瓦礫の中のGolden ringー下村誠 SONG LIVE『BOUND FOR GLORY 』 | Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

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Jポップスの黄金時代は80年代から始まった。

そんな時代を活写した幻の音楽雑誌『MUSIC STEADY』をネットで再現します。

下村誠という音楽ライターがいた。佐野元春の音楽を聴いている方なら、佐野の評伝『路上のイノセンスEARLY TIMES OF MOTIHARU SANO』(JICC出版)の著者としてご存知かもしれない。佐野元春の「ロックンロール・ナイト」や「ハッピーマン」、「So Young」などのレコーディングにもコーラスとして参加している。彼は音楽ライターとして活躍する以前からミュージシャンとして活動。佐野とも1980年3月にシングル「アンジェリーナ」でEPIC・ソニーからデビューする前に出会い、交流をしている。

 

私自身は下村誠というと、出会った当初はフォーク雑誌「新譜ジャーナル」で執筆していたライターというイメージが強く、ミュージシャンという認識はなかった。彼に原稿を頼むことがあっても彼の音楽を積極的に聞こうとは思わなかったのだ。失礼な言い方だが、仕事の片手間に音楽をしているという認識だった。

 

そんな彼の音楽に触れたのは1982年9月27日、東京・吉祥寺のライブハウス「のろ」で開催されたイベント『パンキー・レゲエ・パーティー』だった。下村誠率いるバナナブルーの他、友部正人、佐野元春、伊藤銀次、コールドスウェット、スペシャルサンクスなどが出演。当時、下村は同イベントについて「最近はミュージシャンが主導のコンサートがあまりないし、自分達で何かを作り上げていくものがなくなってきた」と語っている。彼にとって同イベントは“ミュージシャンが本当にやりたい人とジョイントするというミュージシャンの<意志>を反映し、かつ、マスを対象にするものではなく、ストリート・レベルでのコミュニケーションを展開するための実験”だった。そのイベントの模様を私が関わった雑誌で簡単に紹介しているが、“この日、佐野元春はアコースティック・ギターで『Rock&Roll Night』を歌った。佐野元春が<たどりつきたい>という地にほんのわずかだが、近づいたような気がする”と書いている。下村誠の音楽については詳述していないが、彼とはそんな“触媒”のようなミュージシャンだったのではないだろうか。

 

 

下村誠は2006年12月6日の夜、当時住んでいた長野にて火事のため死去している。享年51(1954年12月12日生まれ~2006年12月6日没)だった。その数年前まで、彼とは携帯電話(当時はスマートフォンではなく、いわゆるガラケー)で原稿を書いて、それをパソコンへ送ってもらうというやりとりをしていただけにあまりにも突然で驚いたことを覚えている。

 

 

彼のことは記憶の彼方にあったが、それから10年近く経って、思わぬところで、“再会”することになった。2013年9月21日、東京・下北沢のライブハウス「ラグーナ」で、ギンズバーグやケルアックなど、ビート・ジェネレーションの洗礼を受けた“若者”が主催するポエトリー・リーディングとアコーステック・ライブのイベント『NAKED SONGS』に彼は“いた”のだ。同イベントは2010年10月16日に第1回が池袋のカフェ&バー「POLKA DOTS.」で開催され、2013年9月の同イベントは第5回目だった。元々、同イベントは下村誠が80年代~90年代に行っていたイベントの<意志>を継ぐものだったのだ。

 

彼自身が行ってきたイベントが引き継がれ、彼の歌や詩が歌われ、詠まれていることに改めて驚く。それ以来、『NAKED SONGS』通い(!?)が始まった。今年もこんな状況だが、来月、9月4日(土)に銀座のカフェ「cafe garage Howlin'」で『NAKED SONGS - CROSS, Sings Dylan-』が行われる。

 

その直前、8月28日(土)に開催されたのがザ・スナフキン無料配信ミニライブ「下村誠 SONG LIVE『BOUND FOR GLORY 』」だった。『NAKED SONGS』の主催者、samiこと、Masami Wakamatsuが教えてくれた。イベント『BOUND FOR GLORY』は下村誠のバンド、ザ・スナフキンのメンバーが彼の“SONGS”を歌い継ぐために2017年11月17日に行われた“十三回忌ライブ”を契機に始まったもので、今回が第4回目になるという。

 

『BOUND FOR GLORY』のサイトで改めて知ったのだが、下村誠は1980年に設立した自主レーベル「NATTY RECORDS」から34枚のレコード、CDを発表しているそうだ。文頭に音楽ライターの片手間と書いてしまったが、甚だ失礼な話である。申し訳ない。

 

 

同配信ライブは50分ほどのものだったが、ペダルスティールをフィーチャーしたサウンドは口当たりがよく、どこか夢見心地なサウンドは身体や心に優しい。ビート・ジェネレーション由来の自然観や社会観など、独自の視座も貫かれる。中には“この世の終わりを待ちながら コロナビールで乾杯!”(「虹の箱舟」)なんていう歌詞もある。偶然かもしれないが、まるで予言者か。いずれにしろ、人騒がせな男だ(笑)。

 

私のようなひねくれ者には彼の歌は眩しすぎるところもあるが、ソングライターとしての力量を改めて再確認する。本配信ライブは本日、8月31日(火)までアーカイブ視聴が可能だ。時間がある方は是非、聴いてもらいたい。

 

ちなみに次回の『BOUND FOR GLORY』は今年、2021年12月6日に第5回目を予定しているという。生誕祭を兼ねるようだ。“BEATS GO ON”を体感することができるだろう。

 

 

 

https://www.youtube.com/watch?v=H71fNPqKz-I

 

トレーラー映像公開!下村誠 SONG LIVE 「BOUND FOR GLORY」 vol. 4  無料ミニライブYouTubeプレミア公開! 8月28日(土)21時start  出演ザ・スナフキン - YouTube

 

※無料配信期間は過ぎ、現在は再生不可能ですので、代わりに同ミニライブのトレイラー映像のURLをコピー&ペーストしておきます。ご参考ください。

 

 

BOUND FOR GLORY‐下村誠 SONG LIVE‐

https://13makotoshimomura.jimdofree.com/

 

イベント「NAKED SONGS」 blog

https://ameblo.jp/naked-songs