生存のための雑食音楽は苦からずソウルフラワーユニオン『エヴァーラスティングツアー 202206』 | Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

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■朗報! ソウル・フラワー・ユニオンの東京公演のアーカイブ視聴期間が7月6日、23:59まで延長になりました。今回のKDDIの通信障害に対応するための延長のようです。流石です!

 

 

毎度、掲載が遅くて、申し訳ない。配信が本日、7月4日(月)23:59(販売は本日21:00まで)になってしまったが、ソウル・フラワー・ユニオンの『エヴァーラスティング・ツアー 202206』の東京公演<6月26日(日)duo MUSIC EXCHANGE>を配信で見た。本当はリアルで見たかったが、その日まで予定が確定せず、当日券を買い求めようと思ったいた。ところが、“チケット販売はWEBのみとなります。お電話でのご予約や店頭での直接販売は行いません”になっていた。コロナ禍のための対応だと思うが、迂闊だった。

 

 

ソウル・フラワー・ユニオンというか、中川はこのところ、リクオ絡みで見ている(2020年11月22日(日)京都・磔磔にて開催された『リクオ・デビュー30周年記念シリーズ「HOBO CONNECTION SPECIAL!」』、2022年1月10日(月・祝)大阪・なんばHatchにて開催された〈HOBO CONNECTION FESTIVAL〉、2022年6月4日(土)「コーヒー&カレーの店 月と昴<宮城県 南三陸さんさん商店街内>」にて開催された2022年「うたのありか2022 南三陸編」)。いずれも配信のみで、リアルでは見れていない(申し訳ない)。ソウル・フラワー・ユニオンそのものになると、2015年12月12日(土)恵比寿「LIQUIDROOM」にて開催された「年末ソウルフラワー祭2015」以来となる。長きのご無沙汰、誠に申し訳ない。

 

 

ソウル・フラワー・ユニオンに関しては1989年の結成当初(前身バンドのニューエストモデルやメスカリンドライブなどは生で見ている)や喜納昌吉&チャンプルーズやTHE BOOM、ボ・ガンボスなどと共演した1993年に沖縄で開催された「ニライカナイ祭り」も見ている。それ以来、折々に聞いてきたつもりだ。その後、“1.17”(1995年)「阪神淡路大震災」、“3.11”(2011年)「東日本大震災」があった。1996年には「満月の夕」が生まれている。彼らのアルバムのリリース毎にくまなく聞くような熱心な聞き手ではなかったが、それでもその歌に引き込まれていた。

 

また、高木克が2009年2月のレコーディングからソウル・フラワー・ユニオンに加入したことも親近感を抱かせくれた。以前も触れたが、彼はシェイディ・ドールズのメンバーで、私自身、シェイディは度々、取材している。1987年にリリースされたセカンドアルバム『BLOW YOUR MIND』のロンドンレコーディングにも同行している。さらに中川が彼を紹介するときに“バッドボーイズロック”と囃し立てているが、その言葉の誕生にも多少なりとも関わっている。実はワーナーのディレクターで当時、ガンズ・アンド・ローゼスを担当していた佐藤淳さんと企み、ガンズやモトリー・クルー、ハノイロックスとともに日本のZIGGYやGDフリッカーズ、ジュンスカなどを結び付け、その総称として、「バッドボーイズロック」と名付けた。いわゆるロックの不良性やグラマラスな魅力を際立たせるためだが、HIPHOPなどで使用されていたB-BOYのロック的展開である。多分、“バンやろ”以前の某宝島で初お目見えしたはず。その流れにシェイディ・ドールズに巻き込まれてしまった。そんなこともあって、バンド解散後もその行く末が気になっていた。余計なおせっかいかもしれないが、ちょっとした親戚気分でもあった。2017年に彼がリクオのHOBO HOUSE BANDに参加したのも大きかった。彼に関しては知り合いがカメラとデザインを担当していた関係で、コロナ禍の前から見ていた。高木克と久々に会ったのもリクオのライブだったと思うが、その辺の記憶は曖昧だ。

 

 

ソウル・フラワー・ユニオンといえば、親戚の子のいるバンドとして、身近感が幾重にも増していた。私の単なる思い込みだが、ある意味、“アレルギー”が薄まったところでの“再会”になる。

 

改めて、この配信映像を見る。すんなりと嵌り、胸熱く、心震えるものがあったのだ。セットリストなど、以下のオフィシャルで公開しているので、確認いただきたい。

 

 

私自身、生粋の東京人、いわゆる関西人の乗りは苦手である。ところが関西のお笑い芸人の活躍で免疫がついたのかもしれない。JRの山手線などで、大声で叫ばれる大阪弁は耳を塞ぎたくなるが、テレビやラジオなどでオンエアーされるものに関してはアレルギーが解消されてきた。また、中川の物言いもリクオとのやり取りで慣れてきて、むしろ、心地良く感じるようになった。バンドそのものも中川敬が兵庫、奥野真哉が大阪、伊丹英子が三重だが、高木克が東京、阿部光一郎が福島、Jah-Rahが島根と、徐々に関西色が薄まってきた。(関西の人、御免なさい!)。中川が敬愛し、常にMCで言及される阪神に関しては“バース、掛布、岡田の時代”は私自身もわくわくしたものだし、それ以前、江夏が阪神にいて王や長嶋に立ち向かう姿は大好きだった。江夏が投げる時は辻恭彦(ダンプの辻)で、辻佳紀(ひげの辻)は捕手を務めていなかったが、後楽園球場(東京ドームではない!)の巨人・阪神戦を見に行き、ひげの辻と、声をかけたら振り返り、微笑んでくれたことをいまだに覚えている。勿論、“タブチくん”も好きだった。その当時、どうして阪神が好きだったかは、たぶん、常勝・巨人、王者・巨人に立ち向かい、挑み続ける永遠の二番手(ライバル?)という阪神の立ち位置、体制や大勢に抗う姿勢が好きだったのだろう。

 

ソウル・フラワー・ユニオンというと、その雑食性が魅力でもある。アイルランドやアボリジニ、アイヌ……など、世界のフォークロアと深いところで繋がり、独自の音楽を紡ぐ。彼らが喜納昌吉にシンパシーを抱くのも必然と感じた。そこで生まれた奇想に溢れ、人の心を幻惑する歌や歌に引き込まれる。

 

しかし、それが時に学習的に感じていたのも確かである。いまにして思えば単なる思い込みだったのかもしれないが、すごく頭でっかちなものに思えた。ワールドミュージック的なものに関わり、それを取り込むことは搾取(文化的侵略などと言ったら大袈裟過ぎるか)などとも関わる。当時、ピーター・ガブリエルは許せてもポール・サイモンは許せないなんていう、いまにして思えば、バカな思い込みもあった。そんなつまらない誤解やこだわりが苦手意識みたいなものを生んでいたのかもしれないが、いまのソウル・フラワー・ユニオンに対しては、そんな色眼鏡で見ることはなくなった。この日もポーグスの「ターキッシュ・ソング・オブ・ダムド」をカヴァーしているが、普通に“ええ曲”(中川談)として聞ける。また、中川の高木や奥野へのいじりも微笑ましく、聞こえる。特に奥野への布袋いじり(奥野は井上富雄や古田たかしなどともに布袋寅泰のバッキングを務めている)も皮肉と哀愁があり、クスっとさせられる。中川と奥野の“漫談”を思い切り、楽しんでいる自分がいた。

 

勝手な思い込みだが、彼らはソウル・フラワー・モノノケ・サミットなどで、何年も被災地の避難所、PAや照明のないようなところで、歌や音を届ける作業をしてきた。そんな場所では付け焼刃の音楽などは何の効力もない。いかに聞き手の心と身体へその思いを届けるかだ。そんな旅の成果が不思議と歌や音に地力をつけ、曲の基礎体力、体幹を上げていく。

 

旅の中で出会った民謡や音頭を自分のものにしたことも大きいのではないだろうか。秋田音頭や沖縄の民謡なども形式だけの剽窃などではなく、自然に取り入れ、ソウル・フラワー・ユニオンのものにしている。生命力などというと、大袈裟な表現かもしれないが、生きるために必要な音楽ではないだろうか。少なくと、いまの私には彼らの音楽が必要だ。音楽はいろんな力があり、いろんな作用がある。

 

いまは、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻など、様々な問題が渦巻き、いま何をすべきか、安易には回答は出せない。しかし、少しでも前向きに生きようとする時、彼らの音楽が肩を抱き、背中を押してくれる。

 

おそらく、誤解や思いこみから聞かず嫌いの方もいるかもしれないが、しかし、そんな“偏見”を捨て、ソウル・フラワー・ユニオンの音楽と向き合うことをお勧めする。きっと、何かを見つけ出すはずだ。いま、彼らの音楽を聞くこと、それは生きるためと、大風呂敷を拡げたくなるというもの。

 

その旺盛で生命力の溢れる音の奔流に巻き込まれてみるべきではないだろうか。ある種、祭りの興奮と熱狂の果てに豊穣な実りがある。それを体感すべきだ。ソウル・フラワー・ユニオンを聞くことは「神頼みより安上がり」なんていう歌もある。次回はちゃんと、生で見ることにする。9月には東京でもライブがあるらしい。

 

配信に間に合わなかった方は、次の機会は逃さないようにしていただきたい。このところ、彼らなりのベストを更新続けているようだ。

 

 

 

【有料配信】

OPEN 17:00 / START 17:30

視聴チケット販売期間 : 4月27日(水)15:00~7月4日(月) 21:00

視聴券購入URL: https://eplus.jp/sf/detail/0005390001?P6=001&P1=0402&P59=1

 

 

視聴チケット:3,500円

視聴チケット+サポート1000:4,500円

視聴チケット+サポート2000:5,500円

配信は「Streaming+」にて行います。

◆アーカイブ期間:7月4日(月)23:59まで

 

 

 

ソウル・フラワー・ユニオン

6/26 渋谷DUO

SET LIST

https://twitter.com/soulflowerunion/status/1542496457818722304?s=21&t=hp2lr09fNizxcUp1pE1JJg