ヒカシュー、なりやまず――ニューウェイブの現在進行形 | Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

Jポップスの黄金時代は80年代から始まった。

そんな時代を活写した幻の音楽雑誌『MUSIC STEADY』をネットで再現します。

80年前後の日本のパンク、ニューウェイブ、テクノポップなどを改めて聞いている。切っ掛けはNo-Lie Senceのケラが78年、79年、80年の日本のテクノポップ、ニューウェイブを紹介したNHKラジオ『サウンドクリエイターズ・ファイル』( 7月26日、日曜日、午後10:00放送)。テクノポップ御三家(ヒカシュー、プラスチックス、P-MODEL)からLIZARD、81/2、PHEW、突然段ボール、遠藤賢司、ムーンライダーズなどの“代表曲”をかけまくる。滅多に放送されない珠玉のナンバーの目白押しだったのだ。

 

半年ほど前だが、FBのタイムラインで、私がかつて関わっていた幻(笑)の音楽雑誌『ROCK STEADY』 のP-MODEL表紙号(1980年8 月号)が話題になるなど、“来ている感”(!?)はあった。P-MODELに関しては、「FUJI ROCK FESTIVAL'20 LIVE ON YOUTUBE」で、平沢進+会人(EJIN)の昨2019年の驚愕のパフォーマンスが公開され、また、大きな反響を呼んだばかり。

 

同時にSNSではLIZARDのMOMOYOがご意見番よろしく積極的に発言。LIZARDのセカンド・アルバム『バビロン・ロッカー』に収録したエノケン(エンケンではない!)こと、喜劇王・榎本健一の「月光値千金」について言及していた。それもSNS上では話題になっている。私自身も同曲こそ、“東京スカ”の先駆けであると、レスを付けた。

 

個人的には同アルバムは“日本のロック史に残る名盤”という、紋切り型の言葉では語れない。“その後の日本のロックの礎”――多大なる影響を与えた名盤だと思っている。アナログのA面に歌もの、B面にダブものと色分けされているが、その2つの方向性が日本流の「パンクロック」や「ポジパン」などに繋がる。こじつけになるが、彼らの先にブルーハーツやジュンスカ、オートモッド、BUCK-TICKなどを想起することも可能だろう。

 

そんなことを考えていたらヒカシューのメールマガジンに9月4日(金)に東京・吉祥寺の「Star Pine's Cafe 」でワンマン・ライブ『ヒカシューマンスリー9月編~なりやまず』(観客数限定&配信ライブ)の開催が告知されていた。

 

この流れは止めるべきではない。配信で見ることにした。現在のヒカシューは巻上公一(Vo、Theremin、Cor)、三田超人(G)、坂出雅海(B)、佐藤正治(Ds)、清水一登(P、Key)という、いまではお馴染みのラインナップ。敢えて説明しないが、この辺の音楽に詳しい方なら思わず、にやりの曲者揃いだろう。

 

 

ステージに現れた彼らの佇まいもいい意味で変わらない。彼らが登場すると、独特の空気感が会場を満たす(会場にいないので、配信での想像!?)。何か、前衛楽団の実験工房に放り込まれた感じだろうか。テルミンや口琴を駆使しつつ、目まぐるしく変わる音の万華鏡に自由奔放で傍若無人な歌が交錯していく。

 

先日、頭脳警察や汝、我が民に非ズの演奏をフランク・ザッパに例えたが、彼らの演奏にも似たものを感じる。前衛ジャズの風情を醸しつつもどこかポップで牧歌的でもある。遠くの彼方にスパイク・ジョーンズというか、クレイジーキャッツやドリフターズを彷彿させたりもする。巻上の“顔芸”など、“半沢直樹”ばり。流石、地下演劇出身だけある。

 

彼らはデビューから今日まで弛まず活動を続けている。日本国内だけでなく、海外との交流も特筆すべきものがある。その音楽ゆえ、国境を易々と超えていく。ジャズやポップス、パンク、アヴァンギャルド・ミュージック、民族音楽……など、その多面的な音楽のEDGEが共通言語となって、人と人を結び付ける。世界を股にかける音楽旅団、ヒカシューの面目躍如ではないだろうか。

 

 

実際、ヒカシューは1991年の旧東ベルリンでの海外初公演以降、12回の海外ツアーを行い、延べ30都市でライブを行ってきたという。

 

また、この日のライブでも触れられたが、この3月には新型コロナウイルス禍で都市が封鎖される直前、まさにぎりぎりのタイミングでエストニアに向かった。そして、かの地に到着した彼らに待っていたものは……イベントの中止だったが、しかしコンサートの全面禁止が翌日の午前1時からだったため、時間差で演奏可能だったので、集まった観客や音楽家を前に演奏。彼らはただ演奏するだけでなく、映像作品も作り上げたのだ。これまでの海外ツアー映像のダイジェストと2020年3月のエストニアでの映像を織り交ぜたもの。同作品は巻上によると“私たちが失ってはいけないものを考えた”という。“今も、これからも、なりやまず”だそうだ。ある意味、彼らの旅日記とでもいうべきもので、旅芸人の記録といってもいいだろう。即興とソングを自在に使い分け、独自の世界を繰り広げる。海外の人達をも虜にしていく。

 

その映像作品は芸術文化活動支援事業「アートにエールを!東京プロジェクト」に出展。以下にアクセスすると閲覧が可能である。手違いで、同プロジェクト内でヒカシューと検索しても出てこない。この辺のうっかりさが彼らしい(笑)。15分超えの長尺だが、見どころ、聴きどころが多い。じっくりと聞いて欲しい作品だ。

 

ヒカシュー「なりやまず」 東京都 アートにエールを!

https://cheerforart.jp/detail/4083

 

 

このライブそのものも映像作品の一部になり、連なるものかもしれない。デビュー時はニューウェイブやテクノポップなどのレッテルを張られたが、安易な商標登録から易々と抜け出し、名称不明ながらその唯我独尊、前衛無双の存在感に揺るぎはない。かつて、地軸の傾きを自覚させる音楽と言っていたが、そんな言葉を思い出すが、もはや宇宙の歪み、時間のずれを自覚させると言っていいだろう。

 

経験と習熟に裏打ちされた音楽を大胆に壊していく。形無しではなく、型破りである。奇想な思い付きを形にし、その型を破壊していく突飛な発想がある。

 

 

改めて、この日のライブを体験して、ヒカシューの魅力を再確認する。しかし、日本のニューウェイブのしぶとさよ。一瞬に燃え尽き、華々しく散るのがパンクならば、最後の最後まで足掻き、もがき、有終の美などを見せまいと前衛として迂回蛇行しながらも前進し続けるのがニューウェイブか。

 

 

ヒカシューのメールマガジンからはヒカシューのみならず、巻上のソロ活動を含め、続々と新たな活動が発表される。9月16日(水)から20日(日)までは風前の灯から蘇生した即興×アートのフェスティバル「JAZZ ART せんがわ」(主催は巻上公一、坂本弘道、藤原清登という3名のプロデューサーによる自主運営組織)を東京「調布市せんがわ劇場」でコロナ対策により席数限定+配信で開催。同『第13回JAZZ ART せんがわ』にはヒカシュー+梅津和時として出演している。ヒカシューのHPには“メンバーを変えながらも、 即興とソングが共存する方法論で、今なお、独自の活動を続けている。2005年から現在のメンバーとなり活動中。その即興性は魔法の領域にある”と書かれている。その言葉に嘘はない。ヒカシューと梅津のインプロビゼーションはまさにその領域にあると言っていいだろう。

 

 

さらにヒカシューは動き続ける10月には、『熱海未来音楽祭』(同時開催LAND FES)が開催される。同イベントには汝、我が民に非ズの町田康なども出演する。音楽旅団が全国(全世界か)に“フェアグランド・アトラクション”の如く、祭りを催す。

 

http://makigami.com/atamimirai.html

 

彼らの動向に注目だ。彼らのHPを見ると、ヒカシュー自らがいまできることをやろうとしているのがわかる。それにしてもしぶといやつらだ(笑)。

 

 

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http://www.hikashu.com/