クリスマスの贈り物――杉真理ライブ2019『MUSIC LIFE・年末年始特大号』 | Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

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そんな時代を活写した幻の音楽雑誌『MUSIC STEADY』をネットで再現します。

12月。街にはジョン・レノン&ヨーコ・オノの「Happy Xmas (War Is Over)」が流れる。ジョンとヨーコの願いも空しく、いまだに諍いや争いは続く。世界は紛争やテロに溢れている。その日の渋谷はクリスマスの贈り物を買い求めるためだろうか、駅や道のみならず、新たなランドマークとでもいうべき、渋谷の新名所が多くの人達で賑わう。会場へは人の波を掻き分け、進んでいくしかなかった。

 

杉真理のデビュー40周年(本当はデビュー42周年になる)を記念するアルバム『MUSIC LIFE』のライブの締めくくり(!?)杉真理ライブ2019MUSIC LIFE・年末年始特大号』を1214日(土)、東京・渋谷「Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE」で見る。今年、同所で彼を見るのは531日(金)の『杉真理ライブ2019“MUSIC LIFE”』、89日(金)の『杉真理ライブ2019“MORE”MUSIC LIFE』に続いて3回目。また、1027日(日)、東京・六本木「ビルボードライブ東京」での鈴木茂を始めとする“Just 4 Rhythm”とのステージ『杉真理&鈴木茂featuring 中西康晴 岡沢章 島村英二 and 松本圭司』も見ている。年に4回が多いか、少ないか、わからないが、私なりに杉真理のデビュー40周年、2019年の杉まつりを楽しんでいる。

 

驚くのは4回のライブのどれもは選曲やメンバー、内容など、微妙に違うところ。飽きさせるなんていうことは一切、なかった。改めて、杉真理の音楽的な懐の深さ、引き出しの多さを実感。

 

 

「音楽の贈り物」(同曲は杉のファンクラブ用に作られた非売品CD)のSEから始まったこの日のライブはクリスマス・シーズンらしくクリスマス・ライブと言っていいだろう。特にそのように銘打ってはないが、杉流のクリスマス・ソングと、ライブでは演奏されてないレア曲などが彼からの特別なプレゼントの如く、観客へ惜しげもなく披露された。

 

 

「恋の手ほどき(X’mas In Love)」や「Xmas in Hospital」、「はじめてのサンタクロース」、「クリスマスのウェディング」、「Silent Nightをぶっとばせ」、「Love Like a Xmas day」、「靴下の中の僕」などのクリスマス・ソングの大盤振る舞い。そして、「ミュージシャン行進曲」や「恋はボリショイ」などのノベルティソングが披露される。さらに、「僕のPin-up Girl」や「We’re Born to Run(富山県トラック社歌)」などがライブで初めて演奏された。これは杉真理サンタクロースからの素敵なプレゼントとしか、いいようがない。

 

この幅の広さが杉真理流ポップスの真骨頂ではないだろうか。この辺はかの大滝詠一ゆずり。同時に昨今、話題の“シティポップ”はいわゆるバブル期の昭和・平成の風俗・習慣とも切っても切り離せない。煌びやかなクリスマスなど、あの時代の産物だろう。また、リゾートやバカンスなどもあの時代を象徴するものだった。

 

旺盛な創作意欲と膨大な仕事量のため、多種多彩、変幻自在過ぎて、絞りにくいところもある。しかし、40周年を機会に彼の軌跡を改めて振り返ると、ポップスの王道を歩んでいることがわかる。

 

また、“MUSIC  LIFE”のライブ・リポートで度々、触れていることだが、杉真理の平和思想とでもいうべき、彼の平和への思いと祈りをこの日も感じることができた。クリスマス・ソングを歌う際、まだ、平和でない、この世界を憂い、平和を取り戻そうと伝える。決して、声高なものではなく、静かに潜ませるものだが、その歌にメッセージを込める。彼のポップスにはそんな重層的な構造がある。そこが凡弱のシティポップスとの差異ではないだろうか。彼の音楽を寛ぎながら楽しみつつも、どこかで襟を正し、真摯に受け止めなければならないのは、彼の音楽には心をシャンとさせ、人を善き事へと導く力があるからだろう。ポップスを侮ってはいけない。230分のクリスマス・パーティは楽しさだけでなく、心に留め置くべき多くのことを与えてくれた。気恥ずかしいので、敢えて書かないが、その場にいた方は感じたはずだ。

 

 

この日、最後のアンコールを終え、杉真理を始め、メンバー達はバックステージへと消える。さらなるアンコールを求める拍手や歓声は鳴りやまなかったが、その会場にはジョンとヨーコの「Happy Xmas (War Is Over)」が静かに流れていた。同曲は“War Is Over”“If You Want It”という言葉が続く。私自身はクリスマスに対して複雑な感情はあるものの、平和を願い続けることに異論はない。

 

 

2020年はどんな年になるのか。また、杉は何を聞かせてくれるのか。1986年に杉を始め、南佳孝、須藤薫、Hi-Fi SET、楠瀬誠志郎、PSYS(サイズ)、PIZZICATO FIVE(ピチカート・ファイヴ)らが参加したクリスマス・アルバム『WINTER LOUNGE』をリリースしている。この日のライブでも明らかなように彼の楽曲だけでも“クリスマス・アルバム”ができる曲数がある。気の早い話だが、来年末には杉の新たなクリスマス・アルバムも聞きたいところ。大滝はメロディタイプと言われる歌もの、 ノベルティタイプと言われるサウンド偏重ものの2種類を使い分けていたが(!?)、クリスマス・アルバムのみならず、バラエティシャン(バラエティー+ミュージシャン)という側面を持つ彼ゆえ、『MUSIC LIFE』 がストレートアヘッドなポップスの名盤だったので、今度はそんなバラエティー豊かなものも楽しいかもしれない。勿論、BOXやピカデリーサーカスなど、様々なバンドの“周年”だって、やらなければならないだろう。今度はデビュー45周年に向かって、歩んでいく彼にすることがいっぱいある。40年以上の付き合いのアーティストが齢65を過ぎても元気なのは幸せなこと、また、それを享受できるのも僥倖である――そんなことを感じた12月の夜。

 

 

なお、2019年に見たライブは以下にあれやこれや書いている。よろしかったら、リンクから飛んで、読んでもらいたい。長文もあるので、お手すきの時にでも目を通していただければ幸いだ。

 

 

杉真理ファミリー劇場『杉真理ライブ2019“MUSIC LIFE”

https://ameblo.jp/letsgosteady/entry-12477342162.html

 

永遠のポップス青年が奏でる平和組曲――杉真理ライブ2019“MORE”MUSIC LIFE

https://ameblo.jp/letsgosteady/entry-12506847574.html

 

 

永遠を探す旅――杉真理&鈴木茂featuring 中西康晴 岡沢章 島村英二 and 松木圭司

https://ameblo.jp/letsgosteady/entry-12543465763.html

 

 

杉真理ライブ2019MUSICLIFE・年末年始特大号』 20191214日(土)渋谷PLEASURE PLEASURE

 

Opening SE

 

M-01 恋の手ほどき(X’mas In Love

M-02 恋愛狂時代

M-03 Your Kiss

M-04 太陽が知っている

M-05 He’s a Cat

M-06 僕のPin-up-Girl

M-07 Imagination

M-08 This Life

M-09 Xmas in Hospital

M-10 はじめてのサンタクロース(未発表曲)

M-11 クリスマスのウェディング(feat Saxソロ)

M-12 We’re Born to Run(富山県トラック社歌)

M-13 アニーよ目をさませ!

M-14 悲しきクラクション

M-15 ミュージシャン行進曲

M-16 恋はボリショイ

M-17最高の法則

M-18 コロンブス

 

EN-01 Silent Nightをぶっとばせ!

EN-02 Love Like a Xmas day

 

EN-03 君は天使じゃない

EN-04 靴下の中の僕

 

End SE