Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

Jポップスの黄金時代は80年代から始まった。

そんな時代を活写した幻の音楽雑誌『MUSIC STEADY』をネットで再現します。

■2024年6月16日、日曜日の印象Ⅱ

 

 

藤本国彦と本橋信宏『アンダーグランド・ビートルズ』発売記念トーク&サイン会を途中で抜け出し、高田馬場から王子へと急ぐ。午後1時30分から王子の飛鳥山公園(徳川吉宗や渋沢栄一の縁の地で、春は桜の名所として知られる)で、あがた森魚の「タルホピクニック」の最終回(!?)「ラストタルホピクニック」と、その後、2時30分から同公園の飛鳥山公園野外ステージ「飛鳥舞台」で「フリーコンサート」がある。このところ、足繁くというほど、通ってはいないが、ここ数年の彼の動向や音楽から目が離せないでいる。はちみつぱいとのコンサート(2017年7月1日のメルパルクホールで開催された共演アルバム『べいびぃろん(BABY-LON)』発売記念ライブ)、2022年9月22日にLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で開催された「あがた森魚 『50周年音楽會 渋谷公会堂』」も見ている。本2024年3月1日(金)、5月3日(金・祝)に原宿「クロコダイル」で吉田晴彦とSNARE COVERが主催したトークイベント「JAPANESE ROCKの夜明けから未来へつなぐもの」 に出演した際にも見ている。その度、衝撃を貰っているのだ。

 


「タルホピクニック」はあがたがコロナ禍の2020年6月に始めた、北区・王子の飛鳥山公園で楽器を持って練り歩くイベントである。この日は「タルホピクニック」が2024年6月で4周年を迎えるが、知らぬ間にこの日が最終回になった。初参加が最終回とはタイミングが悪いが、その後にはフリーコンサートもある。行かないわけにはいかない。おまけにその前は高田馬場にいる。高田馬場から王子へはJRや東京メトロで20分ほど、この前の予定が高田馬場というのもご縁みたいなものだろう。

 

 


待ち合わせ場所(飛鳥山モノレール「あすかパークレール」の「公園入口駅」)には待ち合わせ時間を10分ほど過ぎて到着(間違えて王子駅から山頂駅へ行ってしまった)すると、係の方が声をかけてくれ、既に練り歩きは始まっていて、紫陽花の小径を進んでいるという。その小径を行くと、紫陽花が咲き誇り、花の写真を撮る家族連れも少なくない。練り歩きの参加者はギターやウクレレ、パーカッション、エフェクターなど、思い思いの楽器を持って練り歩く。あがたはアコースティックギターを抱え、参加者を先導していく。好き勝手に演奏しているようで、脇を固める方がちゃんとリズムキープしている。アンビエント的なラジオノイズなども曲に合わせて、ぶち込んでくる。自由参加の人達も調子っぱずれのノイズを発しているようでいて、それらが何か、ひとつになっていく。特に歌詞はわからないが、それらはシュプレヒコールやエールとなる。晴天の青空へ吸収される。あがたは参加者(主催者発表何名とか、わからないが、想像よりも多く、のべで300名はいたのではないだろうか。あがたによると、最終回ということで、全国から仲間が駆け付けたらしい)を先導していく。JRの線路を跨ぐ橋を練り歩き、そこから公園と入っていく。遊園地になっている。小高い丘や都電などを出入りする。炎天下の中、ライブ会場になるステージに向かって、蛇行しながら、上り下りしながら練り歩いていくのだ。ステージに到着したのは1時間後くらいか。飛鳥山公園を年齢も職業も不詳の異形の者たちが行進していく。その姿はまるで寺山修司やフェデリコ・フェリーニの映画や舞台のようでもある。しかし、不思議なことに公園で遊ぶ子供達や家族達、老人達からは浮いていない。気づくと、新たに加わるものもいる。飛鳥山には、そんな包容力があるのかもしれない。

 


ステージにあがたとバンドメンバー(!?)が上がる。1時間、練り歩いたにも関わらず、休憩はなしで、そのままフリーコンサートになる。あがたは齢75。その体力、恐るべし。流石、楽器を持って練り歩く、トレーニング(!?)をしているだけある。こちらは楽器も持たず、ただ、後に付いていっただけなのにヘロヘロである。水分補給も既に炭酸水とスポーツドリンク、ペットボトル2本分を摂取しているのに汗はかき、喉は乾く、足腰も辛くなっている(完全な運動不足。情けない)。
ステージには50周年の渋公でもあったロケット基地があり、渋公やクロコダイルでもあったペーパーを使った演出もしている。最新作『遠州灘2023』を彷彿させるアンビエントな音響の中、あがたの歌が歌われる。その歌にはステージからだけではなく、客席などからは応援の音が被さる。反響し、共振していく。まるで飛鳥山公園を使った壮大な社会実験のようにも思える。炎天下で聞く、「赤色エレジー」、「大道芸人」、「俺の知らない内田裕也は俺の知ってる宇宙の夕焼け」は格別だ。録音されたものとは異なる趣きが加わる。「フリーコンサート」は1時間ほど、続いたが、誰も離脱することなく、完走している。誰もがやり切ったという顔をしてる。体力的には大変だったが(かなり高齢の方も参加していた)、誰もがいい笑顔をしている。

 


ここで一応(!)、お開きになるが、「フリーコンサート」が終わっても練り歩きは続く。ステージ袖に移動して30分ほどの休憩は取るが、今度は飛鳥山公園の対岸にある水無川公園(音無親水公園)へ練り歩くという。歩道橋を渡り、一般道の歩道を通り、同所を目指す。ただ、歩くのではなく練り歩く。一般道を大人数で通る。許可などが必要か、不必要かわからないが、特にトラブルもなく、水辺の公園へと至る。水無川とあるが、ちゃんと、水はある。川は流れている。石神井川の旧流路に整備された公園で、もみじやさくら、水車、公園を横切るアーチの橋などが見どころ。日本の都市公園100選にも選ばれているらしい。水辺と言うことで涼が取れる。あがたと参加者は涼みながらも音を止めない。本当に頭が下がる。音楽を旅とするものの強さかもしれない。

 


実はあがたを改めて意識しだしたのは、数年前に東北のとある蕎麦屋で彼のポスターを見かけたこと。店主に聞くと、そこでライブを行ったという。山奥だったが、そんなところまで、足を運び、歌を届けようとする。その姿勢に頭が下がった。有言実行の人である。とりあえず、そこでお開きになるが、2時間後には公民館で打ち上げがあるという。そこで本当のあがたが見れるかもしれないと、スタッフは脅かしてくる(笑)。申し訳ないが、体力の限界、そこで失礼させてもらった。
あがた森魚がしていることは娯楽か、余興か、実験か、冒険か、運動か――はわからないが、あがたはいつも新しい世界を見せてくれる。 それだけは確かだろう。75歳のロックンローラーは私達にいろんなことを教えてくれる。
「ラストタルホピクニック」と銘打たれていたが、しれっと、1か月後には再開しそうだ。その時は是非、駆け付けて欲しい。猛暑の時期には水分補給と帽子、サングラスなどは忘れずにしてもらいたい。あがたのピクニックはハードである。私も今度、機会があれば倉庫に眠ったままのアンプ付きのミニギターを持って参加したい。

 


https://pic.twitter.com/haOSZ2veEk

 

 

 

 

 

 

 

■2024年6月16日、日曜日の印象Ⅰ

 

 

6月16日(日)は炎天下の中、動き回る。普段、行かないところへ顔を出した。最初に出没したのは高田馬場。同所は久しぶりである。といっても一昨年、2022年12月にジョリッツのサード・アルバム『妖しいビルディング』の発売を記念して、新宿ロフトで開催された“全曲完全再現ライブ”を配信で見て、高田馬場へ出没している。実は同アルバムのタイトルトラックは、メンバーの吉田仁郎が高田馬場へ移り住んだことが契機で生まれているという。ならば高田馬場へ聖地巡礼、フィールドワークのため、同所を訪れている。その時のガイドブックが本橋信宏の『高田馬場アンダーグラウンド』(駒草出版)だった。『全裸監督・村西とおる伝』や『裏本時代』、『AV時代』などとともに『東京最後の異界 鶯谷』、『迷宮の花街 渋谷円山町』、『上野アンダーグラウンド』、『新橋アンダーグラウンド』など、彼の“東京の異界シリーズ“、いわゆるアンダーグランドシリーズ”は必読であり、私の書棚にも常駐している。

 


そんな“シリーズ”に新しく加わったのが『アンダーグラウンド・ビートルズ』(毎日新聞出版)である。気鋭のノンフィクション作家・本橋宏信と、ビートルズ研究の第一人者(別名“ビートルズやくざ”!?)藤本国彦が手を組んで、セックス。ドラッグ、DV、宗教――など、埋もれた事実や事件を掘り起こし、その真相を語り尽くしている。本の内容の詳述は避けるが、二人の対談をテーマごとにまとめ、お互いに加筆修正した“対談集”。流石、芸達者にして、書誌学とフィールドワークに長け、裏の裏を深掘りする二人だけある。その語り口は快活で鮮やか。読むと引き込まれるのだ。


彼らのSNSで知ったのだが、同書の発売を記念するトーク&サイン会が6月16日(日)の正午から高田馬場・芳林堂書店で開催されるという。これは行くしかない。二人には多少なりともご縁やご恩があった。これは行かないわけにはいかないだろう。しかも、開催場所が高田馬場である。こんなところにもご縁がある。

 


会場は人で溢れる。50名以上、来たらしい。ビートルズ・オタクだけでなく、二人のファン(おっかけ!?)と思しき人達も来ていた。


話しの内容は同書のダイジェスト版という趣きだが、生で聞く、彼らの当意即妙の受け答えは絶妙。ウイットとユーモアがあり、まるでビートルズのヒルトンの記者会見か、シェアスタジアムのコンサートか。本当は大歓声も欲しいところ。

 


同書が毎日新聞から出る経緯や同書に関わる人と人の出会いと再会、トルコ風呂入浴説、ビートルズになれなかった男、香月利一と落流鳥……など、面白く、かつ、ほろ苦い話のてんこ盛り。アングラでありつつ、その話は心温まる。「一人おかれた人」達への愛が溢れていた。これはファン以外の人達にも読んでもらいたい。また、もうちょっと、時間を取って、二人のトークイベントも開催して欲しい。二人の先生達、ちょっと胡散臭いけど、本当にいい顔をしている。是非、その尊顔を生で見ていただきたい。

 


ちなみにこの日は次の予定があったため、トークのみでお先に失礼させてもらった。残念ながらサイン会には参加できず。サインはまたの機会に貰うことにする(笑)。


https://x.com/fabgear9/status/1802633737286332515

 

 

 

 

 

 

ゴダイゴのライブはコロナ禍を挟み、ここ数年は欠かさず見ている。流石、全制覇は無理だが、活動のポイントとなるライブには足を運んでいるつもりだ。

 

 

2022年は5月12日(木)、2020年5月12日に亡くなった浅野孝已の“3回忌”に東京・南青山の「ブルーノート東京」で行われた『ゴダイゴ ライヴ~ひさしぶりマイ・フレンド』、同年9月18日(日)に大阪新歌舞伎座で開催された『GODIEGO CONCERT 2022』、2023年は2月4日 (土)にすみだトリフォニーホール 大ホールで開催された「GODIEGO meets 新日本フィルハーモニー交響楽団」、11月12日(日)に神戸国際会館 こくさいホール (兵庫)で開催された「Godiego Live! 2023」、11月 22日(水)にBillboard Live TOKYO「Godiego Live! 2023」(配信)……などを見ている。

 

 

そのいくつかは既にブログなどでもリポートしている。いずれも長文なので、お手隙の時にでもご覧いただければと思う。リンクは文末に貼り付けている。コロナ禍以前のライブリポートもあるが、それらはブログ内で検索いただければ出てくるはず。

 

ただ、昨2023年11月12日(日)に神戸国際会館こくさいホール (兵庫県)で開催された神戸公演「Godiego Live! 2023」と、先日、2024年5月25日(土)に一宮市民会館(愛知)で開催された一宮公演「Godiego Live! 2024」についてはX(旧Twitter)で、簡単に呟くのみだった。改めて書き記しておく必要を感じている。それらを見て、何か、ゴダイゴの今後の方向性みたいなものが見えてきた(と思っている)。相変わらずだが、好き勝手なことを書かせてもらうので、そんな考えもあるくらいの大らかな目で読んでもらえれば幸いだ。

 

 

改めていうまでもないが、2020年から2023年という“コロナ期”を挟んでいる。2020年5月12日には、残念なことにゴダイゴを支えてきたギタリスト、浅野孝已が亡くなるという悲劇と苦難を私達は経験している。どのディケイド以上に辛い時期でもあったことを忘れてはならない。

 

その渦中において2020年5月24日(日)に日比谷野外音楽堂で開催予定されていた「日中友好音楽祭2020『瞬間的永恒コンサート』」が中止になっている。2020年に関しては当初の予定はすべて先送りされた。特に発表はされてないが、予定していた多くのコンサートやイベントが中止や延期になった。それに関しては音楽だけでなく、テレビ、映画、演劇、演芸……など、エンターティンメントそのものが不要不急とみなされ、いずれも停滞し、苦慮したことは記憶に新しいだろう。

 

そんな中、ゴダイゴはリアルライブだけでなく、配信という形で発信を試みている。メンバーが集まって、無観客のライブも頻繁に行われたが、メンバーが集まることさえ、難しい時期にはリモートで各所を結ぶという実験的な配信もしている。また、2021年にはライブとトークによる番組「GodiegoTV」なども公開している。コロナ禍にあっても何とか、自分達の音楽を届けようと、創意工夫、鋭意努力を怠らなかった。

 

 

 

ゴダイゴの2023年の皮切りは2月4日(土)にすみだトリフォニーホール大ホール(東京)で開催された「すみだトリフォニーホール開館25周年特別企画 GODIEGO meets 新日本フィルハーモニー交響楽団」になる。言うまでもなく、オーケストラ、ゴダイゴホーンズ、クワイヤーとの共演という大所帯のコンサート。おそらく、日本でこんなことができ、かつそれに相応しい音を出せるのはゴダイゴくらいだろう。詳述は避けるが、それ以外のコンサートは10月22日(日)にクアーズテック秦野カルチャーホール(秦野市文化会館)(神奈川県)、11月3日(金)・4日(土)にBillboard Live OSAKA(大阪)、11月12日(日)に前述の神戸国際会館こくさいホール (兵庫県)、11月 21日(火)、22日(水)にBillboard Live TOKYO(東京)、12月23日(土)に磐田市民文化会館「かたりあ」(静岡)になる。ファンの方にとっては、もっとという思いを抱くかもしれないが、その間にミッキー吉野の古希を記念した「ミッキー吉野 "ラッキー70祭"【KoKi】」プロジェクトの実現、タケカワユキヒデの『銀河鉄道999シネマコンサート』の出演など、ソロ活動などもある。まずは現体制での無理のない活動のベースとペース作りのためには時間が必要ではないだろうか。

 

 

活動のベースとペースに関連するが、2022年9月18日(土)にゴダイゴの大阪新歌舞伎座で開催された『GODIEGO CONCERT 2022』、そのステージの1曲目に披露されたのは「Lighting Man」だった。1979年の傑作アルバム『OUR DECADE』に収録された同曲を演奏している。その直後、夕刊フジの9月23日(22日発売)付けのインタビューで、ミッキー吉野は「セットリストは今までとパターンを変えました。『Lighting Man』は“照明さん、そんなに早く灯を消さないでよ。まだまだ続くよ”という歌詞。それがオープニングです」と語っている。

 

 

ゴダイゴの“再始動”を高らかに宣言するかのようだ。その思いがいまも続く。繰り返しになるが、再始動するためには、無理のない活動というものが必要だろう。1978年から1982年までのような昼も夜もアイドル顔負けのテレビ出演や取材、全国何十カ所ものコンサートツアー、海外でのコンサートや撮影、オリジナルアルバムだけでなく、TVや映画のサントラ、CMソング、映像作品の制作など……そんな過密スケジュールでは、決して若くない彼らはもたないだろう。限られた時間の中で最適解を求め、活動をしていくしかない。

 

 

 

2023年11月12日(日)に開催された神戸国際会館こくさいホール (兵庫県)については前述した通り、FBやX(旧ツイッター)で簡単に呟くのみだったが、もう少し言及しておかなければいけないと思っていた。2006年に「ゴダイゴの恒久的な再始動」を宣言した後は、東京以外の地方のコンサートを見ておきたいというのもあったのだ。全盛期は大規模なコンサートツアーが組まれていたが、流石、そこまで追い切れていなかった。多少、余裕のできたいまならそれも可能と、機会の逃さず、足を運ぶようにしている。

 

 

同時に神戸なら、あの曲をやるだろうという目論見もあった。直近のホールコンサートや「Billbord Live TOKYO」や「Billbord Live OSAKA」のライブなどでは同曲は披露されていなかった。同時にすみだトリフォニーホール以外はストリングスもホーンもクワイヤーもいない。その中、ミッキー吉野(Kb、Vo)、タケカワユキヒデ(Vo,Kb)、スティーブ・フォックス(B、Vo)、トミー・スナイダー(Dr、Vo)、吉澤洋治(G)、そして竹越かずゆき(Kb)という6人で、どう表現するか、興味があった。

 

読みは当たった。果させるかな、同曲は演奏されたのである。神戸で聞く「ポートピア」は格別だ。現在は神戸在住、地元民であるスティーブが熱望した神戸でのコンサート。ゴダイゴ結成前、タケカワのソロコンサートで観客9名という記録もある(1981年5月18日にゴダイゴの神戸国際会館でのコンサートで見事雪辱している)。いろんな意味で忘れ得ぬところだろう。

 

1981年に神戸ポートアイランドで開催された「ポートピア'81」のキャンペーン・ソングとして制作され、1980年にリリースした「ポートピア」は大ヒットしている。ゴダイゴと神戸の絆は深い。ゴダイゴが中国公演を行った天津は神戸の友好都市でもある。

 

1995年の阪神・淡路大震災の際にはコンサートで勇気づけたいとコンサートの開催を試みたが、バンドが活動休止期間だったため、実現できなかった、だが、いつか、同所でのコンサートを考えていたという。神戸でのゴダイゴのライブは2010年11月6日に神戸国際会館で実現している。その日のライブのオープニングナンバーは「ポートピア」だったのだ。

 

 

オリジナルにはホーンもストリングスも入っている。同曲をホーンセクションもストリングセクションもなしで再現する。その日、ゴダイゴの6人によって演奏された同曲を聞いていて“ポケット・シンフォニー”という言葉を思い出した。かの狂気の天才プロデューサー、フィル・スペクターはスタジオマジックとでもいうべき、“ウォール・オブ・サウンド”を「小さな交響楽団」=「ポケット・シンフォニー」と呼んでいた。実際は大人数で録音し、かつ、同時に大人数でスタジオに入る。多重録音もしているが、何か、それをゴダイゴがライブで実践しているかのようだ。勿論、テクノロジーの進化やアンサンブルの深化ゆえのことだが、この「ポートピア」を聞いた時、2023年の現在進行形の“ポケット・シンフォニー”を聞いたと感じた。

 

そして同公演では国民的ヒット曲にして、国民的名曲「ビューティフルネーム」での会場の“ウーアー合戦”が復活した。シンフォニーホールでは若干の制約や制限もあり、遠慮気味だったものが、それがいつものようにウーアーと思い切り、叫ぶことができる。同コンサートに出演した観客の歓喜の笑顔が印象的だった。ここ数年、見れなかった風景でもある。

 

さらに「想い出を君に託そう」で始まり、「君は恋のチェリー」で終わるというセットリスト。“再生の街”で自らの“再生”を高らかに宣言したかのようだ。勿論、浅野孝已も“現場”に駆け付けていた(メンバー紹介で彼の名前もコールされた!)。新たなゴダイゴ像を結ぶところを見届けたはず。ゴダイゴは50周年に向け、新たな第一歩を踏み出したといっていいだろう。

 

 

 

そんな2023年を経て、2024年のゴダイゴ初めは、5月11日(日)の大阪新歌舞伎座公演ではなく(前々年2022年9月18日の大阪・新歌舞伎座公演を見ている)、5月25日(土)に一宮市民会館で開催された『ゴダイゴ・ライブ!2024』にさせてもらった。

 

一宮にはあまりなじみはなかったが、愛知県の都市である。JRに「尾張一宮駅」がある。名鉄は「一宮駅」になる。JR「名古屋駅」から「尾張一宮駅」へはJR東海道本線特別快速で約10分、普通列車で4駅、17分である。名鉄「名古屋駅」から名鉄「一宮駅」へは15分ほど。いずれにしろ、JR尾張一宮、名鉄一宮からバスと徒歩で15分ほど(バス「市民会館」下車徒歩2分、「両郷町口」下車徒歩8分)のところだ。ちょっと、バス乗り場や路線がわかりづらかったが、会場の一宮市民会館を目指す人達の後を追い、なんとか、辿り着く。会館そのものは「テラスウォーク一宮」という大きなショッピングモールや量販店、チェーンレストランが並ぶ、栄えたところにある。会館そのものはクラシックで趣きのあるところだった。キャパは最大1588名まで収容可能で、どこからでも舞台が見やすい多目的ホールらしい。 集会や式典などの催しから、舞台芸術や本格的なコンサートまで、さまざまなニーズに応えることができると、同会館のHPに書いてあった。ロビーには「純烈」や「仮面ライダースーパーライブ」、「一宮市民吹奏楽団」、「竹ぱら学園ツアー~ゲラゲラぱらだいす教育~」などのポスターが貼られている。

 

会場のロビーや会議室が入場者のために解放されていた。観客に高齢者が多く、長時間、立ち続け、入場を待つのは辛いからだろうか、嬉しい配慮である。SNSではその対応を絶賛する書き込みが並んでいた。いずれにしろ、いろんな面で、配慮がされている。

 

会場のキャパは前述通り1588名と、決して大きな会場ではないが、彼らの音楽を身近に感じつつ、ゆったりと聞くには最適のサイズだろう。1階から2階まで、客席が観客で埋まる。満員御礼状態だ。このところ、彼らのライブに足を運ぶと、どこでも売り切れや満員が多く、嬉しい限り。同時に新歌舞伎座や明治座など、意外な場所選択も彼ららしい拘りだろう。

 

 

開演時間の午後4時にメンバーがステージに登場。言うまでもなく、ミッキー吉野、タケカワユキヒデ、スティーブ・フォックス、トミー・スナイダー、吉澤洋治、そして竹越かずゆきの6人である。ゴダイゴホーンズなどはいない。ゴダイゴのオールスターメンバーの揃い踏み。演奏されたのはゴダイゴの実質的なデビューアルバム『DEAD END』のタイトルトラックを始め、同作からのナンバーが並ぶ(曖昧な表現で申し訳ない。今回のツアーはまだ、途中。セットリストのメモはあるものの、一部を除き、敢えて匂わす程度の公開にしておく。お許しいただきたい)。いわゆる国民的ヒット曲ではないが、ゴダイゴとは何者かを象徴するハードでエッジの立った曲達であり、改めて同作の再評価も進んでいる。当然のごとく、観客は歓声で迎える。その意図を理解しているのだ。その世界に引き込まれる。ゴダイゴは、その曲達を現代版にブラッシュアップ。タケカワだけでなく、トミーもヴォーカルを披露する。吉澤のギターが浅野孝已とは違う、新たな魅力を加えていく。彼のプレイはジャズテイストを感じさせつつもロックの芯がある。当然の如く、ゴダイゴサウンドに違和感なく嵌る。

 

 

同セットを終えると、タケカワがゴダイゴはネパールや中国、アメリカなど、世界中を旅して回ったことを話す。そして演奏されたのは「サイツ&サウンズ」という、1980年にリリースされたシングル「リターン・トゥ・アフリカ」にカップリングされている隠れた名曲。会場の観客はレア曲の披露に歓喜の声を上げる。

 

続けて1984年にリリースされたアルバム『FLOWER』 のナンバーが披露される。これもある意味、隠れた名曲である。さらに同アルバムからのナンバーが続く。いかにもゴダイゴらしい楽曲である。世が世ならヒットしていてもおかしくない。国民的ヒット曲を連発していた時期だけが彼らの音楽的な全盛期ではない。音楽的に不変のクオリティーがあり、いま、改めてそのことを世に問うているようにも感じる。アルバムのタイトルには「きれいな花を贈るように素直な気持ちで音楽を届ける」という意味が込められていた。いまもその気持ちに変わりがないはず。

 

同曲の後はメンバー紹介になる。ただのメンバー紹介ではなく、紹介されたメンバーが自己紹介し、さらに他のメンバーを紹介するというリレー形式。自己紹介では自らと関わりのあるナンバーを演奏する。オリジナルだけでなく、カバーなども披露している。ミッキーや竹越は意外なカバーを聞かせてくれた。

 

また、そこまで言って大丈夫というようなオフレコ話も披露される。ある映画の主題歌をめぐる意外な顛末には驚く。いまだからこそ話せることかもしれないが、予め台本を用意せず、フリーフォームで話しているようだ。毎回、何が飛び出すか、わからない。お楽しみというところ。

 

6人のメンバーがいれば6つのストーリーがある。個性派集団ゴダイゴならではだろう。ある意味、単なるメンバーの一員ではなく、各々の個性を主張しつつ、ゴダイゴというバンドを形作っていく。過去もそういうところはあったが、今はそれを踏襲しつつ、より6人組のゴダイゴを意識して、さらなるアップデートを試みている。

 

 

ゴダイゴブレイクの契機となった国民的ドラマ『西遊記』のオープニング曲と、同ドラマの“Ⅱ”のエンディング曲が披露される。きっと、その模様をSNSで見た、聞いたという方も多いはずだ。

 

コンサート後、SNSなどに彼らのライブの写真や動画を上げている方も多かったが、それは隠し撮りなどではなく、1、2曲だが、曲を指定して、撮影が許可されていたのだ。大体、蜘蛛の糸の写真が多いので、曲はおわかりかと思うが、それをシェアして、拡散してもらうという時代にリンクしている。もっとも拡散することで多くの方に知らしめる以上に何か、ファンの方にこの日の“思い出”を持って帰ってもらいたいというファンへのプレゼントにも感じる。ただ、すべての会場では行われているわけではないらしく、しっかり、メンバーの指示にしたがっていただければと思う。

 

怒涛の如く、国民的ヒット曲を畳みかける。誰もが聞きたい曲を惜しげもなく披露する。中には勝負曲を敢えて演奏しないというやり方もあるかもしれないが、過酷な日程の中、MLBで毎試合、試合に出続けた松井秀喜や大谷翔平の如く、観客の“あの曲を聞きたい”という期待を裏切らないのである(松井は毎試合、出続けることで、例え1回しか、試合を見られない方でも見られるように出場続けた)。ベースボールとライブは違うかもしれないが、毎回、ライブに足を運べるという人は限られている。例え1回しか、見られなくてもあの曲は聞きたいという思いに応える。天晴なことではないだろうか。

 

本編最後の曲(と、タケカワが紹介していた)が終わると、メンバーはステージから降りる。当然、アンコールを求める拍手と歓声が会場を満たす。数分すると、彼らはステージに戻ってくる。演奏したのは1999年の期間限定復活の際にリリースしたアルバム『WHAT A BEAUTIFUL NAME』の収録曲で、浅野孝已が作曲した「NICE TO SEE YOU ONCE MORE(久しぶり マイ・フレンド)」(作詞:タケカワユキヒデ、トミー・スナイダー 作曲:浅野孝已 編曲:ミッキー吉野)である。2022年5月12日に東京・青山の「ブルーノートトーキョー」で開催された浅野の3回忌ライブでもイベントタイトルに冠された浅野の名曲である。

 

同曲の演奏中にスクリーンが降りてきて、浅野孝已の姿がステージ中央に映し出された。彼の追悼コーナーになる。観客もその曲が久しぶりの再会を祝する曲であることを知っている。観客は彼を偲び、メンバーとともに追悼できることを喜ぶ。当たり前だが、忘れていない。そして多くの方が彼の気配を感じていたはず。竹越がこの日、弾いていたギターはかつて浅野が弾いていたものだ。

 

そして「ビューティフルネーム」では恒例のウーアー合戦が恒例のように行われる。いまは規制も制限もなし、いつものゴダイゴマナーが戻ってきた。ある意味、国民的なバンドとなった際も行ってきたルーティーンで、そんなところもお子様向けと揶揄された由縁でもあるが、ある意味、それを頑なまでに守ってきた。時代や世代を超えてではないが、いまとなって、昔、子供だった大人たちが子供に戻れる貴重な時間ではないだろうか。昔の自分に会い、それを引き継いでいく。親子だけでなく、孫まで聞くという世代もいる。ある意味、ファミリーバンド、ゴダイゴの真骨頂ではないだろうか。コロナ禍は声さえ出せず、忸怩たる思いをしたものも多かったはずだ。それがいまは解禁された。だれもが少し恥ずかしながらも、嬉しそうにウーアー合戦に参加している。ゴダイゴの日常が漸く戻りつつある。

 

 

同曲に畳みかけるようにアンコールは国民的ヒット曲で締める。観客はゴダイゴとともに銀河の旅人となる。メーテルも微笑む。何か、ゴダイゴとの旅を祝福しているかのようだ。観客の誰もがその日のゴダイゴのライブを楽しんだことがわかる。約2時間、ゴダイゴらしいショーは終わる。観客は曲席を離れ、会場の外に出る。駐車場は車で溢れ、一宮駅へのバス停には長い列ができる。そんな状況でも、この日のライブを楽し気に話している。バスが来る度に大人数がバスに吸い込まれる。この日のために定期便だけではなく、あまり時間を空けず、増便していたらしい。

 

 

終演は午後6時だった。午後4時開演だから、たっぷり&きっちり2時間である。名古屋から東京や大阪への日帰りも可能だ。そのことを意識しているかわからないが、観客へ優しい対応といっていいだろう。

 

 

愛知県の一宮市民会館で開催された「Godiego Live! 2024」を体験して改めて考える。国民的ヒット曲の披露、隠れた名曲の発掘、メンバーの自己紹介、浅野孝已への追悼、ウーアー合戦の復活……など、それらは彼らの日常を取り戻す作業ではないだろうか。制限や規制を潜り抜けた、いまのゴダイゴがそこにいた。

 

 

同時に自らのベースやペースを築き、持続可能な体制作りをしているようにも思えた。恒久的な活動をするためには相応すべき。必須のことだろう。そして来年のバンド結成50周年に向けての準備のようにも感じる。今回のツアーは続く。6月29日(土)・30日(日)に明治座(東京・日本橋)、8月4日(日)本多の森北電ホール(石川・金沢市)が残っている。

 

まだ、秋以降の日程は発表されていないが、他にもあるはずだ。日常を取り戻したいまだからこそ、また、新しい冒険や思い切った実験もあるかもしれない。そんなサプライズも楽しみである。今のゴダイゴを体験すべきだ。

 

 

■GODIEGO LIVE情報

https://www.godiego.co.jp/godiego/01-live.html

 

 

 

 

6月29日(土)明治座(東京・日本橋)12時開場 13時開演

 

6月30日(日)明治座(東京・日本橋)12時開場 13時開演

 

8月4日(日)本多の森北電ホール(石川・金沢市)14:30開場 15時開演

 

 

 

*********************************

 

浅野孝已はそこにいた『ゴダイゴ ライヴ ~ひさしぶりマイ・フレンド』

 

https://ameblo.jp/letsgosteady/entry-12742514146.html

 

ひさしぶりのゴダイゴ・コンサート 大阪新歌舞伎座『GODIEGO CONCERT 2022』

https://ameblo.jp/letsgosteady/entry-12766127682.html

 

 

銀河鉄道999――歓喜と旅立ちの歌『GODIEGO meets 新日本フィルハーモニー交響楽団』

https://ameblo.jp/letsgosteady/entry-12790473462.html