The South's Gonna Do It Again!テデスキトラックスバンドと佐野元春 | Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

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Jポップスの黄金時代は80年代から始まった。

そんな時代を活写した幻の音楽雑誌『MUSIC STEADY』をネットで再現します。

アメリカ南部の音楽が好きだ。建前上、“根はパンク”(笑)ということにしているが、ある時期、熱心に聞いていたのはサザン・ロックやスワンプ・ロック。私自身は東京生まれ、東京育ちの洗練された都会人で、田舎者は嫌いだが、田舎の音楽は大好きというひねくれもの(!?)。サザン・ソウルやカントリー・ブルースなどは“基礎教養”程度だが、70年代から80年代にかけてサザン・ロックやスワンプ・ロックを貪るように聞いた。オールマン・ブラザーズ・バンドが所属していた「キャプリコーンレコード」は“レーベル買い”。オールマンやマーシャル・タッカー・バンド、ウエット・ウィリー、カウボーイ、シー・レヴェル、エルヴィン・ビショップ、ボニー・ブラムレット、アレックス・テイラーなどの有名どころは言うに及ばず、グラインダースイッチ、ジェームス・モンゴメリー・バンド、ハイドラ、スティル・ウォーターなども探し出し、聞いていた。“山羊座印”は安心の印でもあったのだ。

 

同時にキャプリコーン以外ではレーナード・スキナードやチャーリー・ダニエルズ・バンド、アトランタ・リズム・セクション、ブラック・オーク・アーカンソー、ZZトップなども愛聴していた。

 

勿論、エリック・クラプトン、デイブ・メイスン、デラニー・アンド・ボニー、マッドドッグス・アンド・イングリッシュメン(ジョー・コッカ―)、レオン・ラッセル、ドン・ニックス、ダン・ペン、ドニー・フリッツ、CCR、ザ・バンドなども聞いている。マッスルショールズやメンフィス、アトランタなどの名前を聞くと、色めきだったものだ。

 

オールマンを始め、クラプトン、デイブ・メイスン、エルヴィン・ビショップなどのライブも来日時には見ている。同時にトムズキャビンのお陰で、レヴォン・ヘルム&RCOオールスターズ、ボビー・チャールズ、アラン・トゥーサン、ネヴィル・ブラザーズなども見させてもらった。

 

前振りが長くなったが、そんなサザン・ロックやスワンプ・ロックの正統な後継者にして最新型がデレク・トラックスがスーザン・テデスキと結成したテデキス・トラックス・バンドだろう。同バンドのギタリスト、デレク・トラックスはオールマンのドラマー、ブッチ・トラックスの甥にして、90年代、00年代のオールマンのメンバー、そして2006年のクラプトンのツアーに同行するなど、サザン・ロックやスワンプ・ロックだけでなく、アメリカのロックの将来を担う逸材だ。

 

私自身はデレク・トラックス・バンド時代から彼のことを注目し、レコードも買い集めている(というほどではないが、こまめに輸入盤を買っていた)。テデキス・トラックス・バンドになってからもすべてではないが、聞き続けている(ちょっと、スーザンの声が苦手かも)。そんな彼らの来日公演(20107月のフジロックにデレク・トラックス&スーザン・テデスキ・バンドとして出演したのを含めると、5 度目。2016 年の来日から3年ぶりの来日)が実現。615日(土)、東京・水道橋の「東京ドームシティホール」で開催された彼らの公演を見に行った。会場は超満員。立錐の余地もない。チケットは既に売り切れ。公演の模様が続々と拡散され、各日、当日券を買い求めるものが駆け付ける。私も当日券だったが、既にステージが見切れる席しか、残っていなかった。当日、お隣の「東京ドームスタジアム」ではサザンオールスターズのライブが開催されているという“サザン”繋がり。たぶん、桑田も彼らを見たかったのではないか!?

 

デビュー当初はブルースの伝統に根ざしたロックやゴスペルだけでなく、ジャズやワールド・ミュージックまでを含む、広範な音楽性で注目を浴びたが、現在はむしろオーソドックスなサザン・ロックやスワンプ・ロックをベースに現在進行形の音楽を聞かせている。聞いていると、実際、カバーもしているが、デレク・アンド・ザ・ドミノス(デレクの名前の由来はクラプトンの同バンドかららしい)やジョー・コッカ―のマッドドッグス・アンド・イングリッシュメンを彷彿させる。同時にデレクやスーザンだけでなく、他のメンバーにヴォーカルやソロを回すなど、レビュー的な展開もしている。デレク自身、俺が俺がとステージ前面にしゃしゃり出るのではなく、コンダクターとしてバンドに顔や身体を向けながら(観客に背中や尻を向けている)演奏している。超絶技巧で驚愕の音を紡ぎながらもその奥ゆかしさは微笑ましい。かつてのオールマンの“フィルモア”などの火の出るようなインプロビゼーションの応酬もいまだに耳に焼き付くが、エゴを内に秘めつつもグループとしてのグルーブを専念するのが今風というところだろう。“レイドバック”以降の音楽であることを再確認する。

 

わずか、1時間50分ほどのライブだったが、満足度は高く、サザン・ロック健在、サザン・ロックは懐古ではなく、現在も前進しているという印象を強く抱く。南部は、再び、やってくれそうだ。

 

 

同公演を見ていて、佐野元春が「THE HEARTLAND」の後に結成した「INTERNATIONAL HOBO KING BAND」(その後、「The Hobo King Band」という名称になるが、敢えて同バンド名に拘る)との最初のツアー『International Hobo King Tour』(1996118日・宮城県民会館~227日・神奈川県立県民ホール。全国8か所全13公演)を思い出していた。

 

佐野元春(VoG)を“棟梁”に小田原豊(Dr)、井上富雄(B)、佐橋佳幸(G)、Dr.kyOnKb)、西本明(Kb)、SKAPARA HORNS(谷中敦・NARGOGAMO・冷牟田竜之・北原雅彦)、メロディ・セクストン(Cho)、サンディ・セクストン(Cho)という実力も人気もある豪華絢爛たるミュージシャンが揃った。同メンバーは同年7月にリリースされるアルバム『フルーツ』のレコ―ディングに集まったミュージシャンからピックアップされている。佐橋やDr.kyOnを始め、アメリカのルーツ・ミュージックに造詣が深く、かつ、卓越した演奏技術の持ち主である。The Heartland0からスタートし、ともに時間をかけ、歩むことで、バンドとして成長していったのとは対照的にINTERNATIONAL HOBO KING BAND0からではなく、予め確固たる音楽性や技術を持つ成熟したミュージシャンの集合体であり、彼らの音楽性や表現方法を自由に掛け合わせることができる。

 

International Hobo King Tour』は彼らの最初のツアー、それもアルバム・リリースされる前のツアーのため、それまでのサウンドを求めるファンとの齟齬もあり、戸惑っていたファンも多かったのも事実だ。しかし、回を重ねる度にその豊饒で多彩な音楽性と卓越した表現力を持つ演奏、そしてコーラス隊(サンディは一部の公演のみ、参加)、ホーンセクション(ダディ柴田の飛び入り出演もあった)を加えた大所帯の豪勢で贅沢な音に圧倒されていく。後のHOBO KING BANDのジャム・バンド的な音楽性とウッドストックへと舵を切る萌芽があった。

 

IHKBHKBとの差異だが、ファミリーグルーブみたいなものだろうか。ともにアメリカの南部の音楽や同音楽をルーツにしたアメリカン・ロックなどを敷衍しながらも微妙に表現方法が違う。佐野をメインに一丸となって音を作っているが、同時にメンバーも存分にフィーチャーされる。ギターやキーボードのソロだけでなく、ホーンやコーラスもふんだんに披露される。佐野がヴァ―カルを取らず、メロディ・セクストンがキャロル・キングのカバー「ナチュラル・ウーマン」でソロ・ヴォーカルを聞かせるというシーンもあった。先にテデスキ・トラックス・バンドで引用したデレク・アンド・ザ・ドミノス、マッド・ドックス・イングリッシュメン、デラニー・アンド・ボニーを彷彿させる。オールスターによるレヴュー・ショーのようなニュアンスを感じた。その当時、そういう感想を抱いたかは、うる覚えだが、テデスキ・トラックス・バンドを聞いていて、急にIHKBのことを思いだした。特に彼らの『International Hobo King Tour』は同ツアーをレポートするため、全公演を見ている。“ON TOUR”や“MOTEL SHOT”を目の当たりにした。まるで、“あの頃ペニーレインと”状態(当然、ラブ・ロマンスはなし!)だ。20年以上の前の記憶が蘇るとともに佐野が当時、模索、志向していた音楽の普遍性を改めて確認する。

 

度々、書いているが、ウッドストックでジョン・サイモンとレコーディングする以前、アル・クーパーもプロデューサーとして候補に上がっていて、実際、快諾を得ていたが、諸事情で実現しなかった。そのことを改めて考えた。アル・クーパーは70年代、アトランタで「サウンド・オブ・サウス」というレーベルを設立し、自らのプロデュースでレーナード・スキナードをデビューさせている。歴史に“IF”はないが、もし、北ではなく、南へ行き、ジョン・サイモンではなく、アル・クーパーがプロデュースしたらと思ってしまう。いずれにしろ、『THE BARN』に勝るとも劣らない傑作が生まれていたのではないだろうか。

 

現在、佐野はCOYOTE BANDとの活動と並行して、HOBO KING BANDとも活動を続けている。HKBはコンパクトでミニマルなスタイルでの演奏が多いが、時には拡大版、最新型の“INTERNATIONAL HOBO KING BAND ”を聞きたくもなる。2020年は、デビュー“40周年”。そんな特別版も期待したくなるというもの。どうだろうか。見たいという方もきっと多いはず。私の中では繋がっているのだ。

 

 

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