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朱子の倉庫

二次創作作品の倉庫です。
取り扱いジャンルは、花とゆめにて連載中のスキップ・ビート!、CPは蓮×キョーコです。





年の差で、社会人パラレル風?

キョーコに蓮以外の男と付き合ってた過去があります(松含む)。















「ごめん……何て言うか君って、恋人じゃなくて、家政婦って感じなんだよね」


最上キョーコ35歳。歴代彼氏たちと似たような理由で、おそらく人生最後であろう彼氏にフラれました。

思えば最初が悪かった。幼馴染みで、初恋の男。高校卒業後に、二人で飛び出すように郷里を出て、夢を追う彼の生活を支えて2年。待っていた言葉は感謝の言葉でもプロポーズでもなく、「家政婦代わり」の評価ただ一つ。
即刻マンション(私名義)を出て、私は自分で自分の生活の面倒も見れないようなアホのためでなく、自分のために生きようと決めた。掛け持ちができなくなるからとフリーターだったけれど、自分だけならその必要はない。バイト先の常連さんが紹介してくれて、事務の仕事に就くことができた。
そして、同じ轍は踏むまいと思って生きてきたのに……付き合う人に、必ず言われる。

「所帯臭い」
「恋人っぽくない」
「母親かよ」
「家政婦みたい」

それでも若いうちは仕方ないと思っていた。だけど30を越えて、恋愛よりも結婚が視野に入る年齢になってからも言われ続けるなんて。恋人ならともかく、妻にするなら家庭的なタイプがいい、というのが通説ではなかったのか。

私はもう、疲れていた。
幸せを夢見て、恋人を作ることをやめたことはなかった。けれど、恋人でいる間のあれやこれやが、もう面倒くさくなってきたのだ。
所帯臭いと言われたって、生きるために生活するために必要なことだ。
恋人っぽくないと言われたって、あんたの恋人はこうなんだから諦めろとしか。
母親かよと言われたって、むしろそれは全世界のお母さんに失礼だと思う。
家政婦みたいと言われたって、それを仕事でもなくやっている全世界のお母さんに以下同文。

ありのままの私を受け入れてくれる人が、いつかきっと現れると信じていた。でももう、いらない。そんな存在、居やしないのだ。夢は所詮夢でしかない。一緒になってくれもしない男にかけるお金があるなら、自分の未来のために貯えたい。


そう決意したのが半年前。そうして最後、と付き合った男には、さっきフラれた。



「さあキョーコ、ここからが私の人生よ!」


埋まらない胸の隙間にびょうびょうと吹き込む風を見ないフリをして、私は決意新たに歩き出した。










「ねえねえ聞いた?最上さん、また別れたんだって!」

「知ってる~~!焦ってるのか知らないけど、やっぱあの年になると捕まえていらんないのかしらね」

「やだ~~!売れ残りたくなーい!」


「……」

(一応)傷心の身であるのに、まさかその翌日からこんな陰口を聞くとは思わなかった。
くるりとUターンして、来た道を戻る。まだかしましく話している後輩たちから距離をとり、角を曲がったところで溜め息。『売れ残り』、それが私。間違っていないから、言い返すこともできない。
しかし、と私は顔を上げた。
これが私の決めた道。たとえお局様と言われようと、私は私だけのために生きるのだ。
目指すは、平穏な老後生活!!

かなり遠回りをして、仕事場に着いた。自分の机につくと、隣の後輩がこそっと耳打ちをしてきた。

「キョーコさん聞きました?うちの部署に、海外赴任帰りのエリートが来るんですって!」

「へえ?なんだってうちなのかしらね」

確かにうちの会社は大手だけれど、私のいる部署は事務作業が主で、それこそ海外帰りのエリートくんがバリバリ働くような職場じゃあない。

「知りませんよ~。なんでも、本人たっての希望らしいですよ」

「ふうん…ま、私には関係ないわね」

「でもイケメンらしいですよ!キョーコさん面食いじゃないですか~。目の保養にいいんじゃないですか?」

「も、そういうのはいいわ…」

げんなりしていると、廊下から伝わってきたざわつきに触発されるように、後輩がそわそわとしだす。
私は無関心を決め込んで、仕事道具であるパソコンを立ち上げた。






「ニューヨーク支店から帰りました、敦賀蓮です。といっても、就職とほぼ同時にニューヨークへ行ったので、日本で働くのはほとんど初めてになります。不慣れなこともあると思いますが、よろしくお願いします」

件のエリートくんがお辞儀をすると、あちこちから黄色い声が上がった。けして女だらけの職場ではないのに、不思議だ。男社員の挨拶を聞くともなしに聞きながらそう思った。

「すっごいイケメンですね!しかも高身長!これはポイント高いですよ~!高園寺さんが黙ってないですね!」

興奮気味に食いつく後輩をどうどうと押さえる。色恋と言うより好奇心が旺盛な彼女が嫌いではないが、ややミーハーな気があるのはついていけない。何やらノートに書き始めた辺りで放っておくことにして、私はパソコンに向き直った。
まだ終わっていない仕事があるのだ。カタカタとキーボードを叩いていると、ふっと横に誰かがやってきた。見れば、なぜかそこには敦賀くんが。律儀に挨拶にでも来たのかと思って見ていれば、頭の先から足の先までじっくりと視線を走らされる。

「?」

なぜか、その目は私のキーボードに置かれた左手で止まる。するとパッと表情を明るくして、敦賀くんは徐に私の手を取った。


「キョーコさん!俺、あなたの好みのタイプの男になって帰ってきました!結婚してください!」


「「「「は、はあ~~~~!?」」」」


私以外からも、驚愕の声が上がる。
お構い無しに、敦賀くんは私の腕を引いて立たせると、その長身に見合った長い腕の中に閉じ込めた。

「ちょっ!?」

「ずっと不安だったんですよ、戻った時にキョーコさんが結婚しちゃってたらって。でもよかった。キョーコさんも俺のこと、待っててくれてたんですね」

スーツの上からでも引き締まった筋肉の感触を感じさせる、逞しい腕にぎゅうぎゅうと抱き締められ、私は狼狽えた。
なんで私の名前を知ってるの(そしてなんで名前呼びなの)とか。
帰ってきたって、私たち初対面だよね?とか。
あと私が結婚してないのは別に敦賀くんを待ってたわけじゃないとか。

敦賀くんの言葉を訂正することもできず、どうにか逃れようもがくことしかできない。

「え、敦賀さん、キョーコさんと知り合いだったんですか?」

隣の後輩が、驚きの声を上げる。私がいきなり抱き締められたときには面白がって笑ってたくせにこの娘は!

「はい。あれは俺が小学生の頃でした……」

待ってましたとばかりに話し始める敦賀くん。そうして紡がれる敦賀くんの昔語りに、周りのみんなはポカーンとしている。だけど私だけは、思い当たる節に青ざめた。


初恋の男に家政婦と言われフラれて、傷心のままに街をさまよっていた時、男の子にぶつかった。そしてそのまま、家出中だというその子と公園で話をしたのだ。はじめは、自分の半分ほどの年の男の子が家出なんてと話を聞いていたのだけど、ふとした流れで私の苦労話などしてしまって。




『次は黒髪で、もっと高身長で高収入で誠実な、イケメンの彼氏をゲットするんだから!』





「……」

言った、確かに。好みのタイプ…というか、馬鹿幼馴染みとは真逆なタイプを。
そして思い出す。そんな捨てられ女の遠吠えに、男の子が何と言ったのか。私が何と答えたのか。



『じゃあ、俺がそんな男になったら、キョーコお姉さん俺と付き合ってくれる?』

『ふふ、蓮くんみたいな子だったらむしろお嫁さんにしてほしいわ』

『本当に?』

『ええ』

『じゃあ、そしたら俺、キョーコお姉さんを迎えに行くよ』

『ありがとう。待ってるわ』






「……ああああぁぁ~~…」

少々投げ遣りになっていたとはいえ、私はなんてことをほいほい言ってしまったのか。
いや、当時は優しかった男の子に癒された、いい思い出になったのだ。だけどまさか思わない。そんなわずかの邂逅、そこでした口約束を、10何年も経ってまだ覚えていてしかも本気にしているだなんて!

「あの、敦賀くん…申し訳ないんだけど…」

私は頭痛のしてきた頭を押さえて、敦賀くんを見上げた。
罪悪感はあるものの、私はもう恋人は作らないと決めたし、何より敦賀くんは10も年下だ。あり得ない。と言うか、居たたまれない。
私を好きと思う気持ちだって、刷り込みみたいなものだろう。何より、あのわずかな時間で惚れられる要素など何もなかった。つまりは、敦賀くんの勘違いだ。
丁重にお断りさせていただこう…と、開いた口。
しかしそれは、敦賀くんの唇によって塞がれた。

「!!??」

「俺のファーストキス、もらってください」

語尾にハートマークが付きそうなくらい甘ったるい声で放たれた言葉に、目を白黒させる。
と言うか今、キスされたの、私!?

「誠実であることをどう証明すればいいのか悩んだんですけど、俺、初めてを全部取っておきましたから!」

「は、初めて?」

「はい!俺、童/貞です!」


誰かが椅子を引っくり返す音が響いた。


「ど、ど、ど!?な、何言ってるの!」

「やっぱりここは貞節を守ることが何よりの証になるかと思って。それに…キョーコさんの好みの男になりたいので」

ほんのり頬を染める敦賀くん。

きゅん…なんて、鳴らないで私の心臓!


「キョーコさん、俺と、結婚してください!」


ぎゅうう~~と抱き締められ、私の許容量は限界を迎えた。

遠のく意識。焦ったような敦賀くんの声が聞こえた。後輩の心配そうな声も。
だけど今は、何も考えたくない。


ここで意識を手放したことを、私は目が覚めた時に後悔することになる。



敦賀くんの部屋のベッドで目覚める、その時に……。



end.


タイトルは某ボカ口曲をもじったものです。中身はほぼ関係ありません(笑)
替え歌してたらできたお話がこれです。
なんか微妙に長くなってしまいましたね。

キョーコ35歳、蓮25歳のつもり。
年の差婚がそこまで珍しくない昨今、10歳差なら余裕だよキョーコさん!というか35歳も全然売れ残り年齢ではないと思うの。

本当は一回りくらい違うことにしようと思ったんですけどちょっと怖じ気づきました…←