■追悼! 赤城忠治――RECORDING REPORT 30th センチュリーポップを創り出す感光体グループFILMS
この7月はなんという7月だ。既にお知らせしている。7月7日(金)にPANTAが亡くなり、その前日、6日(木)には赤城忠治が亡くなっている。フィルムスやクレバーラビットなどのバンドやプロジェクト、手塚眞監督の『星くず兄弟の伝説』や『星くず兄弟の新たな伝説』、『FANCY DANCE』などの音楽制作、近田春夫やちわきまゆみ、さいとうみわこ、IMITATION、窪田晴男、鈴木早智子(元WINK)などへの楽曲提供で活躍した赤城忠治。その彼が本2023年7月6日(木)に逝去したのだ。
VIVID SOUND CORPORATION NEWSより
https://www.vividsound.co.jp/news/13358/
Macoto Tezka Facebookより
https://www.facebook.com/makoto.tezuka.92/posts/pfbid037hXwqMFFKab9jbAVdLkTtWa2MJkLFe1YjpX8p1dgK1uYbUTBvSSZ9A4F14kTpeCLl
彼が世に出る契機となったフィルムスは、1980年4月、私が編集に関わった「月刊ロック・ステディ」のバンド・オーディション「ステディ・ロック・ファンクション」に出演、その直後にザ・ルースターズやSKINなどとともにメジャー・デビューを飾っている。そんな縁もあって、彼には何度も取材している。実は「VAT69」時代のステージも渋谷「屋根裏」で見ている。火を噴いたが、失敗したような気がする(この辺は記憶が曖昧だ)。
フィルムス以外では、私もコーディネイターとして関わった今井裕がプロデュースしている片岡鶴太郎のアルバム『キスヲ、モットキスヲ…』(1982年)に楽曲提供してもらった。同アルバムのプロモ―ションのためにプレスリリースを作成したが、今井裕のミカ・バンド、サディステックス時代の盟友、後藤次利にもコメントをもらったが、内容そのものより、赤城忠治のメロディーメーカーとしての才能を絶賛していたことを覚えている。
フィルムスがアルファのYENレーベルからデビュー直前だった時期もあったが、その一部を聞かせてもらったが、いまも愛聴テープ。ただ、テープが伸びたり、絡まるのが怖くて、なかなか、聞けなかった。
一時、理由があって、彼は音楽界を辞して、タクシー運転手をしていたこともあったが、偶然、乃木坂でタクシーをつかまえたら彼が運転する車で渋谷まで送ってくれたこともあった。
近年は手塚眞の『星くず兄弟の新たな伝説』の公開に際して、代官山「晴れたら空に豆まいて」で開催されたシリーズイベント“星くずサロン”で、彼とは何度か、会っている。自分のブログでもその模様を紹介したことがある。
先日、PANTAの追悼文にPANTA&HAL時代の2枚組ライヴアルバム『TKOナイト・ライト』(1980年)のRECORDING REPORTを転載したが、偶然の一致だろうか、同記事を掲載した「月刊ロック・ステディ」の1980年12月号にはフィルムスのデビューアルバム『MISPRINT』(1980年)のRECORDING REPORTが掲載されていた。同リポートを書いたのはフィルムスのキーボードだった岩崎工。フィルムス後はTPOを結成、TAKUMI名義でアルバムのリリース、現在はCMやドラマ音楽の制作とともに、プロデューサー、ソロアーティストとして活躍する彼と早速、連絡を取り、転載の許諾を打診した。40年ぶりくらいになるが、いきなりの連絡にも関わらず、快諾してくれた。彼は転載を喜んでくれた。岩崎工は赤城忠治について“私は元気にやってます。2013年〜2018年くらいは、自分もソロのライブをやっていた期間があり、一度はチュージもゲスト出演してくれていました。若い頃の細かい事は忘れて、昔ながらの同志? 遊び仲間? という付き合いでした。つかみどころの無いカンジのふわふわしたキャラが不思議なヤツでしたが、憎めない男で。”というメッセージを加えてくれた。
レコーディングは西永福のレコ―ディングスタジオ「スターシップ・スタジオ」で行われた。このリポートはその場に実際にいて、レコーディングへ参加している岩崎工が書いてくれたもの。当時の使用器材のことなども詳しく紹介されている。フィルムスサウンドの秘密の一端が明かされている。これを読まれる方には40数年を経て、初めて知る事実も多いのではないだろうか。多分、赤城忠治に聞いてもここまでの情報は出ないはず。本記事を赤城忠治さんに捧げるとともに、改めて転載を快諾いただけた岩崎工さんに深い感謝を申し上げる。赤城忠治の音は少し努力すれば聞けないことはない。数多のアルバムがリイシューされている。できれば未発表曲を含む、ベストアルバム(田中雄二さんがフィルムスの未発表音源を含む、編集盤を監修するものの、発売されなかったものもあるらしい)の正式なリリースやトリビュートアルバムなどが出ることを祈る。赤城忠治という稀有の才能は忘れてはならない。
RECORDING REPORT
30thセンチュリーポップを創り出す
感光体グループ
FILMS
文:岩崎 工
4月1日原宿ラフォーレ プラザで行なわれた本誌主催の《ステディロック ファン クション Vol.1 》に出場したフィルムスが日本コロムビアより11月にデビューするということは前号でお伝えしたが、ついにそのデビューアルバムのレコーディングが完了した。 8月18日、(西永福の)スターシップ・スタジオに入ったフィルムスは、23日にリズム録りを完了。 翌日から、ギターのかぶせとキーボードのダビングを行ない、26日に完了させた。 一週間の休憩後、歌入れを開始。その後、トラック・ダウンを9月19日から4日間で行ない、 ついに23日、レコーディングを完了させた。いよいよ彼らのシングル 「T.V.Phone Age"」は 11月1日、アルバム 『ミスプリント』は11月25日に発表される。
「未来社会における人間の生き方」をテーマ に、音楽と20世紀のテクノロジーで表現する感光体グループ、フィルムス。そのレコーディングの模様を同バンドのキーボードであり、 音楽文章家でもある岩崎工くんにリポートしてもらった。
8月18日、スタジオの天井は鏡張りだった。
ウレシクなった。その中にノスタルジックな20世紀が見えたからだ。みんな幸わせそうだった。ふと一人の子供がこちらを向いて、笑いながらつぶやく。
「僕ってだれ?」
レコーディングは、一般的慣習に従ってリ ズム録りから始まった。今回の曲は大きく分けて2つのプロセスを経て録音された。その 2つとは、ドラムを基本にするか、シンセサイザーによるリズムを基本にするかという2者である。曲目で言うなら、前者は、「30th Century Boy」、「Clash Kids」、「Radio Zone」、「Remote Control Romance」の4曲であり、 後者は、「Welcome to the Future」、「Computorの夢」、「Glad I'm not Left Alone」、「T.V. phone Age」、「Take me on the Linear Jet」の5曲である。前者のドラムセットを使う方は、要するに普通のバンドがやるやり方で、ドラム、ベース、ギターあたりのリズムを録っていき、キーボード、シンセ類と続き、ヴォーカル、コーラス、エフェクト処理という具合に進めていくのだ。但し、今回は、いわゆる妙にまるい音になる事を恐れたため、スタジオ・ライヴ的に録った。例えば、一番ラジカルな 「Clash Kids」などは、最初から 8人全員が加わった。ドラムやベース、ギターのノリを引出す事が目的なので、その他のパートは後で録り直すことになる。生のドラム(変な表現だが、アコースティック・ドラムという意味)を中心とした4曲はだいたいこういう方法でリズムが作られていった。
もう一方の、シンセ・リズムの5曲だが、 ここでは今回のゲストアーティストの中でもVIP的存在の本間柑治氏の登場となる。彼は、シンセ・ソロ・アルバム 『You See I』を昨年リリースした、シンセサイザーのスペシャリストである。 Filmsのアルバムの中では、シンセによるリズム・セクション作りと、効果音などサウンド面のアートディレクションを担当してくれた。シンセサイザーで、 バス・ドラム スネア、ハイハット、タム類の音を作った曲は、前にも述べた5曲だが、 これらリズムを一手に引受けてコントロールするのはローランドのMC-8である。
ちなみに本間氏が持込んだ主な器材は、次の様なものだ。ローランドMC-8、system700、 system 100M、ムーグ system15、 ムーグヴォコーダー、ミニ・ムーグ・・・・・・。 この中で、 リズム作りの中心となったのは、MC-8とsystem700 そしてムーグ system15である。打楽器類の音源としては、 system700が大部分 で、ムーグのフィルター群がその加工に一役買う。そして演奏者の役割に相当するのがM C-8である。こちらの作業も、人間の奏者と同じように、 曲を憶える事から始める。つまりMC-8へのデータの打込みである。 これが仲々、根気の要る仕事だ。コンピューターを使うということは、常にその人間の能力が試されているという事に他ならないからだ。
もちろんこういう役は本間氏に任かせてしまう。スタジオ内では、音を録音するだけなの で、このデータの打込みは本間氏自身のオフィスで前もって行なわれたわけだ。実に孤独 な作業である。こうして作られたデータをもとにシンセで打楽器とベース音、そして「Take Me~」などのアルペジオ音などが出来上っていく。これをベーシックなものとしてサウン ドを組立ていくのだから、その重要性も容易に想像出来ると思う。
こうして全9曲のリズム録りが完了したのが、レコーディング開始後5日目の8月23日。 1日4~5時間なので快調なペースと言える。 翌日から、ギターのかぶせとキーボード類の ダビングに入る。ギターは、リズム録り、かぶせ、共にフェンダーのストラトが中心で、 アンプの音をマイクで拾う方法と、 ライン録音を併用した。当然、音色も色々である。いくらシンセが発達したとはいっても、今のところギターの威力は大きい。リズム・ギターのツクックという空ピック音とか、ディストーション・ギターのず太い音色、アコースティック・ギターの繊細なキラメキ等、シンセで では表現出来ない説得力がある。
ストラトには、コンプレッサー、ディストーション、ファズ、コーラス、フランジャー、 フェイザーetc、 あらゆるエフェクターを使用した。 特に 「Clash Kids」でのガリガリ・ ギターは、苦労した。ミキサーの鈴木(恵三)氏とタ一坊(橋本忠男)をさんざん悩ました末に最高の音になった。 アコースティック・ギターも「Radio Zone」、「Glad I'm~」などで、かなり前面に出しているが、これは、マーチンとオベーションのものだ。さすがに良く、あまり手を加える必要がないほどだった。が、 MC-8という機械的なビートにギターのリズムを合わせるにはある程度の慣れが必要だと痛感した。
基本的なリズム・セクションを録り終えた後の作業は、主となるメロディー、リフを入 れる事だが、ここではシンセの比重が非常に大きい。まず使用器材最も活躍したのは、Korg PS-3200とローランドのJP-4である。この両器種ともプログラマーが内臓されており、音は前もって仕込んでおいたので 録音はスムーズに運んだ。両者の特徴は、コルグは厚い音が得意で、JP-4はシャープな音色を得意としていると言える。「30th Century boy」の前奏は、オーケストラ風にアレンジしたが、コルグとローランドのVP-330 のストリングス音だ。ここでもそうだが、メロディーは、やはりミニ・ムーグに落ちつく場合が多い。同じくローランドのSH-1もメロディー部分の演奏に多く使った。コストの割にとても便利である。
ローランドのJP-4は、コード音の8分 音符のキザミにも多く使用したが、「Take me on the Linear Jet」の後半のブラス音にその真価を発揮している。実は、ここではオーバーハイムの4 Voice を下地に録音し、厚味を確保した上で、JP-4を入れた。特に、ベンダーで Frequency Modurationをコントロールしているので、トロンボーン風の味が出ていると思う。「Remote Control Romance」でのアコーディオン風のバッキングとソロもJP- 4による。 ちょっとノスタルジックな雰囲気で、気入っている音だ。 同じ曲の、口笛のような音は、SH-1のフィルターのセルフ・ オシレーションを使った。LFOをVCFにかけることによってビブラートを得ている。
シングルカットA面の「T. V. Phone Age」では、テーマはPS3200をオクターブ・ユニゾンで、ホルン風サブ・メロディーはSH-1、 そしてミョワ~ンという個性的な音は JP-4で演っている。 VCFにエンベロープのInverted Outがかけられるとこういう音色が可能だ。ここでも使っているが、ストリングスは、一部を除いてローランドのVP-330 のものだ。 高音域のシャープさは、ソリーナ に較べても遜色がない。
ヴォコーダーは、ムーグのものとローラン ドのVPを使った。「T.V.phone Age」や 「Computor の夢」の様に歌詞をはっきりさせる必要のあるものは、ムーグで周波数を細かくコントロールして使った。音源としては、ミニ・ムーグとJP-4をムーグに接続した。ローランドも独特の味があっておもしろく、 正確にアタックを表現出来るので、かなりの部分に登場している。コード・プレイが中心で、「30th Century Boy」と 「Computorの夢」では、サビ部分でのヴォーカルのバックに。
また、「30th~」や「Radio Zone」のコーラス部では、このVPのヴォコーダーもミックスしている。
話が前後するが、リズム録りの時にAco.ピアノで録ったのは 「Remote Cortrol Romance」のみで、他にピアノを使ったのは「Computorの夢」と、ローズを「30th~」の間奏部で使ったのみである。 スターシップのグランドは、 Keyが重く、少々とまどったが、気持よくプレイ出来た。やはり本物のグランドピアノ には捨てがたい魅力がある。
こうして効果音を除くシンセ類、キーボー ド類の録音をほぼ終えたのが、8月26日。ここで、歌入れの前に、一週間ほどのブレイクとなる。一度頭を冷やして、それまでのサウンドをチェックしようというわけだ。一つ書きわすれたが、シンセベースを手で弾いた曲がいくつかあるが、そのパートはほとんどベーシストの中ちゃん(中原信雄)が演っている。彼はキーボードの腕も仲々で、 ジェネシス位こなしてしまう。
一週間の中休みの後、レコーディングを再開した。それまでのトラックを検討した結果、 若干の修正と、追加をすることになった。 これに9月2日からの3日間があてられた。
9月5日からはいよいよチュージのヴォーカルに入った。曲目によっての効果を考えて 色々なイコライジングやエフェクトを試行錯誤するために、やや時間がかかる。曲想で必要と思われる部分は、ダブルトラックにすることになり、さらにコーラス・アンサンブルやMXRのピッチシフターも効果的に使用された。 「Clash Kids」は全ての点で、満足のいく出来となった。リード・ヴォーカル に前後してコーラスも録られた。「Take Me ~」はヨーコのリードだが、他の曲では彼女とアキ、そしてのぶちん(後藤信夫)のコーラスが活きている。 コーラスが入ってくると、ぐっとFilms らしさが出てくる。
最後に少しドラムについて触れよう。シンセリズムを中心に構成したら曲には、生のシンバルを久下がダビングした。 他にウィンド・チャイム、トライアングル、スネアも適所に重ねた。
トラックダウンは、さらに一週間後の19日から4日間行なわれ、最終的なサウンド作りが慎重に進められた。こうして正味23日間のレコーディングは無事終了したわけだが、コミュニケーションがよくとれたせいか、楽しんで演れたようだ。 このレコーディングをサポートしてくれた全てのスタッフに感謝しつつ、このレポートを終わりたい。
(左<上段>ページキャプション)
◀フィルムスのリーダーでヴォーカル担当の赤城忠治。
コーラスの小島洋子と木内アキ
▼MC-8 を始めとする器材を繰つり、フィルムスのサウンド固めをサポートした本間エキスプレスの本間柑治。
▼スティック片手にポーズをとるのはドラムスの久下よしお。
(右<下段>ページキャプション)
リズム録りに活躍したマイクロコンピューター、ローランドのMC-8。
岩崎君使用のオーバーハイム4 Voice シンセサイザー。
コルグのポリフォニック・シンセサイザー、 PS-3200。
ムーグのヴォコーダー plus (上)。 下のボックスにはローランドのコーラス・エコーSRE- 555がセットされている。
ローランドのSH-1(左)とSYSTEM100M。
ギターの橋本君が使っているエフェクター類。
▼ギターの橋本忠男。 フェンダーのストラト キャスター使用。
▼フェンダーのフレットレスベースを弾くのは中原信雄。
▼キーボード、シンセサイザーは岩崎工(左)。 右はギターとキーボード担当の後藤信夫。
NEONTETORA 赤城忠治プロフィール
http://www.neontetra.co.jp/artist/akagi.html
岩崎 工オフィシャルサイト
「Let’s Go Steady――Jポップス黄金時代」
80年代の夢や希望をたっぷり詰め込んだ「星くず兄弟の"新たな"伝説」ーー星くずサロンVol.8
https://ameblo.jp/letsgosteady/entry-12207020126.html
煌びやかな未来をMISPRINTするFILMS「星くずサロン★SPECIAL」
https://ameblo.jp/letsgosteady/entry-12444293796.html






