今年、2015年は佐野元春にとって、デビュー35周年である。少し前に30周年を祝ったと思ったら、もう35周年。時の経つのは早いものだ。そのアニバーサリー・イヤーを記念したキックオフ・パーティーが3月12日(木)、東京・恵比寿のリキッド・ルームで開催される。同パーティは「佐野元春35周年アニバーサリー前夜祭『Tonight Show Featuring Motoharu Sano』」とタイトルされ、第一部は佐野元春&ザ・コヨーテ・バンドのライブ、続く第二部では落語家の立川志らべがホストを務め、佐野をフィーチャーしたトーク・イベントを展開するという。アニバーサリー・イヤーの幕開けに相応しいイベントとなる。その後もいろいろと特別な“催し”や“企て”が用意されているようだ。
そのアニバーサリー・イベント後、今春、もしくは今夏には、ザ・コヨーテ・バンドとの新しいアルバムのリリースも予定されている。それらについては、佐野のHPやFBページで確認いただければと思うが、35周年を祝う前に、昨2014年からの宿題をここで、提出させていただく。2014年9月28日の神奈川・クラブチッタ川崎から11月30日、東京・渋谷公会まで、全国17都市、全19公演に渡る「コヨーテ・バンド2014年秋ツアー」のリポートをしなければならない。初日の川崎公演と中日(!?)の長野公演は既に報告済みなので、FBに掲載したものを元に改めて最終日の東京公演の模様を書かせてもらおう。
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昨2014年、11月30日(日)、佐野元春&ザ・コヨーテ・バンドの「2014年秋ツアー」の最終公演を東京・渋谷公会堂で見た。“CCレモンホール”ではなく、“渋公”の佐野を体験するのは1981年9月23日「Welcome to the Heartland Tour」以来か。随分と、久しぶりに同所で見たという感じだ。
今回のツアーは初日の神奈川・クラブチッタ川崎(9月28日)、中日(!?)の長野CLUB JUNK BOX(11月3日)、そして最終日の東京・渋谷公会堂(11月30日)と、3公演を見させていただいたが、ザ・コヨーテ・バンドとの本格的なツアーらしい骨子はあるものの、場所によって、選曲やMC、進行などに違いがあり、その差異の妙を味わうこともできた。
ザ・コヨーテ・バンドが結成され、その活動は既に6年。このツアーを経たことで、バンドとして、確実に進化していることを感じる。佐野はステージで、来年の春、もしくは初夏には“新作をドロップする”と宣言。先行して公開された佐野元春&ザ・コヨーテ・バンドの2曲の新曲も手応えがあった。15歳の時に作った曲に現在の自分を重ね合わせたラブ・ソング「君がいなくちゃ」(3月上旬にiTunes Storeでダウンロード販売がスタート)、啓示的な警鐘溢れるプロテスト・ソング「優しい闇」ともに、いま歌にすべき主題である。この日の“ロック・コンサートに相応しくないMC”と自嘲しながら、“いろんな考えがあっていい”と添えつつ、敢えて口にした憎しみのスピーチへの嫌悪や家族や友達、希望のために選挙へ行くという言葉の数々ともリンクしていく。
その2週間後の選挙がいろんな意味で、散々たる結果だったことは残念でならないが、改めて、その場に居合わせたオーディエンスは佐野元春が信頼すべきアーティストであることを再確認しただろう。おそらく、中には30数年聞いてきたという方もいると思うが、自らの音楽的な歴史を否定せずに済むことの幸せをかみしめたはずだ。
ザ・コヨーテ・バンドと回った今回の“秋ツアー”、ライブハウスからホールまで、様々なキャパシティの会場で演奏をしてきたが、オーディエンスとの距離感を把握しながら、いい意味での振幅を見せてくれた。変幻自在に演奏の音量や音質を変えてみせ、常に過剰になることなく、適量に鳴らしてきた。ライブハウスなど、その狭さゆえ、混沌が売り文句みたいになるものだが、親密度を増し、熱気が心地良く、聞くものを包んでいくのだ。ホールでは大きさに臆することなく、同場所に相応しい横綱相撲を繰り広げる。経験豊富な手練れと組んだゆえのことだが、佐野元春の新しい仲間が最上の創作パートナーであることを実感させる。『Coyote(コヨーテ)』、『ZOOEY(ゾーイ)』に続く、ザ・コヨーテ・バンドとの3作品目。きっと、佐野の35周年を自ら祝いつつ、その歴史を睥睨しながら、表現活動の最前線にいるアーティストであると再確認させられるものになるだろう。いまから楽しみでならない。
今年は、前述通り、デビュー35周年のアニバーサリー・イヤーを記念したキックオフ・パーティーを始め、佐野元春&ザ・ホーボー・キング・バンドによるビルボード東京・大阪 3ヶ月連続マンスリーライブ「Smoke & Blue 2015」(4月1日の東京公演を皮切りにスタートし、東京・大阪ともに1日2公演が毎月2日ずつ開催。全24公演)と、いろいろなイベントが控えている。
以前、私は佐野元春の10周年に際して、“10周年に意味はない。10年の活動に意味がある”みたいな言葉を寄せさせていただいた。うる覚えのため、言葉は曖昧だが、きっと、35周年に言葉を寄せるとしたら、同じように「35周年に意味はない。35年の活動に意味がある」とするだろう。2015年の佐野元春の“活躍”から目が離せないのだ。