薬師寺で宝探し――甲斐バンド「スウィート テンプル・ムーン・ライブ」 | Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

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Jポップスの黄金時代は80年代から始まった。

そんな時代を活写した幻の音楽雑誌『MUSIC STEADY』をネットで再現します。

先月(8月30日)、NHKBSで、甲斐バンドの奈良・薬師寺でのライブが放送されていた。東日本大震災に被災された方への鎮魂と癒しの意味を込め、8月12日に行われた「スウィート テンプル・ムーン・ライブ」である。


甲斐バンド、解散と再結成、活動休止、活動再会を繰り返し、いったい、今回が、何回目かわからない(ちゃんと、調べればわかるが、その辺は某ウィキペディアを参考いただきたい)。甲斐さんだけに“解散”がつきものという親父ギャグを入れておくが、正直、呆れつつも嬉しくもあるというもの。


すべて時が解決する。あのクリームだって、再結成しているし、正確には再結成ではないが、レッド・ツェッペリンやクイーンだって、昔のメンバーが再集結しているのだ。


日本でも期間限定というのもあるが、プリプリやリンドバーグ、コンプレックス、ジュンスカ、ユニコーンなども続々と、再結成。


再結成希望バンド・ランキングの上位常連のBO∅WYは未完だが、気が付くと復活し、活動を継続しているバンドも少なくない。


私の近いところでいうと、ゴダイゴがそうである。新作アルバムなどはリリースされてないが、相変わらず、クオリティーの高いステージを見せてくれている。


さて、久しぶりに見た甲斐バンド、単なる懐かしさを超え、全盛期(個人的には『虜‐TORIKO‐』、『GOLLD/黄金』、『ラヴ・マイナス・ゼロ』の3連チャン、俗にいう“ニューヨーク三部作”時代だと思っている)を彷彿させる。歌も曲も劣化していない。甲斐の声も溌剌とし、田中一郎、松藤英雄を始め、Mac清水や佐藤英二、岡沢茂などのサポート陣の力演もそつなく、甲斐バンドの音として嵌る。


考えてみたら、甲斐バンドはフォークからロックへ、歌詞偏重から音色重視へ、1980年代のサウンドの時代という“大波”をニューヨークで、敏腕エンジニア、ボブ・クリアマウンテンの力を借りることで、乗りきる。日本的な情感を湛えながらも鋭角的な音像を見せてくれた。


まさに独自の存在感を醸し出し、当時としては唯一無比の音と歌を聞かす。正直、歌謡ロック的(歌謡GS的なものとの近似値をも感じていた)なものに違和感を抱きながらも、どうしても生理的に抗えないものもあったのも事実。引き込まれてしまうのだ。身を委ねてみると、本当に心地良い。「安奈」や「破れたハートを売り物にして」、「翼あるもの」、「嵐の季節」、「観覧車」、「ブルーレター」などがそうだ。実際に歌うことはないが、カラオケで、歌いたくなる。多分、気持ちいいだろう。


薬師寺のライブでもそれらの曲が披露されたが、往時よりも音楽的に鮮明&明解になっている。機材や技術、演奏力の進化にもよるが、昔のライブをまた、聞きたくなるかというと、今のライブで、充足させてくれる。むしろ、当時、感じていた不足分や不均衡感が時間を経ったことで、埋め、均衡を与えてくれたようだ。


また、年齢を重ねると不思議なもので、往時は直裁な言葉が照れくさく、恥ずかしさを感じ、また、抵抗や反発もあったが、いまはそんなことはなく、すんなりと入ってくる。


往時のバンドが往年のヒット曲を立て続けに演奏すれば、懐かしのメロディー的になってしまうものだが、決して、そんなことはない。変に時代を意識して、小細工することはないが、それでいて原音再生に見せかけつつも、細部には時代性を忍ばせている。


甲斐よしひろという音楽家の誠実さと勤勉さを感じないわけにはいかない。進化などというと、デビュー35周年を過ぎるバンドには相応しくないが、進化(深化という言葉の方が合うかもしれない)している。それは嬉しい驚きだ。従来のファンだけでなく、新たなファンをも取り込めるはずだ。


しかし、残念ながら、このライブは、ネットなどで一部を除き、大きく取り上げられることはない。その事実を知らないという方も多いだろう。


ここは、ステディ時代、甲斐バンドを何度も取材させいただき、同バンドの会報に「サウンドの時代」をテーマとした拙文を書かせていただいた身としては、声を大にして、叫ばないわけにはいかない。


見ておいていた方がいいだろう、いや、見るべきだ、と。オフィシャルサイトによると、シングル「安奈(2012)」(あの名曲の2012年バージョンだ!)が11月21日にリリース予定となっている。それに併せ、来年2013年1月からは全国ツアーも決定している。


同ライブをハードディスク録画し、何度も再生しては聞いているが、飽きが来ない。やはり、歌や曲としての体幹が鍛えられているから、揺るぐことがないのだろう。


人は歳を取り、衰えていく。それは仕方ないこと。かのムーンライダーズは、 “物は壊れ 人は死ぬ”と歌った。しかし、年齢や年月を重ねることで、光るものがある。


そんな光物をこれからも、このブログでは紹介したいと思う。何も新しいものや若いものだけが、最新や先鋭ではないし、それだけが音楽の優位性を決めるものでもない。


なんとなく、このブログの立ち位置みたいなものを再確認する。光り輝く、宝物探しをこれからもさせていただく。


私と一緒に、宝探しの旅に出てみないか。勿論、準備体操をし、水分補給を怠らずにだ。高齢者登山ではないが、事故になったら、洒落にならない(笑)。



甲斐よしひろオフィシャルサイト
http://www.kaisurf.com/