二人パール兄弟(サエキけんぞう+窪田晴男)が今井裕とともにサディスティック・ミカ・バンドのファーストアルバム『SADISTIC MIKA BAND』(1973年)に収録された「ダンス・ハ・スンダ!」や「シトロン・ガール(金牛座流星群に歌いつがれた恋歌)」、「影絵小屋」など、珠玉の名曲達を演奏するという。今井のミカバンドへの加入はクリス・トーマスがプロデュースしたセカンド・アルバム『黒船』(1974年)からになるが、実際はファーストアルバムからレコーディングに参加。初期の名曲達を今井裕が演奏している。本物を弾いたキーボーディストとの“共演”である。単なる“カヴァー”や“トリビュート”とは違う。また、サディスティック・ミカ・バンドのカヴァーやトリビュートは、「タイムマシンにおねがい」や「塀までひとっとび」などは演奏されることはあっても「影絵小屋」や「シトロン・ガール」など、ファーストアルバムの曲が演奏されることは滅多にないそうだ(実際は「シトロン・ガール」が昨2023年、高野寛が狭山のフェスで演奏したが、それだけ。「ダンス・ハ・スンダ!」は加藤和彦トリビュートでカバーされた)。
開催日時は10月4日(金)、開催会場は大阪・福島「THIRD STONE 福島店」である。二人パール兄弟のツアーの大阪公演に大阪在住の今井裕が合流することになる。東京ではなく、大阪である。一瞬、ひるみそうになるが、やはり、この機会を逃してはならない。このところ、台風や地震、故障などで運行状態が不安定な新幹線ながら、意を決して(というほどではないが!)、東京発・新大阪行きの新幹線に乗り込む。幸いなことに遅延も休止もなく、すんなりと新大阪に到着。在来線の新大阪駅から大阪駅へ、そして福島駅(当然、福島県の福島ではない。JR大阪駅から環状線内回りで一駅である)に到着。梅田から近いにも関わらず、下町情緒が漂う。カード下にはいい感じの“飲み屋”がひしめく。駅から徒歩5分ほどのライブハウス「THIRD STONE 福島店」には開場を待つ観客が列をなす。このために来阪した“遠征組”も多いらしく、再会を喜び合う方もたくさんいた。
開場すると、会場にはDJのグルーヴあんちゃんによるパール兄弟やイミテーションなどと同時代のバンドのナンバーがプレイされる。始まる前から観客の気分が上がるというもの。
開演時間の午後7時を15分ほど、過ぎて、サエキけんぞうと窪田晴男が登場する。サエキはヘルメット(ジョン・レノンが「パワー・トゥ・ザ・ピープル」のピクチャースリーブで着用。その裏面はオノ・ヨーコで叛旗赤ヘル版)に手拭といういで立ち。始めから不穏な空気(!?)を漂わせるものの、チューニング中に窪田が何気なく話した今井裕との“初めて物語”にほっこりさせられる。窪田は“今井さんは40年も前にレコーディングに誘ってくれた人”と語る。まだ、右も左もわからない新人の窪田を最初に認めたのが今井であり、今夜は約40年ぶりの競演であることを観客へ伝える。人に歴史あり。おそらくはそれはイミテーションのヴォーカルのCHEEBOのソロアルバム『パラダイス・ロスト』のレコーディングだろう。1985年にリリースされているが、実際のレコーディングは前年、1984年である。今井は窪田晴男(G)、奈良敏博(B)、友田真吾(Dr)、そして今井裕(KB)というラインナップで「Media」を結成し、そのバンドで同アルバムのためにPANTAや伊藤銀次、MOMOYOなどが提供した楽曲のベーシックトラックをレコーディングしている。あれから40年。窪田が感慨深げに語るのも無理もないだろう。
二人パール兄弟はこの日の前日、10月3日(木)に豪雨の静岡のライブハウス「騒弦」で「二人パール兄弟ツアー はじめまして静岡」を行っている。そのライブは、妄念忍者やJIMMYとからまわる世界など、地元バンド(!?)がサエキけんぞうの名曲をカヴァーするなど、“歓待”を受けたばかり。否が応でも二人の気持ちは上がる。そんな勢いもあっての大阪入りは「二人パール兄弟ツアー 待たせてゴメンネ大阪」と命名された。おまけに二人パール兄弟に今井裕がゲストという特別なイベントである。大阪は今井の地元であり、いまも大阪で暮らしている。
二人パール兄弟は2019年に同名義で『DELAY』というパール兄弟の楽曲をサエキの歌と窪田のギターで再現するカヴァーアルバムをリリースしているが、生『DELAY』という感じで「馬のように」や「TRON 岬」、「貝殻のドライブ」、「青いキングダム」、「100度目のBye Bye」、「色以下」……など、新旧の名曲を披露。同時に「MAGネティック」や「君と映画」、「RUN-NEWバックステージ 」、「夜間押しボタン式」など、新曲もお披露目する。全曲、サエキの歌に窪田のギターでパール兄弟の世界を二人パール兄弟として再現。ところどころで松永俊弥のドラムやパーカッションのループが使用されるのみ。当然、不足感はない。音の隙間を巧みに埋めつつ、いい意味での“間”がある。流石、名手の誉れ、手練れのサエキけんぞうと窪田晴男だろう。
彼らの演奏を聴いていて、改めて感じるのはベテランのゆとりや落ち着きではなく、まるで栄光のゴールを目指して突き進む新人バンドのような勢いである。その加速していく演奏と歌は聞くものをまるでジェットコースターへ二人とともに乗り込んだ(放り込まれた)かのようだ。スリルとサスペンス(!?)もある、素敵な同行二人だろう。パール兄弟とともにロックンロールの旅を楽しむ、そんな感じではないだろうか。それには理由がある。サエキは数年前から2026年のデビュー40周年を迎えるにあたり、渋谷公会堂(現在はLINECUBE SHIBUYA)でコンサートを開催することを“宣言”して、同時にそのための準備を着々と始めている。サエキは王国へのロード(KINGDUM ROAD)というらしいが、目的のあることの素晴らしさだろう。目標に向かって突き進む。その姿は限りなく、美しい。観客はそんな彼らをとことん応援したい。会場の不思議な一体感はその表れではないだろうか。
この日のライブ、午後7時15分の二人パール兄弟の登場から1時間30分近く一気に飛ばしている。二人のパール兄弟は「夜間押しボタン式」を演奏し終えた8時40分、漸くこの日のゲストである今井裕を呼び出し、彼がステージに登場する。お待たせしました。お待たせ過ぎたかもしれません(昨日、限定配信でSuchmosの2019年9月8日の横浜スタジアムのライブを見ていたらYONCEも同じ台詞<!?>を言っていた)。
今井は“当時のロックンロールスーツを着ていくから楽しみに!”というお約束通り、ロックンロールスーツを纏って登場。John Lydonと同じイタリア製生地の1950風ロカビリー・セットアップらしい。ロックンローラー、今井がステージに現れる。このところ、7月12日(金)に渋谷 「duo MUSIC EXCHANGE 」で開催された千年COMETS の「千年COMETS 復活祭 第一章 ORGANIZED By SNARE COVER」へ彼らのアルバム『the edge』のプロデューサーとして、ゲスト出演するなど、東京でも演奏する機会はあったが、地元・大阪でミカバンドの曲をカヴァー、それも二人パール兄弟との共演である。そうあることではないだろう。この企みの契機はサエキけんぞうが6月20 日(木)に渋谷「LOFT9 Shibuya」で開催したサエキけんぞうのコアトークvol.104 サディスティック・ミカ・バンドの全て」に今井が小原礼や松山猛などと出演したこと。その座組はサディスティック・ミカ・バンドの“再結成”でもある。そして大阪公演が決まり、その際に今井裕へ声を掛ける。コアトークからの流れから当然のことかもしれないが、素晴らしい思い付きである。サエキのプロデュース力に脱帽である。サエキは私達の夢や希望を叶えてくれる。
今井によるとファーストアルバムは“小原からレコーディングしているから遊びに来てよ”と言われて、スタジオへ行くと、既にMINI MOOGやARP ODYSSEYなど、キーボードが用意されていて、“ちょっと、やってみて”と言われ、そのままレコーディングに参加することになったそうだ。
サエキはファーストアルバムには“今井さんのスーパーシンセサイザーがいっぱい入っている”という。
今井は“当時はスモールフェイス、ニッキー・ホプキンス、レオン・ラッセルに凝っていて、彼らみたいなことをやってみた”らしい。サエキは“加藤はグラムにはストーンズとフェイセスの要素が必要だ”と指摘していたという。そんなグルーブを出せる元祖ローリングピアノマンが今井裕だったのだ。
まるで6月の“サエキけんぞうのコアトーク”の続きのようだが、演奏以前に話を聞くだけでも貴重。やはり、現場にいたものの言葉はリアルである。サエキはコーラスを観客にしてもらうため、歌詞カードを用意して、配布している。まさか、自分も参加するとは思ってなかったかもしれないが、2024年の初期の名曲の再現には観客の声も必要だったのだろう。
二人パール兄弟+今井裕という“バンドは”「影絵小屋」を演奏する。グラムなブギーサウンドが鳴り響き、グラム感が醸し出される。今井のグラマラスなキーボードが先導していく。サエキのグラムロックへの深い理解と愛情、窪田のグラムギタリストとしての天賦の才能があってこその艶やかさだ。彼らは2024年のグラムロックを奏で、堪能させてくれる。
同曲を終えると、サエキが“亡き姉に捧げます”と告げ、“金牛座流星群に歌いつがれた恋歌”というサブタイトルがついた「シトロン・ガール」を演奏する。サエキは北國新聞のインタビューで「音楽へのめざめはフォークル(ザ・フォーク・クルセダーズ)なんです。兄と姉と3人でお金を出し合ってアルバム『紀元貮千年』を買ったんですね。それが最初です」と語っている。フォークルはサエキの原点、そこには姉や兄の存在は欠かせない。加藤がフォークル後に結成したミカ・バンドの初期の名曲をレコーディングに参加した今井裕と演奏する。それは感慨深いものもあったのではないだろうか。キラキラしつつもドリーミーな名曲が大阪の街に鳴り響く。改めて貴重な機会といっていいだろう。
サエキは観客へ“コーラスを最初からやっていただければ”と語り、グラムなダンスチューン(!?)「ダンス・ハ・スンダ!」を披露する。今井のピアノも気持ちよく転がる。このイケイケ感はなんだろうか。大阪と言えば、岸和田のだんじりだろう。街中を山車が疾走していく、そんな勢いだ。祝祭空間が大阪の下町・福島に出現する。会場も煽られ、乗り乗りになる。
圧巻にして爽快なミカ・バンドの初期名曲の再現。同セッションだけで終わるかと思ったら3人でパール兄弟の初期の名曲「快楽の季節」を演奏する。サエキから“追加で「快楽の季節」なんかもできませんか?”という申し入れがあったそうだ。今井は後日、“ライヴアレンジが浮かんできて、XTCのような過激なギターを弾いて欲しいと伝えた♪_「快楽の季節」後半部では独断でアバンギャルドなコードをつけ、窪田さんに書き付けわたしましてムチャ振り、これやってと。窪田くんのギター、二回ほど合わせただけでまさにイメージしていた通り。エッジが立っていてオシャレ。時がたって立派におなりになった。サエキくんのプロデュースセンスの鋭さ。それぞれに発見があった特別な夜。続けていけるようこころします”と、。自らのSNSで書いている。
今井はこのために難解なコード譜を書き、それを見事に窪田は弾きこなし、サエキは見事に歌いきった。会場は演奏者も観客も“気持ちいいね 俺たち”状態。まさか、パール兄弟の曲を一緒にやるとは思ってなかったが、このサエキの思い付きも見事。1986年の名曲が今井裕のキーボードを加え、2024年の名曲として蘇る。
午後9時20分、興奮と歓喜のステージを終え、3人はステージから消える。わずか、4曲ながらロックンロールピアノの楽しさとロックピアニスト、今井の実力を思う存分に見せつけるセッションだったのではないだろうか。
アンコールを求める拍手と歓声はやまず、二人パール兄弟が戻って来る。二人は矢代や歯科医の友人の逝去を期に改めて死と向かいあうようになったというが、亡き友達を思い、作った新曲「僕らはここにいる」(昨2023年9月30日<土>に東京・原宿「クロコダイル」で行われた『パール兄弟・結成40周年 〜ありがとう、ヤッシー〜』でも演奏された)を彼らを思い、演奏し、観客へ届ける。
しんみり、じんわりとしつつも名曲「「バカヤロウは愛の言葉」で、大阪公演を締める。東京ではなく、大阪で“バカヤロウ”は“アホ”とは違い、きつい言葉かもしれないが、ファンはわかっているのか、それともM気質なのか、嬉しそうに反応していく。
この日のステージは9時35分に大団円を迎え、最後はBGMとして「タイムマシンにおねがい」が流れる。わずか、2時間30分ほどの“時間旅行”かもしれないが、3人はこの日、は私達に夢と希望と見せてくれ、歓喜と至福を与えてくれた。やはり、行くべきライブだったことを再確認する。同時にもっと多くの方に見てもらいたいと感じた。是非、東京以外でも“タイムマシンツアー”(!?)を開催して欲しい。
サエキけんぞうによると“二人パール兄弟は、これから四人パール兄弟に変身し<合体ロボのようですね>、11月27日渋谷クアトロに降臨します。次は渋谷でお会いしましょう! 応援よろしくお願いします!!”と、SNSで告知している。渋谷公会堂への王国ロードの道中、いろんな仲間との出会いもありそうだ。
今井はこの日のライブに刺激を受けたのか、終演後、また、ライブをしたいと語ってくれた。実際に日程や場所などは未定で、ソロか、バンドか、どんな形での開催になるか、わからないが、一日も早く見たいもの。皆様の声援が頼りである。SNSなどで、世界は待っていることを書き込んでもらいたい。今井は1970年、谷村新司率いるロック・キャンディーズにウッドベースとキーボードで参加している。来年、2025年は芸能生活55年になる。まさに“GO GO IMAI!”。何かをするにはいい区切りの年になるのではないだろうか。
きっと、キャプテン・ヒロ & ザ・スペース・バンド、サディステック・ミカ・バンド、サディステックス、イミテーションなどのメンバーとして、クリス・モスデルや片岡鶴太郎、トゥマニ・ジヤバティ、ザ・ブルーハーツ、ザ・ストリートスライダーズ、ZABADAK、及川光博、RAZZ MA TAZZ、MOON CHILD、リクオなどのプロデューサーとして活躍してきた今井のキャリアを睥睨するようなライブも皆様も見たいはず。期待しかない。
10-4大阪サードストーンSETLIST
1,エレクトリック・ウェイヴ
2,火の玉ボール
3,馬のように
4,TRON 岬
5, MAG ネティック
6,君と映画
7,貝殻のドライブ
8,青いキングダム
9,100 度目の ByeBye
10,RUN-NEWバックステージ
11,色以下
12,夜間押しボタン式
今井裕さん↓
13,影絵小屋
14,シトロン・ガール
15,ダンス・ハ・スンダ !
16,快楽の季節
以下二人 アンコール
・僕らはここにいる
・バカヤロウは愛の言葉
2024.11.27 (水)渋谷CLUB QUATTRO(東京都)
「君の心にRUN-NEW!パール兄弟2024」
パール兄弟(サエキけんぞう、窪田晴男、バカボン鈴木、松永俊弥)
ゲスト:いまみちともたか)
会場 渋谷クラブクアトロ 渋谷CLUB QUATTRO(東京都)
開場/開演 18:00 / 19:00
料金 前売 一般¥6,500 / スペシャルシート(16席限定・指定席)¥8,500 / 学割¥2,500 / 当日 一般¥7,500
※スペシャルシート(16席限定)はQUATTRO WEB先行でのみ販売
※学割チケットはクラブクアトロ店頭でのみ販売
ドリンク D別 ※当日入場口にてドリンク代¥600いただきます
一般発売日 2024.09.14 (土)
チケット販売 渋谷クラブクアトロ
お問い合せ 渋谷クラブクアトロ TEL:03-3477-8750
























































