vo、G>・"CRAZY"COOL-JOE<B>・湊雅史<Dr>)、2025年5月11日(日)はTHE SOUL NUTS(澄田健<Vo、G>・夢野カブ<Vo>・湊雅史<Dr>・早川岳晴<B>)というラインナップで出演している。いずれもその前日に新所沢「LAD COMPANY」で“前夜祭”を行っている。勿論、それ以外にも「MOJO」には下山淳や山部YAMAZEN善次郎のサポートなど、数限りなく出演している。“HOME”みたいなものだろう。

 

今年は半年ほど前に結成したTakeshi Sumida's ROMというユニットとしての出演になる。メンバーの大貫悟はかつてルイズルイス加部のグループ・アンド・アイなどのバンドで活動していたキャリアがあり、その立ち居振る舞いや雰囲気も加部譲り(!?)、現在はサエキけんぞうのジョリッツでも活動する吉田仁郎が参加しているHELL HEADなどでも活動している。篠奈々子はオフィシャルウェブページから抜粋、引用すると「尚美ミュージックカレッジ専門学校ドラム&パーカッションコース卒業。黒田卓也(tp.)、田我流、森岡賢(ex.SOFT BALLET)、出口雅之(ex.REV、GRASS VALLEY)、本郷綜海などのアーティストのレコーディングやライブ、ツアーをパーカッション&コーラスで共演。また打楽器オーケストラの中心メンバーとして指導的役割を一任される。2017年から海外でのホール公演など活動を国外にも広げ、短期でニューヨークに渡り音楽を学ぶ。Wilson chembo corniel氏(Tito Puente、Larry Harlow)やKeita Ogawa氏(Snarky Puppy)に師事。2021年9月末に1st mini album『ラテンコチシン』を初リリース。 iTunes storeやApple musicで連日チャートインし、ラテントップアルバムランキングで1位を獲得する」というラテン界隈でも話題になっている新進気鋭のミュージシャンである。

 

 

ステージにはTakeshi Sumida's ROMが開演時間の18時を5分ほど過ぎて登場する。澄田はエレクトリックギター、大貫はベースギター、篠のドラムセットはフルセットではなく、パーカッションなどが並ぶ、しつらえだ。

 

フリーフォームなインプロビゼーションから始まる。まずはご挨拶かもしれないが、軽やかで、心地いいグルーブを紡ぐ。ROM流の「Behind the Mask」を聞かせてくれる。

 

 

続いて2020年にリリースした澄田健の初ソロアルバム『Magenta』に収録されている、お馴染みの「Long Black Hair」を披露。同曲の歌詞はBAKIが書いている。オリジナルは澄田のダークな歌とヘヴィーなギターが聞きどころだが、いい意味でのシャープさが加わる。

サム・テイラーのむせび泣くサックスで有名なジャズ・スタンダード「Harlem Nocturne」をワウ(!?)を駆使してブルージーに聞かせ、再び、『Magenta』に収録されているBAKIが歌詞を書いた「Tomorrow」を披露。この2曲は澄田健らしいロックを聞かせてくれる。彼のライブに足を運ぶ方にはお馴染みだろう。

 

 

長尺で組曲的な「Walking in the Rain with my Girl Friend」を披露。同曲は“一昨年くらいにBAKIちゃんに詩を頼んだら出してくれて、それをメロディに合う様に変えてます”と言う新曲オリジナル。深淵な世界を垣間見れる、聞き応え充分のナンバーだ。音源化を希望する。同曲後、澄田健がロッカーズの穴井仁吉(B)、そしてROSSOなどで知られる佐藤稔Dr)による強者トリオ、MOTO-PSYCHO R&R SERVICEの「Love Planet」、「R&R Future」など、お得意のロックンロールナンバーを畳みかける。べースはヘヴィーながらパーカッションは軽快にロールする。曲そのものは2010年代のものだが、見事に2026年の風を纏うのだ。

 

 

そして澄田のキャリアの中でも特筆すべきは柴山“菊”俊之のZi:Lie-YA での活動だろう。同バンドのアルバム『電光石火』(2004年)に「Parachute Girl」(作詞:柴山俊之・作曲:澄田健)を提供。言うまでもなく、澄田は後にシーナ&ロケッツに参加することからも明らかなように澄田は鮎川誠と菊に大事な位置を任された稀有なギタリストである。その「Parachute Girl」を澄田の歌と演奏で、観客に届ける。当然、観客はその出自と物語を知っている。オリジナルにはない装いながら、観客を虜にしていく。

 

 

同曲に続き、同セットの締めとして、お馴染み。「花鳥風月」を披露する。沖縄民謡風のナンバーで会場はカチャーシー状態になる。熱気と歓喜が渦巻く。大貫のブルージーなふてぶてしさ(前述通り、加部になんとなく似ている)と篠のラテンな可憐さが合わさり、ROMの音世界を体験させてくれる。今回、同プロジェクト(!?)での「MOJO」出演は初ながら、なかなか、楽しい組み合わせを見せてくれた。かくも魅力的な腕っこきを集めるバンドリーダーとしての才覚を感じさせる。澄田の第一部は賑やかな余韻を残し、19時前には終わる。

 

 

■Takeshi Sumida's ROM

1.Behind the Mask

2.Long Black Hair

3.Harlem Nocturne

4.Tomorrow

5.Walking in the Rain with my Girl Friend

6.Love Planet

7.R&R Future

8.Parachute Girl

9.花鳥風月

 

 

(写真左から)春日hachi博文(G)、新井健太(B)、松浦湊(Vo、G)、上原ユカリ裕

(Dr)、小滝みつる(Kb)

 

15分ほどの休憩後、19時15分、ザ・ナスポンズがステージに登場。第2部が始まる。現在の小川美潮、吉田日出子とでもいうべき自由奔放、抱腹絶倒の無頼派の歌姫、松浦湊(Vo、G)に元カルメン・マキ&OZの春日“hachi”博文(G)、東京ローカル・ホンクの新井健太(B)、元・村八分、元ココナツバンク、元シュガー・ベイブ、元EXOTICSの上原“ユカリ”裕(Dr)、元シネマ、元・戸川純とヤプーズの小滝みつる(Kb)という一癖も二癖もあるロックレジェンド達が一堂に会したのがザ・ナスポンズ。2021年の衝撃のデビューから5年、マイペースな活動ながら東京のローカルシーンにザ・ナスポンズありの存在感を示しつつある。所沢の「MOJO」や原宿「クロコダイル」、吉祥寺「Star Pine's Café」、横浜「六角橋商店街ヤミ市」などを“アジト”に活躍中だ。

 

 

彼らを初めて見たのは2022年。4月6日(水)、東京・青山「月見ル君想フ」のジャムバンド、Sardine Head(サーディン・ヘッズ)とのジョイント・コンサート『満月と春の宴』だった。当時の衝撃体験をアメブロに「珍妙なれど、逸材なり――ザ・ナスポンズ」というタイトルで書いている。その後、所沢の「MOJO」で澄田健とのユニットとセットで2024年から本2026年まで3連続で見ているが、いい意味で、変わらない。むしろ、その“珍妙”さが肌にあってきた。改めてその逸材ぶりに感嘆することも多くなった。

 

 

https://ameblo.jp/letsgosteady/entry-12737477687.html

 

 

 

 

相変わらず、題材は奇想ながら起承転結があり、最終的には見事な落としどころがある。「出土騒ぎ」や「貸した借りと借りた歌詞」、「もしかして猫舌?」、「サバの味噌煮」など、普段、歌の主題や題材になりにくく、本当にこれが歌になるのと、考えがちだが、月並みなコミックソングに落とし込むことなく、歌詞に絡まる歌や演奏を聞いていると、納得させられる。

「貸した借りと借りた歌詞」ではサーカスのジンタのようでもあり、唱法がスパークスのようにも聞こえる。「もしかして猫舌?」は転調する(裏返る!?)歌声はチャクラの小川美潮やサディスティック・ミカ・バンドのミカのようでもある。

 

 

「サバの味噌煮」は春日のギターが聞かせどころだが、ダブ風味もありつつ、曲調が千変万化する。複雑な構造がかのザッパにも通じ、諧謔と軽妙が溢れる。ザ・ナスポンズを聞くと、三木 鶏郎(みき とりろう・三木トリロー:1914年1月28日 - 199410月7日)という作詞家、作曲家、放送作家、構成作家、演出家を思い出す。日本コロムビアのプロフィールには“戦後、焼け跡の歌「南の風が消えちゃった」を作り、1946年、NHKラジオ『歌の新聞』に出演。翌朝刊に「彗星の如き天才現わる」のコメントが掲載された。以後、コントに音楽を取り込み社会や政治を風刺する「冗談音楽」でラジオに旋風を巻き起こす。”とある。

 

キノトール、永六輔、野坂昭如、伊藤アキラと「トリローグループ」を結成。また、作曲家陣として神津善行、いずみたくなど、「三木鶏郎楽団」としてジョージ川口、小野満、鈴木章治などを集める。門下からは歌手(楠トシエ、中村メイコなど)や俳優(三木のり平、河井坊茶、千葉信男、丹下キヨ子、逗子とんぼ、なべおさみ、左とん平)など、多くの人物を世に送り出す。様々な逸材を育て上げたことでも有名だ。その流れには大瀧詠一や山下達郎を見出し、CM音楽の世界に巻き込んだONアソシエイツの大森昭男などもいた。

 

 

数年前、2022年に愛宕山のNHK放送博物館で、三木鶏郎が関わった番組の台本や譜面などを展示した「トリローって何だ!?」を開催していたが、随分前に鈴木慶一やKERAを絡めて、FBに同展へ行ったことを書いている。

 

 

 

 

 

 

また、偶然とはいえ、この6月19日(金)から「ニッポン・ポップス・クロニクル /朝カル編」として、牧村憲一さんと鈴木惣一朗さんによる講座『 三木トリローと大森昭男、そして大滝詠一』が始まる。

 

 

ニッポン・ポップス・クロニクル /朝カル編

『 三木トリローと大森昭男、そして大滝詠一』

牧村憲一/音楽プロデューサー

鈴木惣一朗/音楽家

 

 

 

三木鶏郎がきているではないが、傍流に見えて本流である。ザ・ナスポンズをその流れに置くと、嵌る。実はサディスティック・ミカ・バンドは服部良一の楽曲をカバーする『駅前旅館』という企画があったが、契約の問題で実現しなかった。ザ・ナスポンズで『所沢・駅前旅館』はいかがだろうか。そこにグラム&ブギウギの貴公子・澄田健が客演すると映えるのではないだろうか。

 

 

この日、アンコールにはTakeshi Sumida's ROMの3人もザ・ナスポンズに合流。「ウシロトラレルナ」で賑やかに騒がしく、大団円を迎える。メンバーの各々の自由気ままさが嬉しく、観客の皆様も笑顔で“祭り”に加わる。その宴は20時過ぎにお開きになるが、ライブ終演後もその場に居残り、楽しく歓談するのが「MOJO」の魅力だろうか。所沢への小さな旅、お薦めである。

 

 

 

■ザ・ナスポンズ

1.出土騒ぎ

2.貸した借りと借りた歌詞

3.空にはお月さま

4.アフター わっしょい

5.もしかして猫舌?

6 .お買い物

7.サバの味噌煮

8.カモなんです

 

■ザ・ナスポンズ+Takeshi Sumida's ROM

EC ウシロトラレルナ

 

 

 

 

“下山淳祭”で申し訳ない。以下の原稿は既に福岡発のBEAT MUSICの応援サイト「福岡BEAT革命」のFBページで紹介しているが、昨日、公開した「シン仲野茂バンド誕生――仲野茂バンド メンバー全員インタビュー! <Ⅰ>+<Ⅱ>」とも関連するので、アメブロでも公開させていただく。今年、67歳の彼が精力的に動く理由がわかるだろう。併せて読んでもらいたい。

 

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このGW前後はライブ三昧だったが、とりわけ心に残るのは下山淳のライブだった。改めて下山淳は一筋縄ではいかないミュージシャンであるとともに音楽を通していろんな形の多幸感を届ける稀有な存在であることを実感する。その多様で広範な音楽的知識と素養に高度な技術と鋭利な感性で、自らの頭の中に生まれる艶やかで煌びやかな極彩色の世界をギターという絵筆で描いてみせる。

 

 

(写真左から)下山淳(G)、武田康男(Vo、G)、

樋口素之助(Dr)、岡本雅彦(B)、マリアンヌ東雲(Kb)

 

 

 

 

4月29日(水・祝)、高円寺「JIROKICHI」で行われた「貝生平2 Play the 60/40」では蜘蛛蜥蜴の武田康男(Vo、G)、仲野茂バンド、G.Dフリッカーズの岡本雅彦(B)、頭脳警察の樋口素之助(Dr)、キノコホテルのマリアンヌ東雲(Kb)とともに、かつて下山淳が弟の下山アキラ(B)、湊雅史(Dr)、スエキチガイ(Vo)、Sun-Chiriko(Kb)などと1990年代に結成した、60/40の「ソフトマシーン」や「サイケリア」、「アゴラドゥラ」など、超絶難曲を披露してみせた。まるでザッパやジェフ・ベック、トッド・ラングレン(ユートピア)を彷彿させる超絶技巧の天下一武道会状態。混沌と混乱を潜り抜ける爽快感と、難解なクロスワードパズルを解いたような達成感を与えてくれる。近頃、体験したことのない快感を味あわせてくれた。音楽性は違えど、村上PONTA秀一や渡辺香津美、坂本龍一、小原礼、ぺッカーなどが暗躍、躍動した、フュージョンとテクノの端境期、かの熱狂と興奮の六本木PIT INでの“KYLIN”や“カクトウギセッション”なども過る。男も女も老いも若きも胸騒ぎ、心躍る音だろう。こんな下山淳が見たかったという人も多いのではないだろうか。貝生比良から貝生平へ、多少の人事異動もあったが、パーマネントなバンドとしての活動継続を望む音楽ファンも多いはず。勿論、休止中(!?)のアカネ&トントンマクートやEli and The Deviantsの活動再開も期待したくなるというもの。

 

 

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(写真左から)宮田岳(B)、下山淳(G、Vo)、茜(Dr、Vo)、

澄田健(G、Vo)

 

5月16日(土)は所沢「MOJO」で一足早い下山淳の生誕祭が開催された。下山は5月19日に67歳になる。下山を支えるのは頭脳警察、元黒猫チェルシーの宮田岳(B)、EMILAND、スクナシ、アカネ&トントンマクート、三宅伸治&the spoonfulの茜(Dr)、そしてシーナ&ロケッツ、YAMAZEN(山部“YAMAZEN”善次郎)&The 幌馬車、D runkard Ball、Takeshi Sumida's ROMの澄田健(G)という気心の知れた仲間達である。

 

 

ちなみに澄田は2023年7月のアカネ&トントンマクートの大阪・京都・名古屋という“サマーツアー”の京都「拾得」公演に下山のトラとして参加したこともある。下山と茜、澄田との共演歴は敢えて説明の必要もないかもしれないが、宮田との共演歴を簡単に紹介しておく。宮田岳と下山淳は、アコギなSS(仲野茂+下山淳)で岳竜(宮田岳+澤竜次)と共演、黒い鷲-ZUNOMONO (澤竜次、おおくぼけい、宮田岳、樋口素之助、竹内理恵)でも共演している。また、下山は2024年7月8日(月)、渋谷「 duo MUSIC EXCHANGE」で開催された「七夕忌 PANTA一周忌&頭脳警察55周年記念ライブ」でゲストとして出演。宮田は昨2025年の下山の生誕祭にも出演している。

 

 

毎年、生誕祭ではレギュラーバンド以外にゲストなども出演するが、今回、ゲストはなく、言わば気心の知れたメンバーと馴染の店でお気に入りの曲を演奏するバースディライブになった。

 

下山はこの日の開演時間の18時にいつものギターではなく、ひょうたんの形をしたブズーキ(ギリシャ音楽で使用される弦楽器。ギリシャの他にもセルビアやボスニア・ヘルツェゴビナといったバルカン半島の民族音楽、アイルランド音楽などでも使用されている)を持って、ステージに登場する。意外な登場で驚くが、1999年5月29日に同時発売された2枚のソロアルバム『Living On The Borderland』(アコースティックアルバム)と『Monkey Night』(エレクトリックアルバム)に収録された「長い道」(”Living――”にはショートヴァージョン、“Monky――”にはロングヴァージョンを収録)が披露される。続いて、『Living On The Borderland』から「宮殿の大浴場~ハララビ」が演奏される。フォークロアにエスニックをまぶす。ちょっと、サード・イアー・バンドなども思い起こさせる。ブズーキも納得の選曲だ。宮田、茜、澄田は難曲をしっかりとサポートする。

 

 

下山はフェンダーに持ち替え、お馴染み、山口洋が歌詞を提供した「Old Guitar」(ROCK'N'ROLL GYPSIES 『I 』2003年)を披露する。いつもの下山らしい流れに観客も胸を撫でおろす。下山はギターに通販で買ったという骸骨の形をしたカポタストを付け、昨2025年1月30日に亡くなったマリアンヌ・フェイスフルのテリー・リードのカヴァー「Rich Kid Blues」を下山流に聞かせる。意外なナンバーだが、こんな曲を引出しの中からひっぱり出してくるのも下山らしい。

 

下山自身、生誕祭などはあまりやる気はないらしいが、まわりからのリクエストで気づいたら通年開催しているという。下山の故郷である山形県鶴岡時代は自宅で“お誕生日会”を開くこともあり、母親からはお友達を呼んできなさいと言われたものの、呼べるような友達はいなかったので、知り合いを友達ということで来てもらったそうだ。バースデイケーキではなく、母親が作る筍のかやくご飯が思い出だそうだ。山形県鶴岡市の慎み深く、愛溢れる家族の物語がそこにはあった。友達のいなかった下山はいま、素晴らしい仲間達に囲まれる。“アット・ホーム”などというと鼻白むかもしれないが、先日の「JIROKICHI」のライブに比べたらいつになく、気を許し、寛いでいるようにも見える。

 

 

改めてのメンバー紹介後、村八分の曲をやると観客に告げ、「水たまり」を披露。“がきの頃を思い出して”と歌われる。アカネ&トントンマクートやソロでは何度も歌われたナンバーだ。ちょっとやさぐれた感じが見事に嵌まる(!?)。

 

続いてROCK'N'ROLL GYPSIESの『Ⅱ』(2005年)に収録された下山が作詞・作曲した「 Junk! Junk! Junk?」が演奏される。

 

60を過ぎ、70近くになって、こんなにロックしている大人はいないだろう。村八分からジプシーズへという流れが下山らしく、しっくりとくるのだ。

 

同曲の後、澄田を紹介し、彼が歌うことを観客に告げる。シナロケやロッカーズのロックンロールナンバーかと思えば、アルバムなどには収録されていない、彼のオリジナル「花鳥風月」が披露される。沖縄民謡風のナンバーで、澄田は元上々颱風の白崎映美と大田穣、古関純匡とともにKBB(近所バカバンド)を組んでいるが、そんな影響もあるのだろう。澄田自身は広島出身で地元、広島の民謡「音戸の舟唄」もソロなどで度々、披露している。知る人ぞ知るというか、ほとんど知られざる“民謡十字軍(クルセイダーズ)”だろう。

 

澄田のソロの後、下山は“ジプシーズの最新アルバム(『Ⅴ』2023年!)に入っている”という、隠れた名曲「So Long」を歌う。ミディアムテンポのナンバーで、聞くものは引き込まれる、そんな力が宿る。随分、やっていなかったという。茜のソウルフルなコーラスが同曲の魅力をさらに引き立てる。

 

下山は同曲を満足そうに歌い終えると、本日は1部、2部制で休憩に入ることを宣言。彼らは18時に開演して、休憩まで1時間ほど、へたることなどなく、休みなく突っ走った。見事な大人達ではないだろうか。

 

 

 

20分ほどの休憩後、メンバーがステージに戻って来る。ジョージ・ベンソンなどでお馴染みの「ON BROADWAY」を演奏しながらメンバー紹介を改めてしつつソロを回していく。かの時代のマナーをさりげなく踏襲しているところが彼ららしい。宮田岳が最年少(1991 年2月1日⽣まれ。神⼾市出⾝)であることが“暴露”される。下山が67歳、宮田が35歳になる。30以上、年齢が離れていても仲間として普通に演奏できるところがこのバンドの懐の深さだろう。宮田は下山淳を始め、頭脳警察、Jagatara2020、鈴⽊茂、町⽥康(汝、我が⺠に⾮ず、マチダ地蔵尊)など、日本のロックレジェンドに気後れすることなく、堂々とタイマンをはる。そんなところが宮田岳というミュージシャンの変幻自在さだろう。ちなみに宮田は筑波大学、同大学院の芸術専攻修了。漆・⽊⼯作家の顔も持ち、都内を中⼼に、出張⾦継ぎ教室を多数開催中という。そんなキャリアやバックグラウンドも下山の絵描きとしての資質とされ気なく、交わる。

 

続いて茜がフィーチャーされ、彼女はアン・ピープルズの「A good day for Lovin’」を歌う。ドラマーだけでなく、歌手としての実力を改めて観客に知らしめる。彼女のソウルフルな歌声は特筆すべきものがあり、アカネ&トントンマクートでも彼女のソウルショーは白眉だった。繰り返すが、トントンマクートの再始動を期待するものも数多い。

 

下山がお馴染み、ジョニー・ウィンターの「Bon ton roulet」をカヴァーする。所沢がテキサス、ニューオーリンズへ――スワンプな香りを会場に運ぶ。澄田の壺を心得た切り込むようなギターの音がこの曲に色どりを加える。二人のギターの絡み(バトル!?)はギター好きには堪らないだろう。

 

同曲の後は宮田岳がフィーチャーされる。宮田はJagatara2000 の盟友、ヤヒロトモヒロとのユニット、公開車庫のオリジナル「TVショウ」を披露する。ラップ風味の歌とサイケとファンクがミクスチャーされた不思議な曲で、下山が演奏で同曲を盛り上げる。改め二人の相性の良さを感じる。下山のギターには変態的な魅力があるが、宮田のベースも一筋縄ではいかないものがある。この組み合わせは絶妙な化学変化を生む。ある意味、ベストパートナーかもしれない。

 

 

下山はアコースティックギターを抱え、メンバーにコード(Gらしい!)を確認しながら“Z”(THE ROOSTERZ)の名盤『FOUR PIECES』 (1988年)に収録された下山が作詞・作曲している名曲「預言者」を披露する。誰もが知る下山の代表曲、観客のボルテージも一気にあがる。

 

 

同曲に続き、下山が沢田研二に提供した「カガヤケイノチ」(作詞・沢田研二:作曲・下山淳)を歌い出す。敢えて説明するまでもないが、下山は沢田研二の“沢田研二TOUR”のバンド(2008年に沢田が“鉄人バンド”と命名)のメンバーだった。下山の沢田のバンドへの参加は1999年から2015年まで続いた! 沢田に楽曲も提供している。下山の横には大江慎也や遠藤ミチロウ、泉谷しげる、浅川マキ、そして沢田研二など、常に強烈なヴォーカリストがいた。

 

同曲を歌い終えると、本編最後の曲とアナウンスする。歌う前、下山は“67歳、当時はそんな年齢でロックをやっている人なんか、いなかった”と語った。確かにルースターズに参加した時(1983年。当時24歳)には自分が60を過ぎても演奏しているなど、信じられなかっただろう。実際、下山は大病で、長期入院、療養することもあった。彼は“長生きはするものですね”と言いながらも少し寂し気に“歌詞を書いてくれたやつが最近、逝っちゃった”と語る。「Shallow me」を歌い始める。1995年にリリースしたアルバム『Living On The Borderland』に収録されている。作詞は先日、2026年1月6日に急逝したスマイリー原島。下山はスマイリー原島のバンド、アクシデンツのセカンドアルバム『知らない世界』(1985年)をプロデュースしている。複雑な思いを抱きながらも彼への感謝、追悼を込め、見事に歌いきった。同曲を終えると、スタッフの合図でクラッカーからステージへテープが弧を描く。HAPPY BIRTDAY――バースデイのサプライズ演出である。音も火も出ないが、極彩色のテープが客席とステージを結ぶ。実はスタッフは演者には内緒で開演前に客席にクラッカーを配り、合図とともに投げ入れてくれと仕切っていた。ささやかだが、思いやりの籠ったプレゼントだ。下山は照れ臭そうにしているが、笑顔が零れる。メンバーは一端、ステージを掃ける。その間、スタッフはテープを回収し、会場に迷惑を掛けないように対応する。思いやりなどと言うと、気恥しくなるが、分断や憎悪が溢れる世界でこんな気遣い、やりとりがいま、必要ではないだろうか。

 

会場のアンコールの拍手と歓声に促され、メンバーはステージに戻って来る。下山は下山淳とホッピー神山によるユニット「RAEL」(ラエル)唯一のアルバム『Birth Of Monsters』(1990年)に収録された「Sun,Rains & Radio」を披露する。超レア曲(と、会場が認識していたかは不明!? 私も「RAEL」のアルバムは当然、聞いているものの、曲名などはすぐに出てこなかった。申し訳ない!)の蔵出しに観客は歓喜する。

再び、コードはGと確認後、ニール・ヤングの「Only love can break your heart」を演奏する。同曲はニール・ヤングのサードアルバム『AFTER THE GOLD RUSH』(1970年)に収録された名曲で、シングルとしてもリリースされている。同曲に限らず、下山淳や花田裕之などのライブではニール・ヤングの曲は何度も歌われている。ある世代のアンセムといっていいだろう。年寄りと言われればそれまでかもしれないが、その歌は人の頑な心を溶かし、凛とさせると同時に優しくもさせる。当然、彼らの歌にもそんな効果がある。「Only love can break your heart」には“Yes, only love can break your heart(そう 君の心を壊すのは 愛だけだ”というフレーズがある。その言葉を口ずさんでくるだけで、優しい気持ちになる。勿論、全部を訳すと、前後の歌詞からいろいろ意味もかわってくるかもしれないが、何某かの効果(ご利益か!?)がありそうな気がする。下山が時々、歌っているニール・ヤングの「HARVEST MOON 」(1992年にニール・ヤングがリリースしたアルバム『HARVEST MOON』 のタイトルトラック)とともに最高の“締め”曲ではないだろうか。

 

 

観客も納得、満足な顔を浮かべ、ステージを去る彼らを見送る。20時40分には“撮影会”がおこなわれたから、18時に始まり、途中、休憩を挟み、20時30分過ぎにはアンコールを終えている。約150分、充分過ぎる生誕祭ではないだろうか。バースディライブというと、ゲスト多数、演出多様という豪華絢爛、満漢全席、ラストワルツ的なものが多く、それもいいかもしれないが、シンプルにメンバーやスタッフ、オーディエンスの“下山愛”が存分に伝わる、愛ある150分に意味があるだろう。何か、皆の笑顔が眩しく、それが心と身体の浮世の滓も解きほぐす。また、来年も下山淳の“生誕祭”へ足を運びたくなる。67を過ぎて、こんなに幸せな気分でロックしているミュージシャンはいない。いい歳の取り方をしている。古希まであと一息。もう一踏ん張りだ。何か、この4月29日(水・祝)と5月16日(土)は驚きと寛ぎの果てに音の万華鏡を手にいれ、心と身体の桃源郷の入り口を見つける――そんな気になった。下山淳の後ろ姿を見て、俺たちもしっかり歩いていこう。